「ホームレスワールドカップ」ドリーム 狙え、人生逆転ゴール! 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
ホームレスワールドカップ
ホームレスワールドカップを知らなかった。ウィキやオフィシャルサイトをのぞいたがまともなイベントだった。それ自体がドラマチックなのでホームレス状態からフィールドを駆けるところまでのドキュメンタリーがいくつか作られている。とうぜん映画にもうってつけの話だった。
ホームレスたちはさまざまな来歴をもっていて、その中からIU扮する番組PDが撮れ高目線でメンバーを選んでいく。
経費はスポンサーやファウンデーションだのみ。金がなきゃ選抜や練習はおろか参加ができない。
だからメンバーは同情を買えれば買えるほどよかったし視聴率が最重要であることを隠してもいなかった。そのポジションをIUがうまく演じていた。博愛でやっているのではなく金のためにやっていて、それを見た感じ博愛なIUがさばさばで演っているから楽しいわけだった。
こういう話を悲哀を抑えてサクサクと描いてしまえるのはさすがだった。これがもし日本映画だったら・・・。
問題をおこしてチームをくびになるサッカー選手を梨泰院のパクソジュンが演じている。じっさいにサッカーもじょうずだったがオフビートもじょうずだった。オフビートというか、じぶんを落とした笑いができる器用さがある人だった。
楽しく進んでいくが場面が大会へ移行すると暑苦しい韓国マンセードラマに変容していく。李舜臣将軍は12隻の船で330隻を撃退した──なんていう台詞もでてきたりする。
これを見た(2023年7月末)時点でNetflixの日本国内順位映画部門1位だった。
ところで日本製よりも韓国製の映画やドラマのほうがすき、いや、すきというか根本的に韓国製のほうがクオリティが高いのだから一昔前メイドインジャパン製品を選択するのと同じ理屈において韓国製を選びとるのであって、すきもなにも韓国製のほうが面白いんだから一消費者にはそれ以上の理由なんかないわけである。
そんな韓国製だいすき日本人なのにたいていの韓国映画ドラマのなかに日本日本人をディスる場面が出てくるというなんともいえない境地。さらに韓国映画やドラマのレビューで比較することなんかないのにわざわざ日本製映画ドラマを貶めるような比較をするというあいまいな日本のわたし。
言ってしまうと、日本製映画ドラマではおっさんはだめ人間であるという烙印のもとに扱われるゆえに、こうやって熱い演出を為されることがない。石塚英彦似でよく見るバイプレーヤーのコ・チャンソクに娘がいてパパがんばってという感じでポジションされているのだが、娘が無垢なままお父さん大好きという位置で描かれることは日本ではない。ニュアンスは解ると思うが日本製映画ドラマではおっさんは無価値化され醜悪化される。ホームレスの年配者たちががんばる話なので、そのような偏向がなくて見やすかったのは言うまでもないし、これが日本映画だったら情陸みたいに湿っぽくやるだろう。牽強付会になったが、そう思ったから言ってみた。
悪くないが後半は暑苦しかった。
この基金を組んでいるのはボブという名の猫で主人公が街頭販売している雑誌の出版社だ。俺も将来世話んなるかもしれんなあ。