「受身的で理念に欠ける物語」映画ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー) 卯之吉さんの映画レビュー(感想・評価)
受身的で理念に欠ける物語
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現代の日本の都市は常に音楽に覆い尽くされており、その過剰さはノイズとしか言いようがないにもかかわらず、のび太のせいでほんの少しの間音楽が欠けてしまったから「ノイズ」という敵に地球が襲われ、音楽が奪わる危機にある、という。そもそもノイズとは何なのだろうか。古来、人間が音に何らかの意味を感じ、調和を感じる音が、ノイズとは峻別され、音楽の音になっていったのではないだろうか。しかし、のび太がリコーダーを吹き損なう時の不快な音が、どんな音楽にも勝る至高の音として、「ノイズ」という敵を退けてしまうのだ。そこに何らかの意味を見出すことは私には出来なかった。音楽と「ノイズ」の戦いに、特に意味はない。それにもかかわらず戦うのはなぜなのだろうか。戦うことは受身的でしかなく、そこで勝利することが、世界に対して生き生きとした意味を改めて認識させてくれる物語ではなかったと思う。それを子どもに見せる意味は果たしてあるのだろうか。
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