「人間。」DOGMAN ドッグマン 路傍立石さんの映画レビュー(感想・評価)
人間。
犬を脅かせば報いを受け、犬を愛すれば友人として支えになる
全体的にキリスト教観がかなり強く出ていたように感じたので、おそらく意図して天使を彷彿とさせる役回りが犬に与えられていたんじゃないかと思う
主人公のドラァグクイーンという属性も、中性あるいは両性具有とされる天使に近しい存在として、犬に近しいDOGMANが描かれているのかなと感じた
けれども、法を犯しもするし他者を害しもする
決して綺麗なだけではないし、隙を晒さないほどの知性を持つのでもなく、傷つかないほど強くもない
ならば悪人かと問えば、軽々しく頷くことも出来ない
それだけの理由もまた語られている
そこにいたのは、あくまでも、どこまでも、人間、だったような気がしてならない
正直なところ、この映画をどのように分類して、どのように評価すればいいのか分からない
ポスターのキャッチコピーでは“規格外のダークヒーロー”と形容されていた
確かに法に捉われず足掻き、立ち、戦おうとする姿はそれらしくも見えるし、半生を語る述懐で構成されたストーリーはDCコミック的な、バットマン系統のヒーローなりヴィランなりのオリジンストーリーみたいに見えなくもない
けれども自分は、強くもあり、弱くもある変わり者のこの男をヒーローと呼びたくはない
あくまでも彼は、どこまでも人間だったと思う
自分は何を見たんだろうか
もう少し反芻しながら考えてみたい
トミーさん>
ドッグマンというネーミング、凄惨な生い立ちをバックボーンにした特異な能力(常人離れしたレベルの犬との意思疎通)、悪人の集団を敵に回した大立ち回り……と、記号だけを拾い上げていけばある種のアメコミヒーロー群との共通項も見出せるので、事前情報がない人を呼び込むのに分かりやすいキャッチコピーを捻り出さなければならないとしたらこの言葉が出てくるのかなぁ……?と、思わないではないのですけれど……
この作品、ダグラスという人間を形容するのに適当かと言うと、自分も違うような気がしています
鑑賞から一夜が明けて
ダグラス自身が“鏡・鏡像”について印象深い言葉を使っていたように、犬の性質、ひいてはDOGMANの性質も鏡に近いものとして描かれていたのかな、とも
脅威には報いを、愛情には衷心を
けれども形成される過程で打ちのめされ、どこか歪に映る鏡
そんなイメージに辿り着きました