「英国人視点?」ナポレオン マスゾーさんの映画レビュー(感想・評価)
英国人視点?
フランス
西ヨーロッパ最大の共和制国家
16世紀に成立したブルボン朝で
絶対王政は隆盛を極め近代にまで
続く植民地保有国家となったが
圧政に18世紀には啓蒙思想の普及から
フランス革命が起こり民主化へ
世界でも最初に「自由平等・国民主権」
といった民主主義政治を初めそれに
まつわる様々な問題を経験しながら
現代まで続いている国家である
フランス国歌はフランス革命の
キャンペーンソングなので
「やつらの不浄な血で大地を染め上げよ」
など国歌とは思えない過激な歌詞
なのである
今作はそんな民主化された
フランス創世記に皇帝の座に就いた
ナポレオン・ボナパルトの
生涯を巨匠リドリー・スコットが描いた
果たしてどうだったったか
ナポレオンは
フランス革命後の混乱に陥った
フランスの領土を周辺国家が
みんな狙ってる中で
軍師としての類まれなる才能で
バンバン勝って見せ
英雄のカリスマを確立した人
というイメージがありましたが
同時に恐ろしく冷徹な判断も
下せる人だったという部分も
ホアキン・フェニックスの
怪演とともに浮き彫りにした感じ
そして最初の妻ジョゼフィーヌ
への愛に飢えた男・・
なんですが160分近い尺にも
関わらず
戦って・妻に会って・戦って
の繰り返しに思ったほど
カタルシスを感じませんでした
あたかもナポレオンが戦いにしか
能がないかのような描き方に
首をかしげる部分もあります
司馬遼太郎が
軍神とまで言われた
乃木希典を「坂の上の雲」で
さんざディスったのを思い出して
しまいます
ナポレオンは確かに
戦いばっかしてロシア遠征の
大失敗とワーテルローの敗戦で
終わった人みたいに歴史では
残ってますが実は内政も優れた
人でフランス国内の産業保護
何よりナポレオン法典は
信教の自由や平等を保証
しておりその後の世界中の
民主主義国家の憲法などに
多大な影響を与えたと
言われています
全然戦争バカではなかったのです
その戦争に関しても
騎兵・歩兵・砲兵の役割分担や
ビン詰めの保存食の発明など
戦地における食料や物資の
流通「兵站」という概念を
変えたと言われています
普通に有能な人です
でもこの映画はそうした
部分はほぼ描かれません
英国人視点なんですかね
85歳の「サー」
リドリー・スコット
の作る映像的な迫力は凄まじく
序盤のナポレオンの馬が
砲丸に撃ち抜かれるシーンは
思わずうおっと
声が出てしまうほどだし
王党派の市民に平然と
大砲を放ちバラバラに
なっていく人間たちの
シーンは絶句します
(ブドウ弾という殺傷力を
高めた散弾を使ったらしいです)
そうした英雄か悪魔か
という部分に関しては
ホアキン・フェニックスの
不穏な緊張感は良かったです
案外アクション映画でよく見る
ヴァネッサ・カービーも
相変わらず美しい
ヘレン・ミレンみたいになって
いくんでしょうねぇ
160分あったけどトイレに行きたい
とは思うことはなかっただけの
映像ではありました
観終わって出てきてから
結局?うーん?という
感じでしょうか
最近北野武監督の「首」も
観たせいで
冒頭のギロチンにかけられた
マリー・アントワネットの
首が掲げられるところでは
またかいと思ってしまいましたが
この2本はテーマ的にも
セットで観てもいいかも
しれませんね(笑)