「「けもの」の正体は」けものがいる 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
「けもの」の正体は
「ねじの回転」で有名なヘンリー・ジェイムズの中編 The Beast in the Jungle(ジャングルの猛獣)を「自由かつ大胆に翻案」したという作品。
以下は、ワタクシの解釈によるストーリー。
* * *
時は2044年。
世界はアメリカ内戦等の大惨事を経て、
「感情」は社会秩序の邪魔でしかない、
だから意思決定はAIが行い、
感情を持つ人間は意思決定にかかわる仕事には就かせない、
という体制がとられていた。
そんな中、
ガブリエル(レア・セドゥ)は、単純作業の仕事に甘んじる生活から脱したくて、
知的労働への転職を希望し、面接を受ける。
転職の条件は「浄化」。すなわち、
感情に左右される状態からの脱却。
そのためのセッションの中身は、「前世」のシミュレーション。
生き延びることができれば、浄化完了。
ガブリエルは、浄化を受けるかどうか迷いを捨てきれないが、
「悪いこともリスクもない」と説得され、受けることにする。
これと前後してガブリエルは、
自分と同じく「浄化」を受けようか迷っているルイ(ジョージ・マッケイ)と出会う。
そしてシミュレーションには、必ずルイが登場する。
まず選ばれた時代と場所は、1910年、大洪水直前のパリ。
このセッション冒頭、ルイとの会話に、原作の台詞が盛り込まれている。
「何か奇妙でとてつもなく恐ろしいことが起こる、という予感にさいなまれているが、それが何なのか、わからない」
ただし、原作ではこれが、男性主人公の台詞だが、映画ではガブリエルの台詞になっている。
このセッションを、ガブリエルは成功裏に終えることができず、
日を改めて2つめのセッションを受けることになる。
舞台は、2014年のロサンゼルス。
アイラビスタ銃乱射事件の直前。
最終的にガブリエルは、
セッションで生き延びることに失敗する。
それは、めったにないこと。
だがガブリエルはむしろ、感情を捨てずにいられたことを喜ぶ。
そして、現実世界のルイとの愛情を確かめようとするのだが、
ルイは、浄化されて感情を失っていた。
むしろ、
一貫したモチーフとして存在していた「人形」に、感情の兆しが……
* * *
結局、「けもの」とは何だったのか。
原作には、こういう台詞がある。
「それは結局、恋に落ちることへの恐れ、なのでは?」
う~ん、大山鳴動して……という気もしないでもないけど。
まあ、いろいろと想像を巡らして楽しめる作品でありました。
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