ほかげのレビュー・感想・評価
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戦争が終わっても
戦争が続いている途中はもちろん、終わった、
と言われても、戦前の穏やかな生活なんて来やしない。
大空襲で焼け野原にやっと残った店に来る客もいない。女一人で生きて行くには‥。
若い帰還兵、実家に帰らずこの辺でウロウロするのは、家も家族も無い者。
生きて帰っても誰も喜んで迎えてもくれない、
住むところからどうしようか、この焼け野原で。
親をなくした子供が生きる道は、
靴磨きする人などいるだろうか?
洗い物してたけど、どうなんだろう?
道に逸れた生き方しかできなかったのでは?
女、体を売っていたら、怖い怖いことが。
見知らぬ男について行き子供が見聞きしたのは
‥‥‥。
本作の森山未來演ずる謎の男が言ったことしたこと、非難できるだろうか。
こんなに苦しんでいた人、どれくらい居られたのだろう。
亡くなった人も辛い。
生きて帰っても地獄の日々を過ごしていた人がいる。死ぬまで苦しむのだろう。
だけど、坊やはたくましくひたすら生きていく。
子供の視線
アイドル?
と思う位のオープニングからのキュート趣里でした。森山未來パートも凄いカリスマでした。
テーマは、戦争が生み出す非人間性とPTSDですかね。
1ヶ所、決定的に台詞が聴き取れずかっとしましたが、病気の下りで腑に落ちました。性病? ハンセン病の暗示にも思えました。個人の終戦は当事者にしか決められないんですね。
8月に観るということ
太平洋戦争を描く時、軍人側からとする作品と市井の人からとする作品があると思います。どちらも秀作はありますが、「ほかげ」は後者、とても感動しました。
塚本作品はほぼ見ていると思いますが、ハイパーな路線以外では「ほかげ」が最も好きかもしれません。唯一無二と言いますか、監督得意の狭い空間での演出、演技者さんたちの能力と合わさってグイグイ引き込まれました。
わたしたちの今の平穏な生活は、戦争で犠牲となった全ての方々、また生き延びた後、全力で日本を再構築してくださった方々のおかげだと心底考えてしまいます。戦争を身近で経験する、また何も無い国土を懸命に生き抜く、こうしたことと比較すれば、今のわたしたちは本当に恵まれています。株が下がったとか、社会保険料が上がったとか、インフレだとか、そんなこと、戦争という生きるか死ぬかと比べたら当に小さいことです。
趣里さんは初めてちゃんと映画で観ました。結構野太い声でハッキリとセリフを言ってるなと思いました。森山さんはこの手の役は適役です。子役の男の子、凄すぎる。利重剛さんもなるほど適役と関心。大森監督、やっぱり声は弟さんに似ているんですね。海獣シアターのオリジナルみたいなので、予算かけてないなと思います。塚本監督、こうした環境での演出は得意でしょう。
先日、上田市の無言館に行ってきました。名もなき市井の画学生、みんな戦争で命を落としました。一般的に太平洋戦争での軍関係の犠牲者は230万人とのこと、一口に230万人て簡単に言っていいんでしょうか。それぞれが、親や奥さんに見送られ、懸命に従軍し犠牲となり、紙だけが入った棺桶が戻って来て、残された家族は焦土から再出発です。忘れることはできない記憶だと思います。
冒頭に書いた軍人側からの映画を見ると、上層部は1人1人のことは考えてませんよね、あと何万人いたら勝てるとか、本土決戦だとか。
人々目線の「ほかげ」のような作品は重要だと思います。
語られることのない戦後を描いた渾身の一作
NHKの連続テレビ小説(連ドラ)でくりかえし語られるテーマに先の大戦を生き抜いた
人たちの復興に向かう姿というものがある。
2023年後期『ブギウギ』も2024年度前期『虎に翼』もこの時代だ。
この映画では連ドラでは取り上げられることのないであろう、売春婦であったり、
傷痍軍人であったり、戦争によって精神を病んでしまった人や、戦犯や、戦争孤児が
登場する。
連ドラが大変な中前向きにがんばる人々を明るい調子で描くのに対し
この映画では登場人物たちが戦争があったがゆえに命を奪われたり、
人生を狂わされたりする様子が描かれていると同時に、
戦争孤児となった少年のみが犯罪に手を染める事なく
一人で生きていこうとする姿が描かれ唯一の希望となっている。
21世紀になっても、令和になっても
戦争はなくなってはいない。
先の大戦で不戦を誓った日本でさえも
アメリカの世界戦略ににどっぷり組み込まれ
アメリカ製の武器をたっぷりと買わされ
多国籍軍による軍事演習を頻繁に行い
周辺国を刺激することで緊張を高めることになっている。
戦争そのものではなく
戦争によってひきおこされる悲惨さを
今まで光を当てられて来なかった人たちを通して描くことで
時代への警鐘を鳴らす塚本晋也監督渾身の一作となっている。
役者さんたちそれぞれいい仕事をされていますね。
混乱期の中でも
戦後の混乱期の中でもがき苦しむ女性、少年そして男性を通して生きることを描く。
外見だけでは判断しづらい人間の脆さと恐ろしさ。
同時に自身に降り掛かるものに耐えきれず壊れていく大人たち、そんな荒波に晒されながらも信じた者の言葉を胸に生きようとする少年がとても逞しく「生きる」ことを感じさせてくれる。
戦争は
最後まで観たら、すごい傑作だった。
映画で戦争を伝えたい、
そう話す塚本晋也監督。
鮮烈だった「野火」に続き大きな仕事を成し遂げた。
現在64歳の塚本晋也。
戦争体験は私たちと同じに、書籍、映画作品、ニュース画像などからの
疑似体験だと思われる。
なのに、なのに、このリアルな戦後直後の人間のリアル!!
なんなんだ!!凄過ぎる。
そこに復員兵の《森山未來》の飄々とした存在。
戦争孤児の《塚尾桜雅》(今9歳になったばかり、撮影時は8歳か!!)
《趣里》の役名は女。
趣里の作品に身を捧げる熱演も見事だった。
この3人を軸にストーリーは紡がれる。
やはり衝撃的なのは後半の片腕の復員兵のパートからの終盤。
眠気も吹っ飛んだ。
この映画の出演者は、女(趣里)
戦災孤児(塚尾桜雅)、テキ屋の男=森山未來(復員兵)
中年(利重剛)
優しそうな男(大森立嗣監督)
など固有名詞のない人間たちなのだ。
ところが片腕の復員兵は突然名を名乗る。
アキモトシュウジの名を出して、ある男を呼び出すのだ。
呼び出し役は戦災孤児の少年。
その前に伏線がある。
拳銃・・・戦争孤児が死体の側に転がっていたのを拾って
宝物にしていた。
復員兵はそれを目当てに孤児に近づき
ある目的を果たすのだ。
呼び出された男はアキモトの戦地での上官。
“おうアキモト、久しぶりだな“と上官。
“その節の、礼と詫びと償いに来ました“と復員兵。
そして4発の銃弾が上官の男に撃ち込まれる。
1発目は、
タナカ・ヒデキの分です。
2発目、
ニイジマ・タダノブの分です。
3発目、
ナカタ・シゲキノの分です。
ナカタは貴方の命令で俺が殺しました。
どうしても捕虜を銃剣で刺せなかったナカタ・シゲキを俺が
殺しました。1番の親友でした。
タナカもニイジマも貴方の命令で捕虜を刺殺し、女を犯し、
俺は何十人も、人を殺しました。
“うなされのたうち回りつつものうのうと生きています。“
4発の銃弾はわざと急所を外して撃たれる。
地獄の痛みを長く耐え、自分の罪と向き合えと言うことだ。
上官は“戦地のことではないか?“
そう言う。
(実際にそうかも知れない。忘れる者は忘れる、
(自分の中で折り合いを付けて
(涼しい顔で妻とちゃぶ台を囲み和やかに暮らしていた)
森山未來の変幻自在な演技は、片腕の復員兵に血を通わせ
時に軽妙、
時にユーモラス、
時に狂気を帯び、
この作品の音楽の石川忠もすごい仕事をした。
この音楽無くしてこの映画の魅力は半減したと思える。
時に不穏に、時に歪み、時に脅す。
塚本晋也監督は、
監督・脚本・撮影・編集の4役をこなしている。
いい作品には気合の入った役者の本気の演技が見れる。
肩に力の入った趣里に較べると、森山未來のチカラの抜き方が
絶妙で対照的。
やはりキャリアの違いを見せつけたが、
それにしても子役の塚尾桜雅。
9歳足らずでこの演技。末恐ろしい天才子役の出現か!!
テーマの「戦争と人間」そのものだ。
前半にもう少し引力が有れば、と悔やまれる。
森山未來からの後半の力強さ怒涛の展開。
前半は説明台詞が多く室内ばかりなので、
動きが少なく、暗く重い。
惜しいと言えば惜しい気がするが、文句なしの傑作。
ほかげ、とは、戦争の灯影
「もはや戦後ではない」から70年近く経とうとしている
2024年映画館鑑賞9作品目
2月24日(土)チネラビィータ
会員料金1500円
監督と脚本は『鉄男』『ヒルコ/妖怪ハンター』『双生児 -GEMINI-』『野火』『斬、』の塚本晋也
粗筋
売春婦の家に転がり込んだ復員兵と戦災孤児
それぞれが大東亜戦争のトラウマを抱えていた
3人の同居生活はしばらく続いたが発砲音で戦地の恐怖が蘇った復員兵は発狂し暴れ追い出されることに
こうして女と孤児の二人暮らしになった
女は自分の子供のように孤児を可愛がった
帰りが遅い孤児を叱り危険な仕事を断って来いと指示した女は戻って来た孤児に嫌いになったと言って追い出した
テキ屋の男と汽車に乗り田舎にやって来た孤児は元上官への復讐を見届けることになる
帰りの汽車賃を渡された孤児は女の家に戻って来た
女は重い病に罹っていた
女と別れる日がやって来た
孤児は幼くして再び自立しなければいけなかった
映画の出来として悪くない
むしろ傑作の部類
若干不満点はあるがほぼ星5の評価をつけたい
出だしも良い
ラストも好き
反戦のメッセージについて特に改めてレビューに書くつもりはない
野火などで既に書いたつもりだ
ガザ地区もウクライナもそろそろ停戦してもらいたいと願ってはいるが決定的な価値観の違いに虚しいばかりだ
俳優陣の熱演がとても素晴らしかった
朝ドラの方も悪くはないがやっぱりこっちの方がいいな趣里は
私娼の役だがヌードにはならない
ヌードになる必然性はなかった
着衣でも充分だから
それを思うとあの映画でヌードになった意味が今でも不明だ
子役の塚尾くんの表情や眼差しが天才的
主演は趣里のようだが実質的に主役なのは彼だろう
かわいい
名前はあまり存じ上げないが復員兵を演じた河野もなかなか良い
森山未來の芝居にケチをつけるつもりはないが汗出すぎ
あれじゃまるで漫画だ
下手くそだけどどっかで観たことがあるなと思ったら大森監督だった
弟の足元にも及ばない大根ぶりだった
妻?役の唯野未歩子は随分と歳を取ったなと感じた
彼女は自分と最も共通点が多い芸能人なので親しみは感じている
思わせぶりな不安を煽る効果音の多用は塚本晋也の世界
だが焼夷弾の焼け野原の映像直前の地鳴りがするような音とテキ屋と孤児が乗った汽車の音は大きすぎる
びっくりしたというか迷惑だ
それにしても『首』は戦争の悲惨さとか反戦映画と言われずましてやあろうことか最も尊敬する武将は誰かとランキング形式で称えられる始末
かたや大東亜戦争がらみなら例外を除けば反戦映画とモテ囃される
これが日本の教育の成果なんだろう
朝日新聞の社員はみんな優等生
自分は劣等生
ほかげさまです
いやおかげさまです
配役
大東亜戦争で夫と息子を亡くし自宅兼居酒屋で売春をしている女に趣里
戦争孤児を連れて復讐を果たす片腕が不自由なテキ屋に森山未來
手提げカバンの中に拳銃を忍ばせている戦争孤児に塚尾桜雅
かつては教師だった復員兵に河野宏紀
女の店に日本酒を仕入れる男に利重剛
大東亜戦争でテキ屋の上官だった男に大森立嗣
上官だった男の妻?に唯野未歩子
戦争で家族を失った女と戦災孤児が出会い一緒に生活を始める…という話なのだが
戦後間もない日本。疲弊した人々、瓦礫の中の闇市、そんな中で半分崩れかかった小屋のような家で居酒屋を営み、時には身体を売りながら生きる戦争未亡人と盗みをしながら生きる戦災孤児、この二人が出合い、生活を共にし始める。そんな二人が肩を寄せ合い生きていく心暖まる話なのかと思って観ていたのだが…。
この二人に絡む男たち、元教師の若い男、そして謎の男アキモト、戦争を何とか生き延び日本に帰ってきたものの心的外傷に苦しむ男たちの話でもある。
戦争によるPTSD。これをテーマにした名画は多い。「ディア・ハンター」「タクシードライバー」「アメリカン・スナイパー」などなど。アキモトの下りでは「ゆきゆきて、神軍」(これは凄まじいドキュメンタリー映画で僕は途中から震えが止まらなかった)を思い出していた。「ゴジラ-1.0」もそこにテーマがあったと僕は思っている。
僕たちは先人の灯りの中で生きている。
「ほかげ」
・・・知らない言葉なので調べたら「火(特に灯火)の光」だそうで。
この題名はラストの少年に芽生えたであろう気持ち、
感情を言い表したのではなかろうか?と思います。
さらに文字は「火影・灯影」と書くそうで・・・。
塚本監督作品「野火」の「火」が落とした影の世界(後の世界)を描く
という意味も兼ねているのかな?
さて、本作。主演の趣里さんはじめ、俳優陣の圧倒的かつ確かな演技で
最初から引き込まれ一気に観てしまいました。朝ドラとのギャップを
感じたのもつかの間でした。いやぁ、すばらしい女優さんですね。
これだけでも鑑賞の価値があるとおもいます。
「野火」では戦争を、本作では戦後を描いていますが、共通するのは
「生々しさ」です。
きっとこうだったんだろう戦後の風景と人々。
戦争の傷で人間の大切なものを失ってしまった者たち。
生活のすべてを失い生への渇望のみで生きている者たち。
戦時をいまだに続けざるを得ない人。
そこには明るい未来なんてものは存在せず、勝手に背負わされた
負に対してなんとか抗っている人々が居るだけです。
けど、、だけど、心にくすぶっている「希望と願いの灯り」はあるわけで、
体内に取り込んでしまいどうしようもなくなってしまった者の中には
「繰り返してはいけない戦争の火」がくすぶり続けているわけで、
でも、多くの人には幸せだった「戦前の記憶と人間としての感情の灯り」はあるわけで、
それらは他者と関わることでちょっとずつ手から漏れて光るのです。
それこそが「ほかげ」であり。それに照らされ未来に導かれるのが戦後を
生きていく子供たちだったのではないでしょうか?
救いは基本的になく、ただただ絶望を感じ続ける本作ではありますが、
クライマックスの描写と、遠くに聞こえる刹那の音が、
次代への願いのようであり、渡されるバトンのようでもあり、
新たな時代を始めるスタートの合図の様でもあり。
雑踏の先に明るい場所があることを願わざるをえないし、それは僕らが
つくっていくものなんだろうと思います、改めて。
・・・やっぱり忘れちゃいけないことなんだよね。
目を背けてはいけない
映画『ほかげ』地味な作品なんだけど、その作品創りには敬意を評したい。先の大戦からまもなく百年近くが経とうとしている。喉元すぎれば暑さを忘れ、そんな言葉が頭をよぎる。大戦の経験者の証言もめっきり減ってしまった。また過ちを繰り返すのだろうか。
先の大戦から百年近く
ややもすると美化するような風潮と作品群。
ここ十年ぐらいの傾向のように思えてならない。
あんなむごたらしい戦いの中にあっても、こんな素敵なことがあったとか。
日本のために戦い、命を失った英霊のおかげで今日があるとか。
そうだろうか。
英霊、つまり戦死者。
これは、たんに戦争の犠牲者でしかない。
戦争は、不条理の極みであり。
そこに、真実や正義などない。
ただの国家間の殺し合いでしかない。
そんな暗い時代にもこんな素敵な出会いと恋があったとか。
それが事実でも、それはそれでいい。
ただ注意しないと、いつのまにか大戦自体も肯定的にとらえようとすり替えられること。
『ほかげ』出だしは、まるで一幕劇でも見てるかのよう。
一件のボロ居酒屋。
そこに夫と子供を失った一人の女性。
居酒屋は、表の看板。
体を売ってその日その日を生きてゆく。
息が詰まりそうな空間と芝居。
ああ、戦争の傷跡とはこういうものかと。
誰も目をそむけたくなる。
そう、戦争の本質とはそうなんだろうと。
あえてそのことから目をそらさず映像化したことに、拍手を贈りたい。
丁寧な作品創りと、俳優陣の演技がいい。
後半は、打って変わって動的に
このあたりは、上手だなと。
闇市の喧騒。
傷痍軍人の物乞い。
そして、なによりも戦争によって心を病んでしまった者の傷跡。
薄暗い路地裏にたむろする帰還兵。
あてどもない彷徨と絶望。
森山未来の帰還兵がいい。
拭いきれない罪の重圧。
なんとか過去を清算しようとする姿。
清算などできないのだが。
作者は、繰り返し戦争の不条理を訴えてくる。
そんな時代に翻弄される人間。
正義はどこに行ったんだろう。
そう戦争に正義などない。
嫌というほど伝わってくる。
だから見ていて、決して心地良いものではない。
心地よくなる戦争映画があるとしたら、そっちのほうがおかしいのだと。
戦争という出来事に、真正面から向かい合った製作陣に頭が下がる。
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