「自滅へのカウントダウン」オッペンハイマー 吠えない狼さんの映画レビュー(感想・評価)
自滅へのカウントダウン
ノーラン作品はインターステラーが好きで、他はそれほど・・といった感じ。本作、アカデミー賞を受賞し、かねてよりヒートアップしていた「ノーランやべぇ」「やっぱりノーランだよね」という世間的ノーラン熱が最高潮に達しているので、IMAXで鑑賞してきました。
セリフの応酬ばかりなのでかなり体力要りますが、アメリカのノー天気さというか、人類の愚かさみたいなものを感じましたね。追いつけ追い越せの独善的な思惑で、人類史上最も忌むべき兵器を生み出してしまった。そして今、AIがものすごいスピードで我々の生活領域に入ってきている。AIについてはもちろん恩恵も大いにあるけど、個人的にはターミネーターやマトリックスのような暗い未来しか浮かばない。物凄い発明なんだけど、世界的な影響や人類の存続に関わるリスクを採ってまで、何だか人類が自分たちの首を自ら絞めているような、自滅への道を歩み続けているような、そんな恐怖をこの作品を観て改めて抱きました。
そして原爆の恐ろしさは描いて欲しかったですね。オッペンハイマーの視点で描かれてるとか、セリフなどで言及してるとか、そういったことは分かった上でなお、やはりその思いは消えなかった。有名なフィルムメーカーが製作し、色んな人が観に来るであろう話題作だからこそ、その訴求力を以て少しでも観る人に原爆の恐ろしさを知ってもらえたのではと思ってしまいました。
あと、ノーラン作品て作りに関心することはすごくあるんですが、心から感動したっていうのは少ないです。単に相性だと思うんですが、どこか醒めた目で語っているというか、理詰めの人なのかなと。例えば、この作品オリバー・ストーンに撮らせてたらどうなったか。オールスターキャスト、政府の陰謀の犠牲者、何となくJFKに通じるところがあった気がします。彼の場合はもっと政府批判を強めて、思いを主要な登場人物に熱く語らせると勝手に思ってるのですが、ノーランにはそれがない。それが良いとか悪いとかではなく、ノーランの作家性みたいなのが改めて自分の中で腹落ちした、そんな鑑賞体験でもありました。ロバート・ダウニー・Jrは流石の演技でした。ゲイリー・オールドマン、チャーチルがトルーマンて・・こちらもカメレオン俳優の面目躍如ですね!