「それでも私達は世界がより良い物になると期待してしまう」サウンド・オブ・フリーダム satoさんの映画レビュー(感想・評価)
それでも私達は世界がより良い物になると期待してしまう
この映画はとても「怖い映画」だった。
児童誘拐と人身売買と言う、どこか他人事のような響き。
でもこれは現実に、今まさに起こっている問題。
私の持っている言葉なんかじゃ、この映画の全てを伝えきれない事がとても悔しい。
でも私が観てきた映画の中で一番恐ろしくて、怖くて、それと同時に希望と愛を感じる映画だと思う。
始まってからずっと目を逸らす事すら許されない衝撃で、ただただ突き付けられる恐怖に怯える事しかできず、いつしか呼吸すら止まるんじゃないかと思う程の緊張感。
主人公を突き動かす物は、たった一つ「子供達を救いたい」と言う信念。
この映画が「本気だ」と感じたのは序盤で小児性愛者から押収した証拠映像を主人公が見たシーン。
とても酷い事が行われているであろう映像は一切見せず、そこにある現実から目を背けることもせずにただただ涙が溢れる主人公の目だけを映す。
誰かが酷い目に合う映画は、時としてそう言ったもので興奮をする人種がそう言った目的で鑑賞に来る事もあると聞いた。
しかし本作はそれはさせないと言う強い意志を感じた。
もちろんそう言った事を想像できるシーンは数多くある。しかし、直接的表現としては一切なかったと思われる。
幼い姉弟の救出を大きな軸としてストーリーは展開される。
人の欲望や悪意は果てし無く、そしてどこまでも醜い。
それでも、自分に全く無関係だとしても命をかけて動いてくれる人もいるのだと信じたくなる。
終盤に向けて恐ろしい事の連続で、息をのむ事すら躊躇う程の緊迫感。
だからこそ、あの救出された少女を包む朝日の美しさが際立っていた。
ラストの歌声の清らかさ。本来当たり前であるべき、「自由」の素晴らしさ。
きっと現実はあんなに美しくはない。
それでも、それでも私達は世界がより良い物になると期待してしまう。