「製作者側のもつ「人間観」や「障がい者像」が浅すぎる」月 toyotoさんの映画レビュー(感想・評価)
製作者側のもつ「人間観」や「障がい者像」が浅すぎる
自身が障がい者福祉や教育にたずさわっているので劇場で観ようと思っていたのですが叶わず、VODにて自宅で鑑賞。
演出が良くないのか、脚本のせいなのか、登場人物全員に厚みがない感じを受けました。
特に宮沢りえ氏とオダギリジョー氏は大好きな俳優さんなだけに残念でした。
それぞれの人物の過去エピソードはそれなりに語られてはいるけど、その過去エピソードと今の人物の人となりとの繋がりが実感できませんでした。
とにかく、全部が“さらっと上部だけ”で“中途半端”で“浅い”印象。
一番気になったのが、時々挿入される障がいをもつ当事者さんたちの映像。
これ、必要でしたか?
この演出をどう解釈していいのか、製作者側の意図がわかりませんでした。
主要な登場人物たちが、障害者施設で働いているはずなのに、利用者さんと”普通に”交流する場面がほとんどなく、静かに事務室にいるか、利用者さんにいじわるしているか、利用者さんの問題行動にうろたえているか。
まぁ、職員のレベルが低い底辺の施設という設定なのかもしれませんが。
それにしても、障がい者を描いているはずの作品であるのに、現場にいればすぐに実感できる本来必ずあるはずの「当事者自身がもつ生命感や命の輝き」の表現が非常に薄い。わざとなのか?
そこを補完するために障がいをもつ当事者のリアルな映像を細切れに挿入したのかもしれません。
でも、それならば、そのリアルな当事者の方が実際にしている常同行動について、犯人役の役者に批判的、攻撃的に語らせるのはいかがなものかとも感じました(そこは障がい者役の役者の行動にするべきでしょう)。
現実の障がい者福祉や実際におこった悲惨な事件を取り扱うだけの知識や力量が、製作側に絶望的に足りていない。
そもそもの人権意識が未熟な製作者が、自身の重大な問題点に気付かないままに、未熟な人間観や浅慮な障がい者像をたれながしている。
センセーショナルな事件をネタにして、適当にそれらしいエピソードをくっつけて、時流に乗ってサラッと突貫工事で作った無責任な作品だな、という印象です。
書いているうちに、また腹が立ってきました。