ほかげのレビュー・感想・評価
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結構見てみたら得した映画。
全くノーマークだったので、とても堪能できた。チョッと他に例を見ない演出と表現主義的な映像が鮮烈な印象をもたらせてくれる。前半の役者の表情をカットバックするだけで、グイグイと物語を引っ張る。一転して後半は野外を舞台に移しその自然との対局に戦後の日本人の絶望を一人の戦争孤児を狂言回しに描いていく。今までの塚本晋也の作品には見られない深みが前半後半の落差として陰影を生み出し作品に奥行きをもたらしてくれている。
タイトルなし
TIFF2023にて。
この作品も、『野火』『斬』同様の、ヒリヒリした、不条理さからのやるせなさだったり、人の弱さだったりという機微が表現されていて惹き込まれる素晴らしい映画でした。
全ての登場人物に目力があって印象的でした。
映画祭QAで監督曰く、戦後の闇市にインスパイアされて、そこを舞台に何か作品を作りたかった。キナ臭くなってきた世の中を憂いての、祈りの映画だと話しておられたのも印象深かったです。
終戦直後の日本。
闇市が立つとある場所。
皆、戦争がもたらした不条理さに絶望し、目に怒りを宿し、心の傷を抱え、生きることを見失いかけている。
それぞれのキャラクターが交わる時、ドラマが生まれ、心の闇が少しずつ明らかになってゆく。たどる行く末がとても気になり、こちらもヒリヒリしてくる。
全ての愚直で不器用なキャラクター達がたどる先を見て、
「ああ、そうか…。そうなったか…。」
と心が傷んだ。
良きにせよ悪しきにせよ、それぞれの未来がある。泥の中でも咲く蓮の様に、立ち上がって上手く生き延びることが出来た者が最後に勝ったと言えるのであろう。
ラストはそんな希望を感じさせてくれる終わり方であった。
1946年以降、社会福祉のパラダイムが構築されても昭和中期までは、元闇市が発展してた場所などで、傷痍軍人などを見かけていたが、至る場所のある所では、こういう歴史を辿っての今があるのだな…と理解出来て、そういう意味でも、興味深い作品でした。
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