「様々な「事情」を邪推してしまい素直に観れない」アントニオ猪木をさがして Equinoxさんの映画レビュー(感想・評価)
様々な「事情」を邪推してしまい素直に観れない
猪木さんの生涯(の「綺麗」な部分)からピックアップしたエピソードと関係者のインタビューを軸に構成されたドキュメンタリー「風」映画です。
試合映像はそれ程多くなく、関係者のインタビューや対談、そして架空の猪木ファンの生涯を綴る謎の再現ドラマに多くの時間を割かれます。このドラマパート、安田顕さんの演技にギリギリ救われている部分はありますが、それ以外の役者さんの大根ぶりとかシナリオの薄っぺらさとか相まってとてもじゃないですが観てられません。深夜ドラマでも今どきもう少しマシなのではないでしょうか。インタビューや過去の試合映像で尺が取れなかったから仕方なくドラマパートで埋めたのではないかと邪推したくなる内容です。
猪木さんの試合内容については熱烈なファンはもう何度も観ているでしょうし、私もある程度何度も観ている試合もありますけど、こういう映画という場で観るとやはり熱くなるもので、私はもう少し試合映像欲しかった側です。予算の問題なのか権利の問題なのかわかりませんがやや物足りない印象。少なくとも再現ドラマよりは試合映像だと思います。
インタビューに関してはやはり佐山、長州、前田、武藤or蝶野、小川直也あたりに没後1年経った今だからこそ話を聞いてみたかったのですが、断られたのか新日側の意向が入ったのか予算の問題なのか、なんなんですかね。これもまたやや物足りない印象でした。猪木さんと関係性の薄いオカダカズチカとか棚橋とかのインタビューが妙に手厚いのはやはり新日主導だからでしょうか。
とまあ、色々不満が残る映画となっています。猪木さんの生涯を振り返りたいのか、彼が与えた衝撃や遺したものをクローズアップしたいのか、どう追悼していきたいのか、いまいちピンボケしている感が否めず、どちらかに振り切った方がまだよかったんじゃないかと思います。テレ東あたりで深夜にやってる番組ならまだしも映画館で公開してるわけで…。殆ど客が入ってませんでしたけど、致し方なしかなと思いました。
原悦生さんのエピソードと有田さんはめちゃくちゃよかったです。