Chimeのレビュー・感想・評価
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“恐怖”を体現
黒沢清映画をあまり観たことがないからだろうか、表現のみで押し切る映画に感じてしまった。
確かに、多角的な恐怖を1本に収めた作品ではあるが、細部の説明が全くなく、ただ過ぎ去っていく。それが故に、恐怖以前に疑問が先行してしまい、“謎”として脳内処理されてしまう。そんな処理を行う自分がまだ未熟なのか、そう思わせる雰囲気は感じた。
だいたいまともだけどちょっと異常
ずっと《散歩する侵略者》を観てる感じだったの。登場人物は宇宙人にやられてたのかもね。
みんな大体まともなんだけど、ちょっとおかしいんだよね。その「ちょっと」を見つけてきて描くのスゴイなと思いました。
物語を通して主張は感じられなかったけど、なにかあったのかな。
おもしろかったから何もなくても良かったです。
メンヘラ大集合か侵蝕か
頭の中で叫び声の様なチャイムが鳴っているという生徒に出会い、不穏な状況に陥っていく料理教室講師の話。
チャイムの音に苛まれ気を紛らわせる為に料理教室に入ったという生徒に、先生にはチャイムが聞こえないのかと聞かれ、その時は聞こえなかったけれど…。
脳の半分が機械の発言からの唐突な流れはホラーというかスリラーというか、と思っていたら、次の展開はもっと唐突でこれは不条理系の話しということですかね…奥さんのヤツもその量は収拾してこなきゃ絶対賄えないですよねw
尻切れ感はあったけれど、ストーリーという程の流れも無いし中編だし、これはこの終わり方で良いのかなという感じだった。
久しぶりにCUREでも観るか
狂気と恐怖の「表現」だけを高純度で追求すると物語は消失しても構わないってこと?私の感性ではそれ以上のものは読み取れなかった。Jホラーの見慣れた日常が侵食されていくパターンも個人的には食傷気味だし、言うほど実生活と至近にも感じないのでもういいかな。
チャイムの音を想像してみる
黒沢清監督の作品を観たのは「CURE」以来…。
場内はほぼ満席で関心の高さがうかがえました。
出てくる人が全員おかしくて、何でおかしいのか明確に言えないあたりが余計に気味が悪い。
不気味さの余韻が纏わりつくような作品でした。
でも不思議とまた観たくなってしまう…
電車が通った時の田代くんと、その影が映ったシーンがとても好きでした。
恐怖はどこからやってくるのだろう。
2024年。黒沢清監督。料理教室で講師をする男は「頭のなかでチャイムが鳴る」「誰かに半分脳を乗っ取られた」というちょっとおかしな参加者を疎んじつつ目を離せないでいるうちに、目の前でその男が死んでしまう。同じころ、有名レストランからの誘いを受けて意欲的に面談を受けるが、その直後、今度は自分が教室参加者の一人をめった刺しにして殺してしまう。家では妻とも息子とも会話らしい会話がなく、最初の事件の刑事が次の事件では行方不明者の捜査として現れる。レストランの話は簡単に立ち消えになってしまう。男の周囲を不穏な世界が取り囲む。
幽霊の恐怖、自分が殺してしまう恐怖、捕まってしまう恐怖をすべて詰め込もうとしたと黒沢監督はインタビューに答えている。なるほど、殺してしまった女性は幽霊として、画面には現れないまま存在感を出しているし、おかしな参加者を突き放しきれなかったり、息子やレストランの経営者らしき男に蔑まれたりした後の様子を見ると、自分が殺人者になってしまうかもしれない恐怖(いわゆる殺意)と戦っているようにみえる。また、女性を殺してしまった後では刑事の存在におびえている。
これらの恐怖はこうも言える。想像することの恐怖①、自分には計りしれない自分自身のなかにあるものへの恐怖②、現実世界への恐怖③。①はイメージの世界であり、②は無意識や抑圧の世界であり、③は法や社会の世界である。これらすべてに恐怖を感じる男は、扉をしめて、安全とはいいがたい家の中に閉じこもるばかりだろう。「安全とはいいがたい」のは、家の中では想像を禁じることも、現実から逃避することもできるが、抑圧されているもの(妻がため込んだゴミ)や他者としての家族は禁じるとこも避けることもできないからだ。われわれはみな「ここ」に生きている、と黒沢監督はいう。
役所広司、ダンカン、長谷川博己、そして吉岡睦雄。
私的年テン上位当確。
久々折角の直球高純度な黒沢清節には長編で耽溺したかったが。
役所広司、ダンカン、長谷川博己から吉岡睦雄という黒沢清の不穏能面俳優起用の進化深化を愛でよう。
省略冴えるも何箇所か微量の撮り過ぎと緩みが惜しい。
その緩みこそが巨匠の味わいか。
劇場で。
黒沢ホラーの集大成
黒沢清がこれまで作ってきた怖い映画の技術が、45分にギュッと詰め込まれている。なので、どのショットを切り取っても黒沢清のハンコが押してある。つまり、45分途切れることなく、ずっと楽しいということでもある。
中編なので、外連味的なショットは排除されているし、まとまりすぎて教科書的すぎるきらいはある。
おそらく、今後は「黒沢清入門」的な存在となって、黒沢清を観たことない人はまずはこの作品からということになるのでは。
壊れた心の音
この女、ムカつく、もう我慢できない。と思っていると、そんな気持ちがどこかへ行ってしまうとんでもない出来事が、スクリーンの中で起こっている。
度肝を抜かれて、ひたすら画面を追うだけ。
心が壊れた人にしか、聞こえない音。精神がすり減った人が発する音。
音がこの作品の肝なので、劇場で見てください。
怖いよ〜怖いよ〜
「スパイの妻」の黒沢清も好きだけど、「CURE」の黒沢清も好きだなあ…ということを再認識させる1本。
決定的に何かが起こるのは包丁を使った2回くらいで、それ以外は確実に『何かが起こっているんだけど、何かを映さない』『音や構図や演者の顔だけで何か起こったことを示す』という恐ろしさ。心霊なの?宇宙人なの?いやもうただの不条理なの?っていうジャンルを横断してるとも言えるし、横断してるかも分からないけど、分からないから怖さが増す。知らん間に無機質の狂気が他の登場人物に連鎖してる感じも恐ろしい。決してベロベロバーに頼らない。
ラストカット、「いやそこに立ってると下手したら死ぬよ?」という絶妙な位置に立ってるシーンを何回か見せてからの家。この後何するの…怖いよ…。そこで切ることで見る側の生活と地続きになってる感じになる。事実帰り道に歩いていたところ、閉店したガソリンスタンドに電話がかかってきてて、もうその電話音が怖くて怖くて。関係ないんですけど。
料理教室って実は恐ろしいよねという気づき。見知らぬ人たちが正気を保っていることを前提に包丁使いまくったり、火を使いまくったり…。
淡々と講師が説明するのに、過剰に玉ねぎを切り裂き炒め物を焦がす登場人物。掴みから完璧。
「私理屈で説明してくれないと納得できないんです」的なセリフがあるんだけど、この映画のことを言い表してると思うので、もう一度見てみたい。
血しぶきの後に、自分の手から流れた少なめの血に対して絆創膏貼るシーンが一番印象的でした。
不穏感がこれでもかと
レンタル配信で観た後、劇場公開も観に行きました。
やはり劇場は音が体感できて、映像と音響で不穏さがこれでもかと伝わり良かったです。
冷静に会話をしているのに全く理解しあえない感覚も、日常的なやり取りから突然異様な行動に出る境目の無さも、淡々と追うカメラワークも薄暗い建物も、全てが不穏で嫌な感じで恐ろしいです。
意味不明なまま狂ってゆくようなストーリーも、この中編の長さの時間で丁度良かったと思います。
ついでに、自宅のPCで配信を見ていた時、クライマックスあたりでリアルに自宅のチャイムが鳴ってビビりました。
リトルブラックホールみたいだ
45分はアイデアでいったら短編コミックのようで、つまりディティールだけで走り切ってしまえるので、つげ義春やいがらしみきおの怪しげな漫画のような、答えのつかない描写芸術みたいなところはある。
こんな脚本があったとして、これが黒沢清であるだけで得体の知れないものに変容してしまう。どれだけ脚本に描き込まれてるのかわからないけど、「線路沿いのビルの2〜3階の料理教室」なのかただの「料理教室」なのかしらないけど、もう通過する電車の音と光、奥に見える東京の空、人気のない、けど、ゴミは転がる裏路地、普通のようでいて缶だけやたら消費してる主人公の家、チャイムを聴いたというそもそも料理教室にいるのが変なんじゃねぇ?という男性、肉に刃をむけるのができない、と言い放つ乱暴で凶暴な女、そしてそれを上回る凶暴な主人公、リアリティ満載の死体遺棄の後の疾走(完璧な暮れ時での横移動)、そして処分したはずのそのけったいなものはどうも殺せるような代物でなく、その辺をうろうろしているようである。。あんなことまでやっている主人公が心底恐るものなんてなんだろう。
とにもかくにもここに吉岡睦雄主演含めてブラックホールみたいな短編が誕生した。よかった。
ギュッと濃縮の45分
2度目のStranger、なかなか好きな劇場。
始めの田代さんのくだり、じわじわと不気味な雰囲気ではあるものの、これ45分で収まるのかという流れから一変、キャーやっぱホラーだった!な急展開。
音って一度気になりだすとだんだんイライラしてくるから、殺人や自殺などのニュースで見る「特に変わった様子はなかった」というのも、こういう衝動によるものもあるのかな?と妙に納得。
奥さんの異常な量の空き缶も、息子の急な笑いも、なんだかあの家族おかしい。まあ登場人物ほとんど変。
松岡さんのなんだか鼻持ちならない口調と、もっさりした髪型がより不気味さを醸し出している。
ラストはめちゃくちゃ怖いジェットコースターに乗ってしまったような気分。1分はあったかな?逃れられない不快な音によく耐えた自分を褒めてあげたい。
グロくはないけとイヤ。
黒沢清作品の濃縮されたエキスが堪能できる傑作
過去の黒沢清作品の濃縮されたエキスが存分に味わえる一作。上映時間45分だが、ゆうに長編作品1本を見たような充実感があった。
室内の仄暗い片隅、微かにゆれるカーテン、室内の壁に跳ね返る外の通過電車の光と音、ひんやりしたステンレス包丁、引きずられる寝袋。
あるいは、噛み合わない会話、日常の光景のなかに転がる死体、断末魔的な足の痙攣、不意に襲いかかる他人。「なにか」を見てしまった主人公の洩らす奇妙な呻き声……。
そんな、どこかで見覚えあるシーンが次から次へと出てくるが、過去作の“文脈”とは異なったカタチで現れるので、新鮮さは損なわれない。
さらにブルーの飲料自販機、路上の長くうねったタイヤ痕、生徒がぞんざいに扱う鶏肉…など、目に映り込む何もかもが不穏で禍々しい。
くわえて、神経を擦り減らすような「音」の使い方も効果絶大だ。
タイトルにある「チャイム」はもとより、アスファルトに叩きつけられたシャベルの音、尋常でない量の空き缶を手荒にゴミ出しする騒音など、日々意識せず耳にしている「生活音」がここでは不安を煽ってくる。
ただし、ときに少々やり過ぎのきらいもあって、映画『関心領域』に一脈通ずる“危うさ”を感じないでもないが。
ともあれ、このように一見脈絡なくみえる点描の不吉さが、バランスを欠いた人間の心性や情動を浮き彫りににする。さらに、クリーンで陰日向のないはずの「東京」に重く垂れこめた「空気感」までも、本作は見事に切り取ってみせる。
近年、電車やエレベーターに乗っている時、あるいはミニシアターの暗がりに身を置く時、うすうす気づいているのではないか。そう、アレと同じ「怖さ」が本作から滲み出てくるのだ。
最後に、主人公・松岡役の吉岡睦雄さん、圧巻の名演。夜の橋上を主人公が駆け出していくロングショットなど、思わず見惚れた。映画『父 パードレ・パドローネ』の終盤、モーツァルトのクラリネット協奏曲が流れる名シーンまで連想したほどだ(ちなみに同シーンの参考イメージとして、黒沢監督は『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』におけるマーゴット・ロビーの全力疾走を挙げたそうだが)。
ところで、帰宅した夫を迎えた妻(田畑智子)のあの立ち居振る舞いは、なにかの冗談? もしや小津作品『彼岸花』の田中絹代の「悪意ましましバージョン」なのか。とにかく興味は尽きない!
さすが黒沢清監督‼️
ミニシアターStrangerで鑑賞🎥
黒沢清監督の新作であれば観ないわけにいかない🙂
全体的に『CURE』系のホラーであり、50分にわたってゾクゾクする怖さを感じる中編😨💦
ただ、家族を描く場面は『トウキョウソナタ』っぽく、死体袋は『蛇の道』っぽくもある(^^)d
物語は、料理教室で教えている松岡(吉岡睦雄)だが、田代という生徒が「チャイムのような音がしませんか?誰かがメッセージを送って来ている」と言い出すが、松岡には聞こえない。少し経って、田代という生徒は「僕の脳の半分は機械に入れ替えられているんです」と言って衝撃的な行動に出る。
その後、松岡は女性生徒に料理レッスンをしていたが、「鶏の調理は気持ち悪い」という女性生徒に対してショッキングな行動を取る松岡。
松岡の日常生活が崩壊していくさまが恐怖であるが、田畑智子も熱演。空き缶コワい!😰
「自由に映画を作ってください」と言われた黒沢清監督が作ると、かくたる恐怖映画が出来上がる素晴らしさ‼️
いろんな不思議な映画を作って来た黒沢清監督だが、やはり黒沢ホラーは天下一品!✨
日本公開に先立ってベルリン映画祭ではプレミア上映満席で熱狂的に迎えられ……というニュースで気になっていたが、ようやく観られて至福の時間であった😊
(「蛇の道」+「CURE」)÷4=「Chime」
黒沢清監督の作品と言うと、最近では「蛇の道」、昔の作品だと「CURE」を観ましたが、本作もそれら前2作の流れの中にある黒沢清作品らしい作品だったなあ、というのが第一印象でした。さしずめ(「蛇の道」+「CURE」)÷4=「Chime」というところでしょうか。「÷2」ではなく「÷4」としたのは、前2作がいずれも2時間弱の長編だったのに対して、本作は45分の短中編だったという上映時間の短さに加えて、種明かしの情報が極めて少なかったということが挙げられます。
内容的には、理由も良く分からぬ状態で簡単に人が殺されるという点では「CURE」的であり、殺傷した相手をシュラフに入れて運ぶという点では「蛇の道」的でしたが、殺されてしまう劇中の登場人物にとっても、状況が説明されぬまま殺人現場を目撃することになる観客にとっても、いずれも理不尽なシチュエーションに置かれるという点では、本当に黒沢清作品そのものでした。また、正気な人が殆ど登場しない点も共通していて、その辺の薄気味悪さは相変わらず良かったです。
ただ前述の通り「蛇の道」や「CURE」ではあった種明かしが全くなく、「Chime」は誰が鳴らしたのか、どんな意味があるのかとうところが説明されておらず、映画が終わった時は「これで終わり?」という気もしましたが、現実にも科学的に解明されていない謎は数多ある訳で、こういう終わり方もありかなと、今は思っているところです。
そんな訳で、本作の評価は★3.5とします。
菊川まで観に行きました
知り合いの若い方がCureを見て、訳わからないが印象に残ったそうで、私も封切り時に観てスジは忘れていますが主人公の怪演は記憶にあります。このコメントと好きなレビュアーの推薦で久々に黒澤監督の本作を観ましたが、これも衝撃でした。田畑智子の奥さんが怖かった。主演の方初見ですが、すごい存在感を感じました。舞台の方かなと思いました。菊川の表題の映画館初めて行きました。深川を散策していいところだなと思いました。
鶏肉怖い。
料理教室で講師として勤めている主人公の吉岡の周りで起こる異常な事態により、現実が崩壊して行く様をアイディアたっぷりの撮影で淡々と写しておりました。
一時間と短い上映時間だからなのか実験映画の様に遊び心たっぷりな映像で魅せられました。実験映画と書いたけれど凄く面白いお話しでもあるので、小難しくなく楽しめる映画でもありました。
レストランへの転職を希望している主人公の物凄い薄っぺらさは情けなく恥ずかしく、あの面接のシーンは鳥肌(!)が立つ位楽しかった。
料理教室があれほど恐ろしい場所とは…黒沢監督本当に凄い。
イライラしている時は料理は止めましょう。
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