劇場公開日 2024年3月29日

「人類初の核エネルギーの利用は偉業のはずだが、影も大きい。その影をきちんと描いた映画だけど、3時間は長い」オッペンハイマー p.f.nagaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 人類初の核エネルギーの利用は偉業のはずだが、影も大きい。その影をきちんと描いた映画だけど、3時間は長い

2025年10月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

オッペンハイマーは、物理の天才たちを集め、巨額を投入して設備を整え、世界で初めてのことを成し遂げたということだろう。でも、それをじゃまするいろいろな出来事があり、偉業を達成したあとも足を引っ張られたりして苦労したのだと、伝記を読むように感心した。
「プロメテウス」という比喩のように、宿命を受け止め、逃げたりしない姿勢にも感心した。

世界初の核エネルギーを利用した爆発の場面は、緊迫感があり、映像もリアルでよくできていると思った。「計算上では、これくらいの威力」なので、30㎞ほど離れたところから観測する、一人ひとりに黒いガラスを渡す、などは史実なのだろう。ポツダム会議の前という日程で失敗できない状況の中、前夜の嵐も緊張を高めていた。よくできたシーンだと思う。

日本の広島、長崎の被害を具体的に描いてはいない。そのことは、映画のテーマがそこじゃないのでしかたないと思う。むしろ、被害者の多さを嘆く場面もあり、スルーしていないことを評価したい。
原爆を使った責任と開発した責任とは別であるとしつつ、使わないと日本が降伏しそうもないことや、ナチスやソ連への対抗という意義との、政治的な『葛藤』が描かれていて、良心的だと思った。

オッペンハイマーを狭い会議室で尋問する場面が、映画の軸となっていて、その回想シーンで、順次出来事を説明する形式になっている。よく考えられた構成だと思うが、尋問の場面は、どうしても重苦しくなるので、映画全体に暗い印象を受けてしまった。観客もオッペンハイマーの視点で観ているので、自分が責められている感じがしてしまう。
また、映画全体が3時間と長く、冗長に感じた。多くのエピソードを盛り込み過ぎたのではないか。映画と伝記は違うのだから、削った方が良いエピソードがいくつかあるような気がする。

p.f.naga
ゆーきちさんのコメント
2025年10月6日

共感ありがとうございました。

私は字幕なしで観たのでかなり理解に苦しみましたが、オッペンハイマーなりの苦悩を描いた点は評価したいと思います。

ゆーきち
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