オッペンハイマーのレビュー・感想・評価
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オッペンハイマーの内面に同期
「疲れた〜」というのが正直な気持ちです。しかしそれは妙にザラザラした、何と表現したものか分からない感動を伴う疲れ。 難解な映画です。時間軸がコロコロ変わり、台詞も多く物理学の単語も含まれる。普段使わない脳みそをフル回転する3時間。事前に少しは勉強して臨んだが全然足りなかった。 では何に感動したのだろうか。 この映画に反核や反戦といった主張は見えない。広島の惨状もない。 ただ一人の稀有な科学者オッペンハイマーの内面に、カメラはぐいぐいと容赦なく入りこんでいく。観客とオッペンハイマーの内面を同期させるがごとく。そのための3時間だったのか。 人類がパンドラの箱を開けてしまう現場に立ち会ったような、或いはその一端を担ってしまったような感覚が残る。
【テッペン映画】
伝記映画として歴代のテッペンを獲った超話題作。“原爆の父”の苦悩と葛藤は、日本人こそ強く感じるカタルシス。ノーラン監督ならではの神演出も堪能しつつ、名実共に今年度のテッペンを獲った“テッペンハイマー”をとくとご覧あれ。
◆概要
第96回アカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優賞(キリアン・マーフィ)、助演男優賞(ロバート・ダウニー・Jr.)、編集賞、撮影賞、作曲賞の計7部門受賞作品。
【原作】
カイ・バード&マーティン・J・シャーウィン「『原爆の父』と呼ばれた男の栄光と悲劇」(2006年ピュリッツァー賞を受賞)
【監督】
「インターステラー」クリストファー・ノーラン
【出演】
「クワイエット・プレイス」キリアン・マーフィ
「メリー・ポピンズ リターンズ」エミリー・ブラント
「アイアンマン」ロバート・ダウニー・Jr.
「グッド・ウィル・ハンティング」マット・デイモン
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」ケイシー・アフレック
「ボヘミアン・ラプソディー」ラミ・マレック
「ミッドサマー」フローレンス・ピュー
「オリエント急行殺人事件」ケネス・ブラナー
「レオン」ゲイリー・オールドマン
ジャック・クエイド(デニス・クエイドとメグ・ライアンの息子)
【撮影】
ホイテ・バン・ホイテマ(「インターステラー」以降のノーラン作品を手がけている)
【製作費】$100,000,000(約150億円)
【公開】2024年3月29日
【上映時間】180分
◆歴史背景
1930年代:オッペンハイマーが共産党と深い繋がりを持つ
1945年:アメリカが原爆実験成功
1947年:ストローズがオッペンハイマーをAEC顧問に任命
1949年:ロシアが原爆実験成功、アメリカは水爆開発へ
1954年:裁判①=オッペンハイマーがスパイ容疑で公職追放
1959年:裁判②=ストローズが商務長官に落選
1963年:オッペンハイマーが名誉回復
◆ストーリー
第2次世界大戦中、才能にあふれた物理学者のロバート・オッペンハイマーは、核開発を急ぐ米政府のマンハッタン計画において、原爆開発プロジェクトの委員長に任命される。しかし、実験で原爆の威力を目の当たりにし、さらにはそれが実戦で投下され、恐るべき大量破壊兵器を生み出したことに衝撃を受けたオッペンハイマーは、戦後、さらなる威力をもった水素爆弾の開発に反対するようになるが……。
◆
◆以下ネタバレ
◆
◆苦悩
プロメテウスの神話が明示される冒頭。天界の火を人類に与えた事でゼウスの怒りを買い、永遠の拷問に処せられたプロメテウスのように、この世に核をもたらした男の、永遠の拷問にも思える苦悩が本作で描かれる事がここに記される。それが示す通り、本作の軸は一貫してオッペンハイマーの苦悩と葛藤。原爆に対する自責の念、スパイ容疑、なんなら不倫相手の自殺まで、彼が背負うものは膨らんでいく。彼のジレンマに引き込むために、監督は一人称で脚本したそうで、その苦悩一つ一つに、見ているこちらも感情移入して見入っていく。全体的に表情のアップも多く、サブリミナルで差し込まれる原子力のカットもその意味で効果的。一番印象的だったのは、原爆の成功をスピーチする場面。民衆の歓声が無音になり、女性の顔が焼けただれ、焼けこげた人形(のようなもの)を踏む。科学者としての正義を全うするも、その代償の巨大さを音と映像で破滅的に訴えており、オッペンハイマーの苦悩が痛いほど伝わってくる。彼の正義と栄光が苦悩に変わっていく本作の大きな転換点であり、1番の山場のシーンだった。
◆日本
本作には切っても切れない日本の要素。対ナチス、対ソビエトとして開発を始めた原爆は、始めは科学者の正義のように見えながら、日本に落とす事を言及し始めるあたりから、日本人の自分には見方が変わってくる。オッペンハイマーの原爆投下後の苦悩の描写にどこか覚えるカタルシスは、日本人なら誰もがなおさら強く感じるものだと思う。これがもし、史実として日本に投下されていなかったら、自分が日本人でなかったら、つまりある種の“他人事”であれば、おそらく感じ方が全く変わる。話題になった、バービーの頭にキノコ雲を合成した画像が記憶に新しい“バーベンハイマー”は、原爆をめぐる意識の乖離が露呈したまさにその例。本作を日本人として主観と客観で見るときに、その意識の乖離の根本を感じ取るような不思議な感覚だった。
◆ラスト
名誉を傷つけられただけの事で、アメリカ全体を巻き込んで大規模な復讐劇を繰り広げたストローズ(ストローズ目線のシーンはモノクロで差別化する、なんとも発想力の豊かな演出!)。そのきっかけとなったロバートとアインシュタインの会話は、ストローズの単なる被害妄想だと明かされるラスト(2人の会話越しに遠くから歩み寄るストローズが小さく、つまりいかにちっぽけだとする細かい映画表現も)。時間軸を操るノーラン作品で幾度も引用されたアインシュタインがついに登場し、その意味で本作はノーラン監督の集大成。そのアインシュタインが語る科学者の苦悩に、共感したロバートは“私は破壊したのです”と彼の苦悩をついに吐露する。挟み込まれる地球の画が、まさにその“破壊された”地球に住む我々が今後どう進むべきかを重々しく問いかけるよう。3時間の重量で紡ぎ続けた苦悩、その目を閉じるラストカットが、その後の世界への彼の祈りを表しているように思えた。
◆関連作品
○「TENET テネット」('20)
ノーラン監督の前作。本作製作のきっかけになった作品で、劇中にはオッペンハイマーに言及する場面も。プライムビデオ配信中。
〇「インターステラー」('14)
ノーラン監督の代表作。第87回アカデミー賞視覚効果賞受賞。高次元の映像美が素晴らしい。プライムビデオ配信中。
○「インセプション」('10)
ノーラン監督、キリアン・マーフィー出演作品。第83回アカデミー賞視覚効果賞含む4部門受賞。今見ても十分不思議な映像美。プライムビデオ配信中。
◆評価(2024年3月29日時点)
Filmarks:★×4.0
Yahoo!検索:★×3.4
映画.com:★×3.7
2024 29本目(劇場 8作目)
アメリカ公開時からしいて言うならノーランの次回作が決まった時から期待していた作品。
アメリカでも大ヒットしアカデミーも取りいざ公開。面白くないわけないでしょ、、、
個人的感想ですがほぼ全てのノーラン作品を観てきたが、一番つまらなかったです、、
豪華な俳優の素晴らしい演技、音楽、安定の良さもあるが、原爆の父の半生だけを見せられてもなぁと。
途中退席する人や、随所にため息が聞こえるなど久しぶりにみました笑笑
次作に期待しています
時間軸が前後するのが難しい
クリストファーノーラン監督の手腕はいつもながらすごいと思う。アカデミー賞を取ったのも納得。ただ、日本人としては、原爆成功後の熱狂シーンなどは心穏やかには見れない。ただ、現実にはこんな感じだったんだろうな、と思わざるを得ない。 映画の作りとしては、時間軸が前後するので、見ていて理解するのが難しく感じた。アインシュタインなんか、いつ出てきても同じ外観なので、いつの話なのかすっと頭に入らなかった。あと、量子力学の最初の授業で一人だけの生徒が、「基礎だけはやりました」と言ったのに対して、「そりゃ間違っている(ちゃんと教えれるのは俺ぐらい)」の反応は笑えた。
今迄で一番考えさせられた映画(良くも悪くも)
登場人物が多い事や共産主義活動(本人は関わっていない)や主人公に恨みを持つ者の政治的策略の赤狩り聴聞会等があるので事前学習必須です。また当監督特有の時間軸の違いがあるので途中で追いつかなくなります。また多数の皆さんが言う通り広島長崎の描写は一切出てきません。なぜなら主人公の主観で描かれているから。 実際に本人がこの映画を観たらどう感じるかどうしても聞いてみたい所です。トルーマン大統領の捨て台詞の言う意味も理解出来ます。自分達(ロスアラモスチーム)で作っておいて主人公が大統領に嘆く姿は母親に慰めて欲しい子供の姿そのものだから…結果は本人が一番分かっていた事なので。日本人の我々からすると偽善者に見えてしまう。 【追記】2024.4.2 タイトルにも記した予習ですが、雑誌スクリーン5月号のオッペンハイマー特集を読めば大体理解出来るようにはなると思いますが、いかんせん登場人物がおおいので内容をもっと理解したい方は吹替版をみるのもいいかも知れません。【【すみません。吹替版はありませんでした。申し訳ありません。】】わたくし自身ももう一度吹替版で観ようかと考えましたが…やめました。何故なら本映画が原爆の破壊力の凄さや主人公の懺悔を表現して無いからです。(少しはその描写はありますよ しかし我々から見れば全然足りないです)あくまで内容は赤狩りの方(ストローズの策略)に重点が傾いているからです。 わたくしの40代半ばの広島出身の友人は今でも映画「この世界の片隅に」を観る事は出来ないと言います。オッペンハイマーは日本に来日した際、広島長崎には行って無い。では本作を作成したノーランはどうなのでしょう⁇資料館迄入ったのでしょうか⁈知ってらっしゃる方が居たら教えて下さい。 ある意味この映画は西側(米国)から観た社会そのものかも知れません…日本人のわたしからするとこんな映画でノーランがアカデミー賞を獲りに行って欲しくなかったです… 【追記の追記】2024.5.15 レビュアーMさんへのコメントでも記載しましたが、私はこの映画を観てずっとずっと考えています。今も考え続けています。よく言われますが、「たら/れば」は無い。しかしもしこの映画の主人公であるオッペンハイマーが来日した際に広島長崎へ行って居ればその映像は出たのでしょうか?ノーランも視察したのでしょうか?そうなればこの映画はもっと違うものになっていたのではないかとも考えています。。
科学者(人間)としての罪
相変わらずなのですが、ちょっと困った作品ですねぇ。(作品の質の話ではありません)
これは前作の『テネット』の感想でも書いたのですが、本作を1回見ただけでは(理解できないというよりも)大半の人は作品を整理し切れないという意味での困った作品なのです。
本作の場合はいつもの様にジャンルがややこしいSFではないのにも関わらず初見では混乱してしまいました。
歴史モノなのでそれに疎かったり、登場人物の多さや物語の過去パート・マンハッタン計画パート・戦後の公聴会と聴聞会パート(モノクロ)と三つの時代を平行に取り混ぜながら物語が進み整理するどころか更に観客の頭を混乱させる。
いや大筋は分かるのだが、どうしてももどかしさが残ってしまう感覚で、整理しきれない隙間を何かで埋めたくなってしまう。
なので本作の場合は(というかノーラン作品の場合は)、予習というか事前情報はどれだけ入れておいても、鑑賞の妨げにはならないと思います。
だから、ノーラン作品の場合は真面目な観客ほどリピーターになる場合が多いのでしょうね。
でも、私の場合は知識や情報系に関しては不真面目な観客なので、直ぐに見返す事はしません。(暫く時間を空けてからもう一度は見返してしまうと思いますが…)
私が直ぐに見返したくなるケースは、例えば『デューン/砂の惑星 PART2』の様な映像面での欠落を感じた場合のみの様な気がします。
やはり私は映画の場合、物語よりも映像重視派なのかも知れません。でも今回はIMAXで見る事はないと思います(苦笑)
ここからが本編の私の感想になりますが、考えようによってはネタバレになるので、ご注意を…
私が思うに、本作はオッペンハイマー自身の実態というより科学者全般についての話になるかもしれませんが、私がまず印象に残ったのはマンハッタン計画での原爆実験の前のオッペンハイマーとマット・デイモン演じる軍人との会話の中で、実験前の結果予想として科学者の立場として計算通りになる確率について100%ではないと主張している。
ひょっとして原子核が起こす核分裂反応がずっと続くと地球そのものが燃えてしまうというイメージに苛まれいた。軍人側はその可能性はゼロという答えを求めていたが科学者の立場としてそれを回答しなかった。であるのに科学者も軍人もその計画を実行した。私はそこに一番深刻な人間の問題があるように思います。
次に実験後の様子はまるでアポロが月面に到着した時の様な歓声が沸き上がったシーンも非常に怖かったです。
この二点についてだけでも、科学者以前の人間の怖さを感じさせられ、戦後の顛末については、人間社会の永遠に変わらぬ茶番劇として皮肉をこめて作られていた感じがしました。
結局、神は地球をも破壊できる生物を誕生させてしまい、それを知った人間はそのことに目隠ししながらも日々恐怖を感じて生きて行かなければならなくなってしまったというお話だった様に思えました。
アカデミー賞受賞は納得できるが、他に有力な対抗作品がなかったからだと私は思う。
何年前だったか忘れてしまったが、原作を立ち読みして、オッペンハイマーの映画を作るべきだと強く思った。ノーラン監督がオッペンハイマーの伝記映画を作るとニュースで見て、私の念願がかなった。 観賞前に原作を読んでいく事を勧めるが、文庫本でも大部なので最低でもチラシにある人物相関図を見ていくと良い。 原爆開発と赤狩りが同時並行し、また時系列も前後する。頭が混乱してしまう。しかし、オッペンハイマーの数奇な人物、および複雑な性格を描く事に成功している。私達は今も核兵器の脅威にさらされている。その原点を見るだけでも価値があると考える。 ウクライナ侵攻でプーチン大統領は、核兵器の使用を脅しに使っている。この映画は時節がら合っている。これに対抗するにはよほど優れた映画でなければ、アカデミー賞受賞は難しいだろう。但し、10年も経てば、そんな映画があったなと思える作品になる気がする。 私が考える映画に是非すべき人がいる。他でもない我が国の昭和天皇である。オッペンハイマー以上に数奇な人生を歩んだ方だ(神様から人間になった、戰犯を逃れた。私は天皇に道義的責任はあると考えているが、仕方がないとも思っている)。しかし、右翼の反発が恐ろしくて日本では製作されることは無いだろう。海外の監督でもいい。たしかイッセー尾形が外国人監督で昭和天皇を演じた映画があった。
Struggle
向こうでのゴタゴタがあって公開がかなり遅れてしまった今作。無事に公開されてホッとしています。
ノーラン作品とはいえ、今までの作品の方向性(変幻世界やスパイ風味だったり)とはガラッと変わった作品なので、そこがどう出るか期待して観に行きました。
原爆で受けた被害を鮮明に描くというよりかは、原爆を作ったオッペンハイマーという人物に強くスポットライトを当てていたなと思いました。
オッペンハイマーが生徒として、教授として、原爆の開発者として、それぞれの視点で描かれる周りの人との関わりや戦争を終わらせるための原爆の作成だったりと、原爆が落とされる前までを明確に描いていて、日本での被害だったりは描かれませんが、前後の区別をしっかりしていて芯が通っていました。
原爆を落とすのに京都はターゲットとして外したのは歴史的文化財があるからという理由。そういうところ気にするんだなぁとフフッとなったと思いきや、「何月に落とすか?8月か?6日か?」という会話があの日に結びついてゾッとなりました。まだ落ちる前だから何気ない会話だけれど、後世に生きてその歴史を知っているものからすると恐ろしいものです。
原爆が実験として爆発するシーンは本当に凄まじく、激しい光から遅れてやってくる音の轟音っぷりときたらヤバかったです。カウントダウンのシーンは緊張しっぱなしでした。
性行為シーンはそこまで必要なかったなと思いましたが、そのシーンの撮影中にカメラが壊れて気まずい瞬間になったエピソードはめっちゃ面白かったです笑
原爆を落とした後の演説で、ジョークを飛ばす軽快さを見せていたかと思いきや、当人の頭の中はぐわんぐわん、視界もぐっちゃぐちゃ、どんなプレッシャーに襲われながら精神をやられていたのか、キリアン・マーフィの好演も相まって素晴らしいものになっていました。
ノーランのど迫力な映像がIMAXなどの特別形式で楽しめるかどうかと聞かれるとNOと答えると思います。
もちろん原爆が実験とはいえ爆発するシーンの光や音や衝撃なんかは劇場だからこそ体験できるものですし、実際の原爆はこんなもん比にならないくらいのものが襲ってくると思うとゾッとしました。
でも正直言うと映像が映えるシーンはそれくらいで、他は淡々と会話劇、複雑な時系列を集中して観るので、あまり画面の縦長や光の派手さは関係なかったなぁと思いました。通常形式で観ましたが十分映画として満足できたのでその点は安心して観に行って良いと思います。
原爆を作った張本人ですら長い間悩まされる。アメリカという国を勝利に導いたにも関わらず苦しんでしまう。
オッペンハイマーという1人の人生の追体験映画としてとても良かったと思います。彼の人生についても詳しく調べていこうと思いました。2回目観たいけど3時間か…ギョエ〜。
鑑賞日 3/29
鑑賞時間 13:10〜16:25
座席 Q-14
科学者と政府
原爆の父ということでそこにクローズアップされてたけど、どちらかと言うとオッペンハイマー自身について。冒頭は何が起きてるのかよくわからずに断片的に話が進んでいくが、物語が進むにつれて話がつながっていき、スクリーンから目が離せませんでした。 純粋に技術を追い求めた科学者と、それを政治利用・軍事利用しようとする政府、そしてその責任の所在をどこになすりつけるのか。 理系出身者は特に考えさせられる映画ではないでしょうか。 どこまでがほんとでどこまで美化されてるのかわからないし、日本人にはちょっと見るにハードルは高いかもしれないけれど、これは観るべきだと思う。
知的ヒーローの悲哀、残酷な仕打ち
都心の音響の良い館だったので、心情が爆音と重なり、ストーリーもずっと落ち着かないが、それもいかにも天才を描く映画っぽく、圧倒された。癖の強い科学者たちを束ねて巨大プロジェクトを一から動かすさま、時代の英雄から挫折と復活、文化・芸術に及ぶ教養など、細部にも魅力多し。それにしても、アメリカの政治って、人を大胆に使って、誉めそやし、後には痛めつける、なんと残酷なのだろうと思う。
映画の上手さと語ることの背景
観客の頭を適度に揺さぶる構成、登場人物の多さと複雑な時制を扱いながらそれほど混乱させない。まず感じたことは、とても上手い映画だということ。しかし好きではない。 好きでない最大の理由は作品そのものににあるわけではない。この作品は人をこそ描くもので戦争や原爆被害を描くものではないことも承知している。ただドイツとの競争で作られた原爆を「ドイツは降伏したから落とせない、それなら日本に」みたいな軽さで落とす判断だったり、当時は彼我ともに戦時で麻痺していた事も含め、加えてオスカー授与の露骨なシーンもありもやもやが取れない。こちとら昭和のオヤジ、仕方がない。 東京大空襲に触れている点やわずかながら被爆イメージも描いている点、良心も感じることは感じる。ピューちんのもよく見えたし(笑)
よく日本で公開できたな
目が離せない3時間、時間軸が複数あり展開が細切れのためテンポ良く。だがついていくのに必死になる難しさ。
登場人物の多さの上に変なキャラ付けをしてないから誰が誰だかわからなくなる。
そして、
実験シーンの凄さ。
成功に喜び大喝采のシーン。
以降、日本人は複雑な気持ちになる場面が多すぎて「よくもまぁ、日本人も観るかもしれないのにこんな映画作ったなぁ」と我々は思うかもしれないなぁとかを思いながらぼんやりとこんな狭い部屋でどこに原爆を落とすか決めたのか…と悲しくなった。
日本への投下シーンが無かったのが大変良かった。それは残酷だからとかいう意味ではなくて、そのシーンが入ると「戦争の映画」になってしまいオッペンハイマーの物語じゃなくなってしまうから。
大統領が「作った人間ではなく落とした人間を恨む」と言ったまさにその通りで、原爆被害の写真を見てる人達のシーンも正直いらないんじゃないかと思うくらい。
オッペンハイマーの事を知れて良かった。
この映画を観なければ「悪魔の兵器を作った人」という認識だけでしか無かったと思う。
核爆発が大気への引火
そんな恐ろしい事が。
たった一発で地球を滅ぼしかねない、そんなモノをこれからも作り出さない事を心から願った。
何とも言えない感情
原作は上巻の途中まで読み、 通常スクリーンにて鑑賞。 次は本全部読み終わってIMAXで観たい。 小学生の頃に夏休みの登校日に平和授業を受けていた記憶がある。原爆の悲惨さを学んできたので、この映画の発明の成功の裏側を容易に想像できた。悔しくて泣いていた。人間は頭が良いのに愚かな生き物だと見せつけられたような気がする。 言いたいことはたくさんあるけど、これ以上何も語りたくないという気持ち。
ハイクオリティーだけど予習が必要な映画
知的でクオリティーが高く、映像の一部に白黒を使用したりと凝った部分のある映画でした。ただ、大ボリュームでそこそこ長い音の流れるシーンがあり、正直、不快でした。 ストーリーは、軽く予習していったので話の流れは掴めましたが、科学者や政治家、原子力委員会の面々等、大勢登場するので、細かい所までちゃんと理解したい自分にとって、3時間は短すぎると感じました。6-12話位のドラマで作ってほしかったです。 第二次大戦と赤狩りに翻弄されながら生きる一人の科学者の人生を興味深く見ることができました。 激動の時代を生きた人達から、人間の愚かさ等、多くの考えるトピックをもらえる映画です。
他人に話す映画ではない
【良かった所】 臨場感のあるBGM 原子爆弾の開発経緯が分かる 科学者の人生を追体験 【微妙な点】 爆発の迫力がショボい 時系列が分かりにくい 共産主義など政治知識がいる 同じシーンが多く飽きる 原子爆弾がどのようにして作られたか、 どんな人が作ったか知りたければ見る映画。 他人に話す映画ではない。
時系列のややこしさこそあれど名作
類稀なる才覚を持つ物理学者のオッペンハイマーは、新型爆弾の開発を担当することとなり…。 クリストファー・ノーラン監督作。時系列が変わりまくるややこしさこそあれど、自己顕示欲がそのまま後悔に変わっていく物語が精神的にキツくなる良質な作品でした。
とまどいもありつつ
最初はいきなり話が始まるし、時間も突然切り替わるから戸惑いが。
まぁこういう流れなのかな、と分かればあとは問題ないかな。
何より一番混乱したのはキャラかな。
どんどん人が出てきて、しかも全員割と役割があるので誰がなんという名前でどういう立ち位置だっけ?とごちゃごちゃになりました。
ある程度知識はあっても良いかも。
それでもストーリー展開はよかったです。
単にやったー成功だーで終わるのではなくそこからまた一捻りあるので見応えありましたね。
そして、それぞれのキャストもハマり役でした。熱演ですね。
キリアンマーフィーは良い味出すなぁw
慧眼でありながら盲目
当然ながら、アメリカ映画ですからまずはアメリカ人に訴えるためにつくられているわけです。
原爆の被害について間違いなく彼らより知っている日本人には物足りないと思われる点はあります。
ただ、「反戦映画ではない」という評が上の方に出てきますが、そんなことはないです。
大きな意味での反戦映画であることは間違いありません。
主人公が核拡散反対と軍縮へと意見を固める前は、本当に矛盾した人物として描かれています。
原爆の実験と投下に「成功」して浮かれ騒ぐ場面は、明らかに「大量破壊兵器を開発・使用して浮かれていた、かつての愚かなアメリカ人」という相対化を意図したシーンなのですが(ここがわからない人がいそうだなとは思う)、主人公だけは広島や長崎で被爆した人間に何が起きるのかをリアルに想像することができます。しかし、仲間たちに賞賛されて口では勇ましいことを言ってしまう。「ドイツにも使いたかった」などと。
物理学の理論を発展させた先に虐殺があり、それが起こるまで本当の意味では未来を想像もできなかった主人公。しかしこれは科学と倫理に常にまつわる問いです。ですから、主人公の人物像だけを描く映画という解釈にも私は同意できません。
主人公を評する「慧眼でありながら盲目」とは、主人公だけのことではありませんよね。広い視野に立てば、アインシュタインだって同じでしょう。他の科学者だって。
しかし少なくとも主人公は後に「見える」ようになる。
アメリカでは主流だった、「原爆投下が日本の降伏を早めた」という神話にも、明確にNOと言っています。日本の負けはその前に明白であったと。
原爆投下にまつわる「神話」を過去のものにしようとする意志は明確に感じ取れました。
ただ、多くの方が指摘していると思いますが、原爆の実験が火薬の爆発にしか見えないのはそれでいいのかという点。
原爆は、爆発で命を奪うだけではなく、その後何十年もかけて人を殺していくという点の描写が薄い点、などは気になりました。
予習していった方がよかったのかも
オッペンハイマーの伝記映画というイメージでしたが、法廷劇的な流れもあり、ストーリーの構成の仕方も面白く、見応えがありました。 主人公の心象風景を重ねるような映像や音響の迫力も印象的でした。 オッペンハイマー目線なので、日本の被害の描き方は浅いものの、その目線を通して反核反戦のメッセージはきちんと込められており、良かったと思います。 とは言え、「オッペンハイマーは原爆を開発した科学者」くらいの知識だけで観に行ったので、もう一人の主人公的なストローズのことは全く知らず。 二人の関係性を知らないまま観ていたので、分かりにくいところもありました。 その部分は予習していった方がよかったかもと…。 しかし、知らなかったので後半の展開が読めず面白く感じた、という部分もあるかも…という気もしました。
非常に疲れました。私はだめでした
ノーラン監督作品の中では、私は唯一不満の残る作品でした。残念です。 理由は、原爆被害が映像として全く描かれていないからです。 唯一の被爆国の日本人として、国をあげて原爆開発に勤しむ中盤あたりから、観ていて沸々と怒りが湧いてきて・・・心がゾワゾワして・・・ 実験成功の場面の恐ろしさと合わせて、大騒ぎで歓喜する様子を見て非常に不快。 腑に落ちないし、正直とても気分が悪い。 出来上がった2つの原爆が砂漠の中を運ばれていく場面は、罪のない沢山の人たちがこの球体によって無惨に焼き殺されたのだと思うとたまりませんでした。 広島や長崎の人たち、これ見れないんじゃないでしょうか? 私は、敗戦間近の日本への原爆投下は間違っていたと思っているので。 非人道的過ぎると思うので。 ロバート・オッペンハイマー個人は善人だったし、大変優秀な研究者でしたが、結果、とてつもなく恐ろしい殺戮兵器をその手で作り出したことは変えられない事実であり、罪を背負うべき。 あの時代に政治利用されないわけがないでしょう? 科学者は、そういう事を考えられないの? 罪の意識に苦しむ晩年を丁寧に描いてはいるけど、それが当然の報いだと思ってしまう私は厳しすぎるのでしょうか? 3時間観終わり、とっても疲れました。
全884件中、681~700件目を表示