「「やましいことが無いんだったらドアを開ければ良かったのに」なんていうアホな話ではない。黒人が安否確認を誤作動したら白人警官に射殺されてしまった話。差別と偏見が渦巻く現代アメリカ社会の悲劇 。」キリング・オブ・ケネス・チェンバレン マサヒロさんの映画レビュー(感想・評価)
「やましいことが無いんだったらドアを開ければ良かったのに」なんていうアホな話ではない。黒人が安否確認を誤作動したら白人警官に射殺されてしまった話。差別と偏見が渦巻く現代アメリカ社会の悲劇 。
まるでドキュメンタリーか再現ドラマのようだ。もし実際の事件を元にしてなかったら、チェンバレンさんも、警官たちも、ライフガードも話を面白くするためにこじらせ過ぎで、リアリティが無さすぎると思ったかもしれない。
例えば、チェンバレンさんがあんなに警官が中に入ることを拒むのもリアルな感じじゃないと思うし、警官が応援まで呼んでドアを壊して強行突破する案件だとも思えないし、ライフガードも安否確認解除の報告がスムーズに伝わり、警察本部から現場への帰還命令も出されて一件落着だったと思う。
しかし実際は、チェンバレンさんは断固入室を拒否し、警察官は強行突破し、ライフガードの確認解除連絡は現場からの警官撤収にはつながらず、チェンバレンさんは射殺された。
もしチェンバレンさんが白人だったら起きなかった事件で、現代アメリカ社会の人種差別の実態を突きつける映画だ。白人が「安否確認の誤送信だったから入室は断る」と言えば、警官たちもおとなしく帰っただろう。そして皆んな何事もなかったように気だるい朝を迎えた。
アメリカの社会情況は知らないが、黒人の失業率は白人より高く、貧困率も黒人のほうが白人より高いと聞く。コロナなどで失業率が上がると、上がった分の大半は黒人らしい(うろ覚えだが90%ぐらいだったか?、ちょっと自信がない)。 そういったことから貧困から犯罪に手を出す黒人が多いという憶測に繋がり、黒人だというだけで犯罪に絡んでる率が高いという偏見を生むかもしれない。推測。
地域によっては犯罪が多い地区があって、そういった所にあるアパートが犯罪の温床になってたりするのかもしれない。これも推測。
だから新米警官のロッシが警部補に「ここは高級住宅街か?ええ?このまま帰って後で何か起きたら俺たちの責任になる」と言われたら、経験が浅くて地域の実情もよく把握してないロッシは従うしかない。
人種差別というのが実感できない。この映画を見ることで、差別される黒人の悲しみ、怒り、恐怖、絶望を少しは追体験出来たのだろうか?
白人だったら生涯 気付くことも、意識にすら昇ってこないことを、黒人だからというだけで注意したり考慮しなければならないのだ。しかも一生。暗たんたる気持ちになる。
差別する側が差別を止めるしか差別を解消する方法は無いように思う。
ドアの外にいる警官たちは、高圧的な上から目線で、白人の命令を黒人が拒否するなんてムカつく、サッサと言うことを聞けという感じが見てとれるが、それと共に黒人に対する恐怖心から来る攻撃性も感じられた。つまり、やられる前に先にやらなきゃ逆にやられちまうっていう恐怖心が有るから攻撃してんだっていう理屈だ。
黒人が警官に押さえつけられて窒息死した事件があった。動画がニュースで放映されたから記憶に残っている。エリック・ガーナーとジョージ・フロイドは重犯罪を含む犯罪歴も多くて、ケネス・チェンバレンさんとは違う種類だと思う。
ケネス・チェンバレンさんは何もしてないのに(過去に犯罪歴もないのに)、黒人だというだけで白人警官に射殺されたのだ。犯罪歴が有るから殺してもいいという訳ではないんだけどね。