「タイトルが紛らわしい」ヒッチコックの映画術 たあちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルが紛らわしい
私の心に残った最初の映画体験が小学生低学年の頃「日曜洋画劇場」で見た「鳥」だと思うのだがあまりに強烈でトラウマになってその後鳥が怖くてしょうがない。映像を仕事にしようと決めた頃にトリュフォーがロングインタビューをしてまとめた「映画術」という分厚い本を買ってバイブルのようにして持っていて、その本の映画化だと思い込んで見に行ったのだが少し騙された。監督のマーク・カズンズは「ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行」というドキュメンタリーを作った映画狂で、今作は「逃避」「欲望」「孤独」など6つのテーマを切り口としてヒッチコックが自ら自作を解説する(声色のそっくりさんがナレーション)というアイデア一本でまとめあげたもので95%が資料映像のつぎはぎ、これがドキュメンタリーと言えるのだろうか。冒頭で「脚本・ナレーション:アルフレッド・ヒッチコック」と大嘘のクレジットが出て唖然とする。「スリラーやサスペンスの神様」と称されるヒッチ・コックだが、世間が「クライムサスペンスもの」ばかりを彼に要求しすぎてしまったのではないだろうか。そのカメラワークやモンタージュには今日世の中にある映画の全てがつまっており「映画の教科書」とされる所以。特にカメラがどんどんトラックアップ(ドリーin)していく手法に改めて感嘆し、この時代にステディカムがあったればなあと妄想してしまうのだ。
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