劇場公開日 2023年9月8日

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「ビジュアルは見応えがあるが、ミステリーとしては今一つ」ヒンターラント tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ビジュアルは見応えがあるが、ミステリーとしては今一つ

2023年9月12日
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何と言っても強く印象に残るのは、シュールで陰鬱な背景映像だろう。
壁やら柱やら窓やらの平行だったり直角だったりするべきところが変な角度に傾いていて、戦争ですべてを失った主人公の歪んだ心象風景が見事にビジュアル化されている。
ただ、そんな絵画的な凝った映像には目を奪われるものの、連続猟奇殺人事件を巡るストーリーについては、あまり手の込んだ作りにはなっていないように思える。
何よりも、主人公自身が事件の当事者で、たいした推理や謎解きもしないまま、被害者の顔ぶれだけで犯人の動機が分かってしまうというのは、ミステリーとして物足りないとしか言いようがない。
その動機にしても、復讐するべき相手はあくまでも酷い仕打ちをしたロシア人であるはずなのに、共に戦争を闘った同朋を逆恨みするというのは、どう考えても筋違いで腑に落ちない。
しかも、それは、多くの収容所の仲間を助けるために、やむにやまれずやったことであると、ちゃんと犯人も理解しているのである。
その犯人にしても、それまで見たことのない「誰だっけ?」という人物で、意外性も驚きも感じられないのだが、その後、主人公と同僚の警部との会話に出できた人物であるということが判明して、ようやく「そういうことだったのか!」と納得することになる。
ここら辺のくだりも、もう少しスッキリとスマートに描くことはできなかったものかと、残念に感じてしまった。
その一方で、ラストの農村の風景は、それまでのブルーバック合成ではないロケーション撮影になっていて、悪夢から醒めたような開放感が心地よかった。

tomato
tomatoさんのコメント
2023年9月14日

そうですね。
回想シーンでもいいので、収容所での出来事が映像で描かれていれば、犯人が明らかになった時に、「あの人だったのか!」という驚きが感じられたのではないかと思います。

tomato
YOUさんのコメント
2023年9月14日

主人公以外の帰還兵の掘り下げが今ひとつなので、顔の区別が難しかったです。
まさに「誰だっけ」感満載(笑)

YOU