劇場公開日 2023年11月25日

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「ヒリヒリとした空気感の割に「戦争の理不尽さ」が伝わってこない」ほかげ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ヒリヒリとした空気感の割に「戦争の理不尽さ」が伝わってこない

2023年11月27日
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戦災で生き残った女と復員兵と戦災孤児が「疑似家族」を構成することで、戦争で荒んだ心に仄かな幸せの火が灯る・・・
つい最近の「ゴジラ−1.0」でも同じようなシーンを見かけたが、こちらは、時としてホラー映画のような画面作りが不穏な空気を醸し出している。さらに、耳障りにも感じられる大音響の効果音や叫び声が、ヒリヒリと神経を逆撫でする。
この映画は、前半の室内劇と、後半のロード・ムービーの大きく二部構成となっており、全体としては、少年の目を通して、生き残った人々に刻まれた「戦争の傷跡」が描かれている。
ただ、後半の、捕虜の殺害を命じた元上官に復讐しようとする元兵士の話はまだしも、前半の居酒屋の話からは、少年や復員兵が悪夢にうなされている場面以外は、あまり戦争の悲惨さは伝わってこない。
あるいは、「ゴジラ−1.0」ではテーマにもなっていたサバイバーズ・ギルト(生き残った者の罪悪感)も描かれず、どうも戦争や空襲のトラウマが観念的で、生々しく胸に迫って来ないのである。
あの時代に、同じような境遇で、体を売らなくても生きて行けた女性はたくさんいたはずなのに、どうして居酒屋の女が、そうなってしまったのかもよく分からないし、闇市などにたくさんいたはずの戦争孤児が、たった一人しか出てこないのも不自然に感じる。
ザワザワとした、あるいはヒリヒリとした空気感の割に、「戦争の理不尽さ」のようなものを実感することができなかったのは、やや肩透かしだった。

tomato