「日本視点が欠如した原爆を生み出した男の光と影」オッペンハイマー みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
日本視点が欠如した原爆を生み出した男の光と影
今年のアメリカアカデミー賞で作品賞を受賞した話題作。原爆の父と言われる主人公オッペンハイマーの光と影の軌跡を重厚に描いた人間ドラマ。ストーリー展開は難解ではあるが作品全体から熱気を感じる力作である。
舞台は第二次世界大戦中のアメリカ。戦争の大勢は決していたが、ドイツなどとの核開発競争に躍起になっていたアメリカは、マンハッタン計画の原爆開発プロジェクトリーダーに主人公を任命する。しかし、主人公は実験で原爆の凄まじい破壊力を目の当たりにし、広島、長崎での被害の大きさから、原爆を生み出した事に苦悩し、その後の水爆開発に異を唱えるようになり、赤狩りの対象となっていく・・・。
台詞、登場人物が多く、ストーリーを追うのが大変だったが、原爆開発達成までのプロセスはテンポ、歯切れが良く、迫力があり開発者達の想いが伝わってきた。
実験シーンも実験前の緊迫感はGoodだったが、肝心の爆発シーンは明かに迫力不足であり、原爆の恐ろしさが伝わってこない。強烈な光を放つ破壊力が増した爆弾程度にしか感じられない。アメリカ映画お得意のCGを存分に駆使して原爆の驚異的な破壊力を表現して欲しかった。
実験が成功し実際に広島に原爆が投下されて狂喜乱舞するアメリカ群衆の姿は、被爆国民である日本人として看過できなかった。戦争の残酷さを感じた。
本作は、アメリカが舞台なのでアメリカ視点寄りになるのは仕方ない。しかし、原爆の被爆国である日本の視点がないのは納得できない。原爆の加害国であるアメリカ視点と被害国である日本の視点双方から原爆に迫らなければ、原爆=核爆弾の狂気を捉えることはできない。
後半、主人公は水爆開発に反対したことから赤狩りの標的となる。聴聞会での激論は、正しく権力闘争であり、成功者の辿る典型的な影の展開だったが、法廷劇を彷彿とさせる演者達の熱い台詞の応酬で見応え十分だった。
作品賞に相応しい作品だが、被爆国日本の視点を加えて原爆の悲劇を描いて欲しかった。
「伝わってこない。」
個人的にこの映画って事では無くそもそも
この監督の作品の多くがそう思えました。
そう言うスタイルなのかも知れませんが。
ダークナイトは印象的でしたが
メメントやインセプションなど、
ほか作品も一見、映像凝ってたり面白い内容ですが結局、最後まで見ても印象薄いんです。
みかずきさん、共感&コメントを頂いてありがとうございます。
今も、より効率的効果的な敵国破壊手段としての核兵器開発を止めない核保有国、国家や指導者のエゴや欲望や不安に突き動かされ核兵器を保有しようとする国々。あまつさえ侵略戦争を起こした挙句に、自らの権力維持のために核兵器使用の恫喝を平気で行なう独裁者。。
オッペンハイマー博士が見た、空に次々と立ち昇る無数の核誘導弾の航跡と世界が焼き尽くされていく幻影。
「我々は既に世界を破壊した」博士達の感じた恐怖は今この時も私たちに真に迫ってきます。本当に戦争は無益で残酷ですね。。
日本もボーアやハイゼンベルグ、ローレンスの下で学んだ理研の仁科芳雄博士らに「二号研究」と称して原爆開発させてましたからね。日本にとっては文字通り国の存亡を賭けた背水の陣の戦争、もし先に開発に成功していたら間違いなく躊躇なく使っていた事でしょうね。。
この作品は原爆開発そのものについては、否定も肯定も擁護も弁明もせず、オッペンハイマー博士その人とルイス・ストローズ長官に焦点をあてて描いていますが、その物語の視点自体が十分に核の恐怖と反核の訴えになってる様に感じました。
日本視点の作品はそれこそ世界中が観てくれるようなクオリティーと内容で日本人自身が作るしか無いのでは?とも思いました。
みかずきさん
ご丁寧にコメントいただき、フォローもありがとうございます^_^
みかずきさんのご意見よく理解できます。
まだ始めたばかりの初心者ですが、宜しくお願いいたします。
こんばんは
原爆の被害報告、ホントにあっけなかったですよね。やっぱりアメリカの映画だから?なんて思ってしまいました。
こんな時期だからこそ、もうちょっと踏み込んでほしかったです。
トリニティ実験では被爆した犠牲者はいなかったんでしょうかね。まぁ、そこがストーリーのメインではないのですが、日本人にはモヤモヤの晴れない作品でした。
ご教示ありがとうございました。
コメントそして共感ありがとうございます。
本当に残念ですね。
一人でも日本人が登場して・・・ということは無理だったのでしょうか?
やはり黄色人種への白人優位の考え方が根底にはありますか?
とても悔しかったです。
近くに映画館が出来ましたのと、雪が溶けて暖かくなりましたので、
最近映画館へ行っております。
いつまで続くか全く分かりませんが、やはり映画館は良いですね。
でも配信も好きです。
またこれからも宜しくお願いいたします。
コメントありがとうございました。自分のを投稿した後にみかずきさんのレビューを読んだのですが、感想がかなり似ていますね。あの程度の爆発で、どれだけ世界の人が原爆の恐ろしさを分かってくれるでしょうか。
共感ありがとうございました。
私は勝手に「胸糞映画」にしてしまってますが、オッペンハイマーの伝記としては原爆だけがメインではない感が伝わるからです。こちらのショックはご存じないでしょうし。
映画を見た後にドキュメンタリーでトリニティ実験の映像を見たのですが、今までの爆弾とは桁外れのものでした。キノコ雲が立ち上り閃光と爆風が襲いかかる、映画で描かれたようなありきたりの爆発とは次元が違っていました。オッペンハイマーが実際に見ていないヒロシマ・ナガサキの衝撃は具体的に描かないのはわかりますが、トリニティ実験の際には彼は見ていたはずなので、再現して矛盾はないはず。クリストファー・ノーランは、なぜこれを避けたのか。アメリカ・マーケットへの配慮?? この映画の見方がちょっと変わりそうです。
共感ありがとうございます。
良く言えば加害者の連合国側の自分にはおこがましいと思ったのか、悪く言えば日本人からの非難は避けられないので極力抑えたのか、どっちも有ったんじゃないですかね? とにかくエモーショナルになる表現は極力抑えた、焼き爛れるシーンもそんな感じを受けました。
実験のシーンの迫力不足の件については、まったく同じことを感じました。私もCGを最大限活用して、見ただけで地獄のような、決して人類が持つべきでない力を持ってしまったことを表現して欲しかったと思いました。