「サピエンスを名乗る資格」オッペンハイマー グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
サピエンスを名乗る資格
ラスト5分から受けた衝撃があまりにも凄まじく言葉にできません。
ノーラン監督はこれまで最新の科学的知見をもとにした着想で、我々の想像力をはるかに超えた映像作品を生み出し、内容的にも興行的にも高いレベルで世に送り出すことを成し遂げてきました。当然、実際の科学者たち、とりわけ時空や重力の概念を驚異的に解き明かしてくれたアインシュタインへのリスペクトの気持ちは強いと思います。
そんなノーラン監督が、人類史にひとつの画期をもたらした科学者オッペンハイマーについて並々ならぬ関心をもったというのも十分に頷ける話です。
そんなオッペンハイマーに、本来人類が共同で負うべき倫理的哲学的な懊悩の責任の大半を負わせた社会システムに対しての大いなる疑問、大いなる問いかけをしたようにも感じました。
もちろん、これといった答えはありません。社会システムを構成している我々ひとりひとりが考えなければならない問題だし、現在も未来も進行形のまま存在するであろう人類共通の課題。
ヒト属で唯一の生き残りである「ホモ・サピエンス」…サピエンスとはラテン語で「分別のある・賢い」。
そのサピエンスたる人類が今行っていることについての大いなる問いかけ。
科学者たちが発見・発明してきた文明のツールを享受する(一部の権力者は圧倒的な力として行使する)ばかりで、倫理的な責任だけ科学者に負わせてきたのではないか。
IMAXの効果もあってか没入感が半端ではなく、天才とは程遠い私のような凡人でも、オッペンハイマーの内面に迫る映像表現を通じて、倫理的な懊悩が伝わってきます。
ノーベル賞を創設したノーベルについても思いを馳せることになりました。
「ダイナマイト王」「死の商人」などと言われることもあったノーベルは、「物理学」「生理学・医学」「化学」「文学」「平和」等を対象分野として遺言を残しました(「経済学」はノーベルの遺言には記載がなく、スゥエーデン国立銀行の働きかけで後年追加された)。
オッペンハイマーとは違った種類の成功と苦悩ではあったとしても、「我は死なり、世界の破壊者なり」に近い感情に襲われたことがあるのではないだろうか。
コメントありがとうございました。
お返事が遅くなってすみません
m(__)m
鑑賞中は冷静に!観るよう頑張りましたが、まだまだ考える事がやめられない。時間が経つにつれ怒りの感情が強くなるし、悔しくて堪りません。
く科学者たちがー
からの文面にハッとしました。
現在進行中の問題も含め、人間の危うさと愚かさには、言葉では表せない、何とも複雑な感情になります。
綺麗に咲いている桜を見て涙が出そう( ; ; )後30分で子が帰宅。昼食準備もあるのに。。気が重いです( ; ; )
メール返信のRr:も
responseやreply、refer to、等の略ではなくて、ラテン語の〝in re〟(〜について)からだそうです。
ラテン語、というより古代ローマ恐るべし!ですね。
共感ありがとうございます。
オッペンハイマーの晩年は調べてないのでよく解りませんが、この人は何か償いみたいな別活動はせずあえて科学者で人生を終えたんじゃないでしょうか。思う所も有ったんでしょうけど隠者のように去って、余程バッシングが堪えたのでしょうか?