「期待度△鑑賞後の満足度△ 冗長なだけの大作。ワーテルローの戦いのシーンだけ往年の切れが少し見えたけど。リドリー・スコットは何を描きたかったんでしょうね。」ナポレオン もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
期待度△鑑賞後の満足度△ 冗長なだけの大作。ワーテルローの戦いのシーンだけ往年の切れが少し見えたけど。リドリー・スコットは何を描きたかったんでしょうね。
①実はフランス人ではなかったナポレオン(イタリア人でした)。
現代はフランス国籍のある人は人種・宗教に関係なく全てフランス人なんですって。さすがフランス革命・市民革命の国。
日本人の定義も日本国籍をもっている人全部にしたら良いのに。
すごくフランス人になりたかったナポレオンだから、現代のフランスの民法の元になっているフランス民法典(又の名をナポレオン法典)はその願望も反映しているのかも。
今年の9月末から10月頭にかけてパリに行った時に、現地の人が“フランスの英雄でありながらナポレオンを描いた映画はフランス以外の外国映画(フランスから見てということです)が多くて不思議”と言っていたけど何ででしょうね。
現代のフランス人はナポレオンに複雑な感情を抱いているのか、彼の全生涯を描くのは無理だから彼の生涯のどの時点に焦点を当てるのか、難しいのかも。お墓はパリのど真中にデンとありますけど。
②毀誉褒貶が多くても後世(近代的ヨーロッパ経由で世界にも)に多大な影響を与えた軍人・政治家ですが、あまりその面は強調して描かれない。
もう少し軍人・指揮官としての優秀さが描かれていれば、100日天下の時に元部下がナポレオンに従ったエピソートももっと説得力があったと思うけど。それでもホアキン・フェニックスはその場面は見どころのある演技だったとは思う。
③ナポレオンの生涯をよく知っている人か、フランスの近代史、ヨーロッパ(ロシア含む)の近代史をよく知っている人でなければ同盟・敵対関係、時間軸がよく分からなかったのではないかと思う。それでも映画として魅せる質の高さがあれば良いがそれもなし。
かといってナポレオン像の新解釈とかナポレオンの内面を描くのに特化しているかと言えば、ホアキン・フェニックスをもってしてもナポレオンという人間の内面(フィクションであったとしても)が良く描かれているとも思えない。
④ルパート・エべレット、久々にダンディーで男らしい役。
⑤冒頭、マリー・アントワネットのギロチンでの斬首シーンには「フランス版『首』になるのか?」と思ったが、ならなかった…
⑥ルーブル美術館で有名なナポレオンの戴冠式の絵を観たが、本作での描写はかなり違っている。
カトリックの国でああいうことをするのは大変な事だったと思うのだが、本作では拍子抜けするくらいアッサリと描かれている。
イギリス人監督の良さでもあり悪さでもあるのだろう。
⑦ABBAのヨーロッパで広く知られるようになった最初の大ヒット曲が“Waterloo (ワーテルロー)”(皮肉にも『オデッセイ』で流れる)だったのでも分かるように、ワーテルローの戦いはヨーロッパの人にとって天下分け目の戦いくらい認知されているんでしょうね。