「初恋の真相は、コメディとしては面白いが、人間ドラマとしてはつまらない」人生は、美しい tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
初恋の真相は、コメディとしては面白いが、人間ドラマとしてはつまらない
湿っぽくなったり、重苦しくなったりなりがちな話が、ミュージカル仕立てにしたことで明るく軽やかな語り口になっているし、最初は戸惑ったミュージカル・シーンも、思いのほか違和感なく楽しめた。
その一方で、夫が何度も突っ込むように、余命2か月の妻が元気過ぎるのは不自然だし、死に対する恐怖や葛藤がほとんど感じられない彼女の能天気ぶりも気になった。
妻に対する思いやりや優しさが欠落しているように見える夫も、運転手として彼女の旅に付き添う姿から、自分の気持ちを素直に伝えられない不器用な人物なのだろうと推察できるし、ラストの伏線回収によって、そのことが明確になるところは感動的でもある。
ただ、妻の身になって考えると、よくもこんなデリカシーのない男に黙々と付き従って来たものだと、彼の魅力を理解できないもどかしさを感じるし、韓国の女性は、皆、こんな「関白を気取った亭主」に耐えているのだろうかという疑問も残る。
子供たちとの関係も淡白で物足りないし、結婚式の形を借りた「生前葬」での感動の盛り上げ方も在りきたりで、あまり胸に響かない。
何よりも、初恋の人を巡る真実が明らかになるところは、話としては驚きがあって面白いのだが、「初恋の人が自分のことを好きではなかったから、今の夫を初恋の人と思うようになった」みたいな展開になってしまったのは残念としか言いようがない。
ここは、やはり、「初恋の人と再会して、しかも互いに両思いだったことを確認した上で、それでも、初恋の人よりも、30年間連れ添った夫の方を愛していることに気付く」といった展開にした方が、夫婦の愛の物語として、感動的になったのではないだろうか?
奇をてらったその場しのぎのウケ狙いよりも、もっとじっくりと物語を掘り下げてもらいたかったと思えるのである。