劇場公開日 2023年9月29日

  • 予告編を見る

「クレムとルー。出会いと別れの物語。」ルー、パリで生まれた猫 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0クレムとルー。出会いと別れの物語。

2023年10月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

①ネコ好きであったり、
②フランス映画が嫌いではなかったり、そして
③別居や離婚の経験がある人間が
それぞれの経験と好みから採点を奢る映画ですね。
いずれかに心が惹かれ、あるいはそのすべての項目に思い当たることがあって、クレムとルーの物語に魂の琴線が触れるならば、この映画はあなたのものになるのですよ。

僕はいつも自分のレビューを読み返しながら、そしてつらつらと文章を書きながら思うのは
これって「映画レビュー」と言えるんだろうかということ。
いつだって、映画を観るときは右の目でスクリーンを見、
そして左目では常に自分の人生を見ている 僕きりんとしては、こういう文体になってしまうのは仕方ないことなのですが。

我が娘は
ネコを拾い、
犬を拾い、
動物園からポニー(!)をもらってきて、そのすべてを心底可愛がり、そして、親たちの離別も見てきた子。

甲斐があってかどうだか、藝大へ行って動物彫刻の作家になってしまった。
彼女の作品は、いずれも深く眠る動物や、死を見つめる捕食者、あるいは呼吸をやめる間際の、今わのきわの動かなくなった動物たちだ。
遺体から草が伸びて花が咲くような作品さえある。
「墓碑彫刻」なのだと本人は言っていた。

時代が時代なら、そんな彫刻ばかり作る娘はどこか問題のある児として、その“不健康”な趣味を止められたかもしれない。

動物と死と別れと。
登場人物の言葉が、いろいろ聞き覚えがあるものだから、どれもこれもシリアスで、心に刺さる。(※)

約束の期限の三日目、
窓の外を見つめながら、静かに《決断》の涙を流すクレム。
この事と、
ルーが息を吹き返したことは別だ。
彼女が別れを決意した瞬間、あれは本当に胸を打つ素晴らしい演技・演出だったと思う。
僕も暗い客席で泣いた。

たくさんのネコと一緒に暮らしてきて、そして僕が安楽死の手を掛けて死なせたいくつかの別れも、号泣も、
幾度も離別というものを味わってきたこの僕も、
その道のりを振り返ってみれば、この映画は実に味わい深くて、 vie 生命に密着した哲学を思わされるものだった。

ねこカフェ♡フリークにも、
動物映画が好きな層にも、そして
「誰も知らない」を観る人たちにも、
さまざまな人たちに受け入れられる映画でしょう。
僕にとってはこれは動物映画ではなかったです。

・・・・・・・・・・・・・

【本日の東座】
来館者は
素敵な雰囲気の高齢のご夫婦、そして
一家四人で来場のお客さん、
そして一人ぼっちのきりん。

映画館の隣に大きなアパートが建設中だ。映画好きがたくさん越してきてくれるといいな。この小さな映画館で励まされ、勇気や生きる力を ほのかに与えられたら
それはどんなに嬉しいことかと思う。

きりん
ミカさんのコメント
2023年10月30日

きりんさん、恐山は美しい場所でした。イタコには会いませんでしたが、後に死んだら行く場所だから生きているうちに行った方がいいという言い伝えがあると、青森出身の方から聞きました。

ミカ
NOBUさんのコメント
2023年10月29日

今晩は
 何時も素敵なレビューを有難うございます。
 何時か「東座」に行きたいモノだと思いながら、長野まで行ってしまいます。(で、日本最古の長野ロキシーで一本映画を観て帰ります。貴重なる時間です。)素敵なミニシアターがある街って、良いですよね。私にとっては「刈谷日劇」かな。では。返信不要ですよ。

NOBU
きりんさんのコメント
2023年10月29日

(※)子役や動物を使っていてもけして冷静さを失わない、
さすがフランス映画と思いました。

きりん