「この映画でボブ・マーリーからラスタへ響いたのか…?」ボブ・マーリー ONE LOVE 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
この映画でボブ・マーリーからラスタへ響いたのか…?
クィーン、エルトン・ジョン、アレサ・フランクリン、エルヴィス・プレスリー、ホイットニー・ヒューストン…。
続くレジェンド・ミュージシャンの伝記。
本作は、ボブ・マーリー!
ファンや知ってる人には“レジェンド”であり“英雄”。
しかしながら、疎い私。名前とジャマイカ生まれと“レゲエの神様”って事ぐらいしか知らない。
曲もほとんど知らず。って言うか正直、レゲエ自体どんなジャンルかも…。
そんな無知な者が見ても大丈夫か…?
いや、一連の伝記映画はファン以外の人でも見れ、知る為にある。
本作もそんな体で見ようとしたら…。
ミュージシャンの伝記映画は演者の歌唱力やパフォーマンスは絶賛される一方、話がステレオタイプとよく指摘される。即ち、
誕生/幼少期~音楽との出会い/メンバーとの出会い~デビュー~栄光~挫折~再起…。
無論各々特色はあるが、本当にほとんどのミュージシャンそうなのかってくらい、パターン化している。
一見さんからすれば見易いが、目の肥えたファンや批評家からすれば新味ナシ。
本作は他のミュージシャン伝記と差別化。ボブ・マーリー36年の生涯の中の、晩年の数年間に焦点。
結果的にこれが良かったのか、否か…。
すでにジャマイカの国民的人気者、レゲエの神様。
いつ音楽に目覚めたのか、そこに至るまでの道は…?
ほとんど描かれず。
描かれるのは…
1976年、ジャマイカは2大政党が対立。国の一つを願うボブは政治闘争に巻き込まれ、暗殺未遂に遭う…。
ロンドンに拠点を移すも、母国への思いやジャー(ジャマイカ労働階級=“ラスタ”の唯一神)の教えを忘れず、歌を通じて訴え続ける…。
当時のジャマイカの背景や信仰など、日本人には分かり難い。
それらを体現しつつ、妻や周囲との関係、名曲の誕生、次第に蝕む病…など描かれ、ボブ・マーリーにとっても最も重要でドラマチックで濃密な時期のエピソードなのだろうが、それらを一通り描いて必ずしもドラマチックで感動の作品になるとは限らない。皮肉にも、その典型であった…。
まるでドラマシリーズの途中から見たような印象で、なかなか入り込めない。
実際の生涯は激動。が、レイナルド・マーカス・グリーン監督の演出が平凡なのか脚本が弱いのか、ただ並べ立てられ、躍動するものがない。同じく実在の人物を扱った『ドリームプラン』のような感動に欠けた。延いては『ボヘミアン・ラプソディ』のような、栄光と挫折を経てのクライマックスのライヴエイドへ至るカタルシスさえも。
数年ぶりにジャマイカに帰国し、病と闘いながら、祖国を一つにするコンサートを。クライマックスだけじゃなく本来本作の最大の見せ場の筈が、そのシーンは丸々カット。ちょっとの実録映像と説明字幕のみ。
いやいや、あり得ないでしょ!
ボブ・マーリーの何を見せたかったのか…?
ドラマチックな生涯…? 見せるものが少な過ぎる。
名曲の誕生…?
祖国一つへの願い…?
ジャーの教え…?
少なからず訴えるものはあった。“ラスタ”の意味とか。
曲もほとんど知らなかったが、耳に心地よい。
ヘアメイクなどの力も借り、キングズリー・ベン=アディルの熱演。
だけど他のミュージシャン伝記映画を見た時のような、興奮と感動が響かなかった。
個人的に作品が今一つだっただけ。
ボブ・マーリーの足跡は偉大。
ジャマイカのみならず世界中で語られ、歌い継がれていく。
レジェンド・ミュージシャンの歌はこれからも。
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