私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?のレビュー・感想・評価
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【”被害者を加害者にしない。”仏蘭西原子力産業複合企業の労働組合代表女性が、一度は被害者から加害者にされながらも最終的に法的に覆し無罪を勝ち取る姿を、イザベル・ユペール独特の演技で魅せる作品。】
■実在した仏蘭西原子力産業複合企業アレバ社の労働組合代表、モーリーン・カーニー(イザベル・ユペール)は、中国とのハイリスクな技術移転契約の内部告発者となった。
その後、彼女は自宅で何者かに襲われ凌辱されるが、さらに警察側からそれが自作自演だと嘘の供述を強要され、肉体的にも精神的にも追い詰められそれを認めてしまう。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・モーリーン・カーニーを演じたイザベル・ユペールの、毅然とした労働組合代表の姿として5万人の従業員の雇用を守るため内部告発する。
が、その後自宅で襲われつつ、その真実を警察のブレモン曹長(ピエール・ドゥラドンシャン)の執拗な尋問で徐々に追い込まれ、自作自演を認めてしまう流れ。
ー イザベル・ユペールの「エル ELLE」のイメージも入ってしまい(意図的かな。)、彼女が襲われた事実が自作自演かもしれない・・、と思わせるストーリー展開が面白い。
彼女は、縛られた椅子を自宅の庭で燃やしてしまうし、拘束されたテープ類は全て自宅のモノだし。だが、過去同様の事件が有り納得できない若き女性捜査官がクレモン曹長に資料を掲示し食らいつく姿が後半効いてくるのである。-
・そして、彼女は被害者から加害者になってしまうが、常に彼女の側に立つ夫ジル(グレゴリー・ガドゥボワ)の姿に救われる。
夫の支えが無かったら、彼女は国家的陰謀に屈したのではないかな。実在のモーリーン・カーニーのコメントにもあるように。-
■4年が経ち、モーリーン・カーニーに且つての不屈の闘志が戻り、彼女は新たな訴状を提出し、世論も巻き込み、更に当時クレモン曹長に”同様の事件が有ります。”と資料を出して食らい付いた女性捜査官から資料を貰い、その事件の当事者に会い証言を得る事などにより、新しい弁護士と共に、当時の警察の捜査上の不備、押収品が全て無くなっている事を指摘し”自分は、被害者である。”と事実を勝ち取るのである。
<今作は、いわゆる社会派サスペンスになるのであろうが、根本にあるのは組織の中枢にいる女性に対する無言の圧力と排除しようとする見えない力の恐ろしさを描いているのだと思う。
故に、今作の女性の告発者であるモーリーン・カーニーが巨大組織に抗い、一度は屈するモノの最後は復活して勝利する姿に喝采を覚えるし、ラストの法廷シーンでモーリーン・カーニー演じるイザベル・ユペールが、第四の壁を抜けて観る側に毅然とした視線が
”貴方が所属している組織は、女性に対する無言の圧力と排除しようとする見えない力がないか!”と言っているように、私には思えた作品である。>
実話とは驚き!
内部告発が国家権力の陰謀により事件の真相を曖昧に捜査する捜査官から容疑者に追い込まれながら無罪を勝ち取るため奮闘す姿は最後の最後までドキドキするサスペンス映画であった。
イザベルの年齢を感じさせないファッションと役柄に凄さを感じるのであった。
カタルシスは無くても
ラストシーン、モウリーンが新しい仕事場で「私はモウリーン・カーニー。嘘はつかない。」みたいなスピーチをします。
これで、一度は屈しても、これから貫こうとする新たな決意を体現していますね。
彼女の矜持である「権力と戦う覚悟と不屈の精神」は、こうしてまた甦る。
敵を倒し、正義を勝ち取る話はスカッとしますが、この映画は、事実に忠実にあえてそういう脚色や演出を封印し、主人公の「リヴァイヴ」にフォーカスした点にその良さがあると思いました。
イザベル・ユペールも実年齢を聞くとビックリしますが、それを感じさせない若々しさ、美しさ、カッコ良さでした。
来ている洋服も「こういう着こなしができたら」と思う素敵なものばかりで、凛々しく綺麗に年齢を重ねるお手本のように見えて、映画を見る楽しみも倍増したと思います。
23-130
五万人の雇用を守るために戦う組合活動家。
並大抵の体力と精神力では無いだろう。
ましてや男女平等とは言い難い10年前のフランス🇫🇷で。
女性なら誰しも受けたく無い役目なのかも。
次から次へと女性を軽く見ている輩達。
組合の同僚、新社長、捜査機関、弁護士、判事、元社長。
孤独の中、家族だけが支えのはずなのに、
なんだか距離があるように見える。
鉄の女ってことなのでしょうか❓
実話を基にしているだけに、
なんだかスッキリしない結末。
まぁ実際に未解決事件なのだから仕方ないか。
実話に基づくスケールの大きい話の凄さに驚愕しつつ、彼女のファッションにワクワク。
飽きさせない台本。サスペンス的要素はもちろん、そもそもスケールの大きな原発業界のドロドロ。「ビフォア フクシマ」と「アフター フクシマ」で状況激変したので、劇中「フクシマ」がなんども出てきたのは仕方ないとはいえ、主人公の体当たり作戦(?)のことを「カミカゼ」と表現されていたのは、「え、今もそういうの?」と、もちろん良い気はしなかった。
日本人は兎角、「アメリカでは」「フランスでは」「EUでは」と、諸外国の方が秀れているかのように語る「出羽の守」問答が多いけれど、どこの国もこんななんだ、、、と改めて思い知らされた。
カット毎にイザベル・ユペールがお着替えしてくれて、労働者の味方!という割には女っぽさを絶対捨てない(さすが仏マダム!)スタイル、どれも素敵だった。スカーフのあしらいかた、バッグの持ちかた、ブラウスの胸元の開け方、、、(真似はしたくてもなかなか出来ませんが)。スタイリストさん、楽しませてくれてありがとうございました。
巨大利権に挑むということ
最近良くお目に掛かる”実話を基にした”映画でした。直近だと「福田村事件」や「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」が代表的ですが、本作もそれら同様かなり重たい事件を扱っていました。
ただ前2作と本作が異なるのは、前2作が100年程前のお話だったのに対して、本作は直近10年程度の時代の、しかも先進国であるフランスでの話だけに、余計に怖い作品だったと言えるかと思います。また、舞台となったフランスの原子力総合メーカーであるアレバは、2011年の福島第一原発の事故や、それ以前の投資の失敗などにより経営が悪化していました。まるでウェスティングハウスを買収し、福島第一原発の事故を経て経営が悪化の一途をたどり、会社が切り刻まれた挙句2023年末に上場廃止となる東芝と見事にダブるアレバ。その渦中で起きた事件だったことから、作中「フクシマ」という単語が何度も出て来るので、その点でも非常に身近というか、日本での出来事と地続きの出来事であることに、驚きも感じられました。
フランス語の原題「La Syndicaliste」というのは、邦訳すると「組合活動家」という意味だそうで、これは主人公であるモーリーン・カーニー(イザベル・ユペール)のことを指しています。日本で「組合活動家」と言うと、(かなり偏見あるかもだけど)ヘルメットを被って赤旗を振り、経営陣だけでなく政権批判をする”サヨク活動家”というニュアンスが含まれてしまいますが、モーリーンの場合、というかフランスの場合、労働者代表が経営に参画することが法的に定められており、彼女も労働者代表として取締役会に出席する立場でした。
そしてこの作品で描かれる彼女の姿は、日本で言うところの「御用組合」の首脳ではなく、ちゃんと労働者の側に立った労働者代表であり、正直こうしたフランスの制度だったり、彼女のような人材を輩出するフランスの社会的な風土だったりは、日本も大いに見習うべきところだと感じたところでした。まあ財界をパトロンに持つ政権が続く限りは無理だけど。
で、ようやく本題に入って映画の内容ですが、経営の悪化により中国を含めた企業再編を進める新社長・リュック(イバン・アタル)と真っ向対立したモーリーンが、自宅で暴漢に襲われる事件が発生。ところが指紋やDNAなどの証拠が見つからなかったため、逆に彼女は虚偽の告発をしたということで、被害者どころか被告人の立場に立たされてしまう。そして驚くことに一審では有罪判決を喰らうことに。
これがロシアとか中国の話ならさもありなんという感じですが、フランスで起こった事件だけに、うすら寒いとしか言いようがありません。でも巨大利権に挑むということは、同時に巨大なリスクを伴うということで、それは古今東西不変の真理なんだろうと思わざるを得ないところでした。
そうは言っても余りにも不条理な話であり、このままで終わっていいのかという話ですが、6年の歳月を経て、警察内部の協力者の調査により、モーリーンの事件の前にも、水道事業を手掛けるヴェオリア社に絡む内部告発者の妻が、モーリーンと同様自宅で暴漢に襲われ、証拠がないということで自作自演だと言われたという事件があったことが分かり、また新しい弁護士を付けたことなどで事態は展開していく。最終的にモーリーンは無罪判決を得たものの、実行犯はいまだ捕まっていない。怖っ!
因みにヴェオリアと聞いてピンと来たのは私だけではないでしょう。この会社、日本の水道民営化の流れにも参画しており、日本で初めて公共水道を民営化するという暴挙を行った仙台市の水道事業を請け負った事業体の親玉です。
いずれにしても、日本との意外な関係がいろいろと出て来る映画でした。
最後になりますが、主役のモーリーンを演じたイザベル・ユペール。1953年生まれの御年70歳とのことですが、実在のモーリーン・カーニー氏は1956年生まれなので、ほぼ同年代。暴漢に襲われたのがフクシマの翌年2012年なので、モーリーンが50代後半の頃の話だった訳ですが、見た目もっと若く見え、とても70歳のイザベル・ユペールが演じていたとは思えませんでした。彼女の力強い美しさが、本作を題材だけでなく、映画としても上質な作品にした主因だったように思えました。
そんな訳で、評価は★4とします。
利権
人間社会は国家よりも先に経済ありきなので、本作の様な国家と企業の癒着は何も特別なことではありません。例えば戦争は国家をあげての非常に大きな経済政策です。そんな美味しい果実を告発したモーリーン・カーニーは、巨大権力を敵に回しました。これって、本当に凄いことですよね。何かしらの告発者や権力に近い人間がいきなり自死したり事故にあったりするのは、陰謀論でも何でもなく良くあることと思いました。
イザベル・ユペールが、掴みどころのないモーリーン・カーニーを観客が感情移入できるように非常に上手く演じていて、ヴァーホーベン監督の「elle」を思い出してしまいました。
主人公に敬意を評したい 多分もともとこういう雰囲気の人なんだと思う...
主人公に敬意を評したい
多分もともとこういう雰囲気の人なんだと思うけど、
キャラ設定も良かった
しっかし、恐ろしい話ですね、
正しい人がここまでこういう目に遭うなんて
馬は飼ってないからね
フランスの原子力企業のアレバ社で、5期に渡り組合代表を務めてきた女性が襲撃されて、捜査と裁判に翻弄される話。
極秘に手にした中国との合弁計画を調べる中で襲撃されて巻き起こって行くサスペンスだけれど、ことが起きてからは彼女が襲われたことへの話しばかりで、会社の計画に関する話しはほぼストップ。
これはこれで面白かったけれど、それをも乗り越えてという様な感じかと思っていたから、個人的にはちょっとズレてしまった感覚も。
妨害工作であったのか警察は関与していたのかというところにも疑念を抱かせる作りではあるし、事実そうなのかも知れないけれど、それを決めつけたら一審の際の警察や検察のそれと一緒というジレンマに陥るというね…。
しかしイザベル・ユペール何歳の設定よ?真っ白に飛ばしてメガネで隠してたけれど、目元や手の皺は流石に…。
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