「科学者政略家の苦悩」オッペンハイマー hykさんの映画レビュー(感想・評価)
科学者政略家の苦悩
長い!という感想を持たない人はいないだろう。にも関わらず、面白い、考えさせられる。プロジェクトリーダーとしての苦悩、科学と政治のアンマッチによる苦悩、予想外破壊力への苦悩、科学的成果の歴史的意義への苦悩、祖国貢献と政治的意図の板挟み、科学成果への競争と戦果の混同、リーダーシップと(不倫などの)非道徳が混在するキャラ。様々な苦悩!苦悩!がダイナミックな映像・音響で表現されており、マジで怖かった!もはやメンタルにくるホラー映画か。
不倫を繰り返しながら最後は妻に救いを求めるのが、メンタル苦悩の真理か。学問を追究する求道者かと思いきや、国の科学への支援体制への不満や労組活動など政治家としての一面もあり、女たらしで奔放でハンバーガー屋も経営できないと思いきや、家族に手を焼き子育て出来ないし弟を溺愛するヒューマニティもある。メンタルブレイクまで尋問されても祖国を捨てない忠誠心は見事。
ストロースが最後まで何者なのか解らんかったのは私の理解力不足か。原子力委員議長と知って納得。ひたすら悪者として表現されてたが、スケープゴート作りに走るほど、こちらも苦悩してたのであろう。と思うと、純粋すぎる科学者と狡猾な政治家の対比だが、負け戦と知っても引かぬ姿勢が、贖罪なのか。
最終的には、アルバルト師曰く「褒章は君のものでなく彼らのもの」に集約される。名声とは誰のものか。
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