「盛込み過ぎの感が否めない」DOGMAN ドッグマン リオさんの映画レビュー(感想・評価)
盛込み過ぎの感が否めない
本作の主人公ダグラスは、非常に特徴的でユニークなキャラクターなのだが、やや情報量が多すぎてまとまりに欠ける印象だった。
少年の頃の虐待と監禁によるトラウマ、犬を愛し犬を操る能力、身体の障害、歌手としての才能、女装癖、ドッグマンとしてのダークヒーロー等々。
序盤の、父親による虐待と監禁に関する壮絶なエピソードは、主人公のキャラクターを支える根幹の部分であり見ごたえがある。何なら「ルーム」のように、監禁のエピソードだけでも作品が成立したかもしれない。また、精神科医とのやり取りによる鬼気迫る回想シーンは、「ジョーカー」を彷彿とさせる危うさを感じた。
一方で、やはり盛込み過ぎの感が否めないのが、ワンコ達の窃盗シーンと、メキシコ系ギャングとの抗争シーン。窃盗のシーンは、ワンコ達の名演が光っており、それ自体は悪くないのだが、このシーンを見せたいがために差し込まれた感が否めない。
(ワンコ達の名演中、不意にマイルスデイヴィスの「So What (それが何か?)」が流れ出すという憎い演出は嫌いではなかったが。)
また、メキシコ系ギャングとの抗争シーンだが、こちらもワンコの演技+アクションを見せたいがためのシーンであり、また、そもそも街の秩序を守るバットマンならぬドッグマンとしてのエピソードはこの1件のみで、こちらもやや中途半端な感が否めない。
本作の唯一の救いは、キャバレーでの初舞台のシーンだろう。このシーンについては圧巻だった。悲劇的な人生を歩んできたダグラスが、ようやく自身の思いを表現できる居場所を見つけ、そして観客から称賛れてゆく。
本作は、スキャンダル後、リュック・ベッソン監督の監督復帰第一作目となったであろう作品。脚本も監督自身が手掛けているが、ビッグネームだけに見る前のハードルが上がってしまったのかもしれない。また、ワンコ達の名演を撮影するには相当な苦労があったであろうことは想像に難くないのだが、作品全体としてはやや盛込み過ぎでバランスが悪い印象でした。