Chimeのレビュー・感想・評価
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不安に特化した作品
頭が痛くなる45分
タイトルなし
菊川ストレンジャーに見に行きました。見られるものは極力ここで見てます。映画館を応援するのも楽しみの一つ。
昔の黒沢清が戻ってきたようだった。北野武がまたバイオレンス撮り始めたみたいな感じ。
内容はさっぱりわからなかったけど、黒沢清のいいところって劇中最低1回は笑わせてくれる所。面白いとかじゃなくて、不気味すぎて笑える、不穏すぎて笑える、みたいな。鶏肉のくだりが冴えてたなあ。笑ってしまった。
電車通過の反射光やら基本能力の高さは当たり前として(最近の邦画では見られないけど)、演出力がずば抜けてる。当たり前か。俳優の台詞を抑揚なくすることで芝居の臭みを隠すやり口、最近は濱口竜介の専売特許みたくなってるけど、よく考えたらこの人が元祖かも。バブル崩壊後から今も続く現実観に合ってるんだろうな。
“恐怖”を体現
だいたいまともだけどちょっと異常
メンヘラ大集合か侵蝕か
久しぶりにCUREでも観るか
チャイムの音を想像してみる
恐怖はどこからやってくるのだろう。
2024年。黒沢清監督。料理教室で講師をする男は「頭のなかでチャイムが鳴る」「誰かに半分脳を乗っ取られた」というちょっとおかしな参加者を疎んじつつ目を離せないでいるうちに、目の前でその男が死んでしまう。同じころ、有名レストランからの誘いを受けて意欲的に面談を受けるが、その直後、今度は自分が教室参加者の一人をめった刺しにして殺してしまう。家では妻とも息子とも会話らしい会話がなく、最初の事件の刑事が次の事件では行方不明者の捜査として現れる。レストランの話は簡単に立ち消えになってしまう。男の周囲を不穏な世界が取り囲む。
幽霊の恐怖、自分が殺してしまう恐怖、捕まってしまう恐怖をすべて詰め込もうとしたと黒沢監督はインタビューに答えている。なるほど、殺してしまった女性は幽霊として、画面には現れないまま存在感を出しているし、おかしな参加者を突き放しきれなかったり、息子やレストランの経営者らしき男に蔑まれたりした後の様子を見ると、自分が殺人者になってしまうかもしれない恐怖(いわゆる殺意)と戦っているようにみえる。また、女性を殺してしまった後では刑事の存在におびえている。
これらの恐怖はこうも言える。想像することの恐怖①、自分には計りしれない自分自身のなかにあるものへの恐怖②、現実世界への恐怖③。①はイメージの世界であり、②は無意識や抑圧の世界であり、③は法や社会の世界である。これらすべてに恐怖を感じる男は、扉をしめて、安全とはいいがたい家の中に閉じこもるばかりだろう。「安全とはいいがたい」のは、家の中では想像を禁じることも、現実から逃避することもできるが、抑圧されているもの(妻がため込んだゴミ)や他者としての家族は禁じるとこも避けることもできないからだ。われわれはみな「ここ」に生きている、と黒沢監督はいう。
役所広司、ダンカン、長谷川博己、そして吉岡睦雄。
黒沢ホラーの集大成
壊れた心の音
怖いよ〜怖いよ〜
「スパイの妻」の黒沢清も好きだけど、「CURE」の黒沢清も好きだなあ…ということを再認識させる1本。
決定的に何かが起こるのは包丁を使った2回くらいで、それ以外は確実に『何かが起こっているんだけど、何かを映さない』『音や構図や演者の顔だけで何か起こったことを示す』という恐ろしさ。心霊なの?宇宙人なの?いやもうただの不条理なの?っていうジャンルを横断してるとも言えるし、横断してるかも分からないけど、分からないから怖さが増す。知らん間に無機質の狂気が他の登場人物に連鎖してる感じも恐ろしい。決してベロベロバーに頼らない。
ラストカット、「いやそこに立ってると下手したら死ぬよ?」という絶妙な位置に立ってるシーンを何回か見せてからの家。この後何するの…怖いよ…。そこで切ることで見る側の生活と地続きになってる感じになる。事実帰り道に歩いていたところ、閉店したガソリンスタンドに電話がかかってきてて、もうその電話音が怖くて怖くて。関係ないんですけど。
料理教室って実は恐ろしいよねという気づき。見知らぬ人たちが正気を保っていることを前提に包丁使いまくったり、火を使いまくったり…。
淡々と講師が説明するのに、過剰に玉ねぎを切り裂き炒め物を焦がす登場人物。掴みから完璧。
「私理屈で説明してくれないと納得できないんです」的なセリフがあるんだけど、この映画のことを言い表してると思うので、もう一度見てみたい。
血しぶきの後に、自分の手から流れた少なめの血に対して絆創膏貼るシーンが一番印象的でした。
不穏感がこれでもかと
Chime❲ra❳
評価が高いようだが、自分には理解不能だった。
松岡は他者への無関心さが際立っており、演技も相俟って不気味。
それを上回る田代の分かり易いおかしさで、最初は違和感を感じづらい仕組みは上手かった。
電車の通過により、壁に田代の影が明滅するように映る演出も素晴らしい。
その田代の事件までは興味を惹かれ面白く観られたが、それ以降は意味不明。
松岡の妻が行う行動は確かに異様だが、まずその大量の空き缶はどこから集めてきたのか。
菱田も変だが、あの中だとまだ現実的に感じる不思議。
松岡の殺人は衝動的かと思いきや、処理の準備がしてあったり、常習的なのか含めて謎。
面接も、営業中の店内で、しかも奥でなく手前の席でやってること自体が不自然すぎる。
更にそこでも事件が起こって…
チャイムが何なのかや、その他の異常さについては一切説明ナシ。
タイヤ痕や最後の木なども意味深なだけ。
それどころか、起こることに関連性があるようにも思えず、単にあの世界がおかしいようにしか見えなかった。
予告で「それは、この世に確実に存在するであろう 摩訶不思議な恐怖――」とあるが、どこが??
統合失調症や、理解不能な事件の数々をひとまとめに扱ってるのかな。
劇中にほとんどリアリティを感じなかった。
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