「忘れてはいけない日」オッペンハイマー イズボペさんの映画レビュー(感想・評価)
忘れてはいけない日
日本では公開前から様々な議論がうまれた作品、私としては待ちに待った公開だ。
今日で公開2日め。これからも様々な意見や議論が出てくるだろう。結論からいうと、それこそがノーラン監督の狙いであり願いなのではないだろうか。
広島、長崎の22万人をこえる犠牲を経験した唯一の戦争被爆国である日本に生まれ育った人こそこの作品を観て賛否議論する意味があるのではないだろうか。
私の母は1945年8月8日生まれだったからか、8月6日と8月9日の式典の日は必ずテレビの前に私達姉妹を座らせた。広島、長崎とも母に血縁はいないが彼女なりの「語り」だったのだろう。
劇中に「世界が忘れられない日となる」とあったが(トリニティを指していたのか広島を指していたのか忘れたが)、この作品一番の皮肉なセリフだと思った。この日本においてすら「忘れられない日」もそれが何をもたらしたのかも「忘れてしまいつつある」からだ。そんな今、この作品を日本で公開する意味はあると思う。
2024年を生きる私たちは戦争被爆のことを語り継がれたものでしか知らない。でも、その「語り」を知っているからこそこの作品を多くの視点から評価できるのだと思う。
この作品はオッペンハイマー博士の自伝映画であるので、原爆が主題ではない。しかし、原爆の父となり神話ではなく現代のプロメテウスとなってしまったオッペンハイマーの苦悩は未だ戦争の無くならない今を生きる私たちが想像力をもって向き合うべきものだと思う。
私は終演後しばらく腕組みをしたまま立ち上がることを忘れていた。
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