「”けもの”とは」けものがいる おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
”けもの”とは
予告を目にすることはなかったのですが、作品紹介サイトのおもしろそうなあらすじに惹かれて公開初日に鑑賞してきました。同日公開の「#真相をお話しします」に続けてのハシゴ鑑賞だったため、集中力がやや落ちた状態での鑑賞となってしまいました。
ストーリーは、AIの管理が進み、社会の重要な仕事を全うするために人間の感情は不要となった近未来、仕事を求める女性ガブリエルは、ためらいながらも感情を消去するための”浄化”と呼ばれるプログラムを受け、自身の前世やさらにその先へとさかのぼり、当時から何度も出会いを繰り返していた男性ルイとの関係を紐解いていくというもの。
…と概要をまとめてみたものの、よく理解できていません。はっきり言ってこれは難しいです。誰か解説してください。集中力が落ちていたせいもありますが、事前にあらすじを読んでいなかったら、設定さえもわからず、序盤から迷子になっていた自信があります。
”人間に感情は不要”という考えが一般的になった社会において、ガブリエルが「浄化」をためらったのは、心の中にルイの存在があったからでしょうか。転生を繰り返してもなお忘れることのできないルイ、消すことのできない感情。それを失いたくなかったのではないでしょうか。
それなのに、そのルイ自身が浄化を受け入れ、あまつさえガブリエルにも浄化を勧めるという衝撃。ガブリエルの最後の絶叫は、彼女の感じた絶望でしょうか。その心情を思うといたたまれない思いがします。
タイトルにある「けもの」とは、どうしても手放すことのできない、人としての本能的な感情を指しているのでしょうか。それは、ガブリエルのように愛しい人を思う愛情や、ルイの内で燻りつづける性衝動や愛への渇望でしょうか。どちらも無にすることも抑えこむことも難しく、飼い慣らすことのできない「けもの」のような存在であると言えるかもしれません。
一方で、人間の対比として人形が描かれていたように感じます。人形は、人の姿形はしていても、作り手の意のままに生み出される、心をもたない作り物です。AIが加速進化する現代社会における人間のメタファーとして描かれているような気がします。そして、画一的なそれらが一斉に火に包まれる様子は、人類への警鐘のようにも見えてきます。
いろいろ難しくて、とても理解できたとは言えませんが、ひとつだけはっきりしています。それは、レア・セドゥが美しいということ!それだけも見る価値があるというものです。
主演はレア・セドゥで、さまざまな姿の彼女を堪能できます。脇を固めるのは、ジョージ・マッケイ、ガスラジー・マランダ、ダーシャ・ネクラソワ、マルタン・スカリ、エリナ・レーベンソンら。