「恐ろしい物を作って色んな意味で後悔した人の話」オッペンハイマー ノーマンさんの映画レビュー(感想・評価)
恐ろしい物を作って色んな意味で後悔した人の話
オッペンハイマー博士は理論の人で実践は苦手な人です。
ですが天才なので一般人には理解出来ないことを理解出来る特殊能力を持ち、人を説得、やり込める能力も持ち合わせています。天才は常識や倫理観など持ち合わせていません(笑)
そんな彼は数式を見るだけで何が起こるのかが解ります。音楽家が楽譜を読まないで聴いただけで演奏を再演出来るように。
彼には原子爆弾、アトミックボムがどういう結末を招くかをマンハッタン計画が始まった時点で理解していたのです。
本来研究が先行していたと見られていたナチスドイツが降伏した時点で造らなくて良かったと彼も了解していたが、ソ連がそのうち作ってしまうのなら先に造ってしまえと流されてしまいます。
アインシュタインに数式を持って相談に行く場面が最初にあります。
この場面がハイライトだったと思います。
この作品はオッペンハイマーの核開発を描いていると同時に彼と彼を取り巻く人々のサスペンス劇とも言えます。
オッペンハイマー博士は自分の立ち位置を理解した人ではない為率直な意見を言いがちのようであらぬ敵を作ってしまいます。原爆開発はやり遂げますが、水爆は拒みます。これが原因で敵を作ってしまいます。彼は天才で常識人ではありませんが悪魔にはなれなかったし、なりたくなかったんですね。
倫理観は持ち合わせてませんでしたが理性はあったのです。
出演者は豪華、何処で見た人、映画に詳しくない人でも分かる俳優が出演しています。必見の価値ある作品です。
公開後に被爆国である日本、広島、長崎に配慮が無いと意見がありましたが、そんなことはないと思います。
劇中に広島長崎の名は頻繁に台詞に出てきますから。
あと原子爆弾の爆破テストをCGでやらなかったのが失敗とする意見も散見されますが、この作品の主題は核爆弾の開発、プロジェクトX的なものより群像劇、サスペンス劇によせた物ですからそこは重要ではないと思います。
劇中のオッペンハイマーも爆発威力よりもキチンと爆発するかを心配していました。威力は彼に初めから分かっていたのですし。
オッペンハイマーがアインシュタインに数式を見せた時にアインシュタインが言ったようにドイツの科学者と共有して、核開発をお互いに行わなければ原爆、水爆は無かったかと言えばそうではないと思います。
愚かな人類は誰かが同じ物を作ったでしょうね。
それがオッペンハイマー博士だったというだけでしょうね。
あとR15指定なのは観れば分かります(笑)