劇場公開日 2023年10月13日

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「少々難し過ぎる」月 R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0少々難し過ぎる

2025年4月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

何とも表現しにくい作品
作中でもあるが、描いているのが人の心
しかしすべての作品は人の心を描いているものだ。
それ故、わかるようなわからないような難しさが残る。
さて、
月とはいったい何のモチーフなのだろう?
一般的に言われているのが月の重力による地球や動物の変化だが、見えないし感じないこと故、価値があるのかわからない存在ともいえる。
「心がないなら、生きる意味も価値もない」
このセリフを月に見立てたのだろうか?
映像の中で月は、冒頭の暗闇に光る三日月と最後に小さく遠くに薄っぺらい昼間の三日月としてのみ登場する。
実際に太陽の光を反射して光る月は、光の幻影とも取れる。
冒頭にあるテロップ
同じことが繰り返されるという意味
これはかつてそうであって、今でも変わらないことを示唆する。
いつの時代でもなくならない偏見した思考。
作者は、実際の事件をモチーフにしながら、こんな事件はいつまた起きてもおかしくないと言いたいのだろうか?
そして、群像
人は他人の中に自分の群像を見る。
だから反応する。
特に反感は如実に現れた自分像
ヨウコも、陽子も、サト君も、お互いの中に、障害者の中に自分自身を見る。
さて、、
この作品のコントラストは奇妙だ。
そして無力だ。
ヨウコはTVの映像を見て「行かないと 行ってやれることを」というが、やれることはすでにできなかったのではないかと解釈した。
やれる可能性は、夫がサト君と再会した話と、キイちゃんの夢 胸騒ぎがすでに伝えていた。
今さらあの施設でヨウコがやれることなど何もない。
ただ、
「これから先どうなるかわからないとしても、この先も頑張って生きて行こう」
これだけがこの作品の中の唯一の「正しい答え」なのかもしれない。
二人がお互い「好きだ」と確認したことも、二人の人生にとって大切なことかもしれないが、事件とは基本的には関係ない。
むしろサト君とショウコでさえも、お互いに好きだということを確認し合っている。
この二人の記念日が、答えを出す日にした日が事件の日という設定も、いったい何を意味したのだろう?
コントラストにしか見えない。
月とは、いったい何だろう?
そして、
やはり理解できないサト君の思考
施設の障害者の言動を四六時中聞かされることで起きる異常を、彼は訴えた。
最初はヨウコ同様「こんなの間違ってます」と院長に訴えていた。
措置入院によって益々思考が明確になったのだろうか?
サト君は心のあるなしこそ、価値のあるなし、意味のあるなしを決めたようだが、紙芝居を読み聞かせながら「臭くて汚いものって何だろうね?」というあたりは恐ろしさを覚えた。
既に狂っているのは明らかだが、その根底の闇の深さは計り知れない。
同僚はサト君の中にヒットラーを感じているが、この社会によって価値基準が決められることそのものに彼は参ってしまったのかもしれない。
この彼のまったく理解できない思考と、堂島家そして陽子という人物の根本は同じようではあるが、そこから手に取った何かが彼らを大きく異なった存在にしてしまったのだろうか?
そもそも、
この作品が問題にしたことは何だったのだろう?
「心の痛み」
物事ではなく人の命に関する心の痛み
鋭い感性を持つ陽子
彼女が目指す小説家の夢と、才能のない残酷さという現実
嘘が嫌いだという彼女は、ヨウコからもサト君からも嘘つきだと言われるが、自分を隠そうとすれば嘘が出るし、相手の嘘も探したくなるのだろう。
特に陽子がヨウコの内面を見抜いた指摘は的を得ていた。
やがてヨウコは再び書き始めるが、声にできない言葉をどのように表現したのだろう?
「間に合った」のは文藝賞への応募だろう。
サト君がショウヘイに言った「息子さんに見せたかったんでしょ」というのも鋭い視点だ。
この作品が後に賞を取ったのだろうが、サト君の思考が益々わからなくなる。
人の心がわかるサト君
心がわかるからこそ、意思疎通出来ない障害者を価値がないと思うのだろうか?
古来からあった価値と意味という概念
それは他人軸で測られるのものではなく、自分軸で見つけるものだろう。
自分自身を俯瞰すれば、その価値も意味もないように思えることがあるのは事実だ。
でも少し生き生きとしているときには、そんなことは一切考えないものでもある。
自分のこと 自分の価値 自分の生きる意味 勝手に悩み苦しむ自作自演
他人の価値 他人の生きる意味 この領域には踏み込んではいけないのかもしれない。
この作品に感じるコントラスト
そこには自分軸と他人軸の違いが隠されているのかもしれない。
しかし、難しい。
人類が繰り返しているのは何だろうか?
隠ぺい 冒頭の言葉
そして「新しいものは何もない」という言葉
これらは問題提議で視聴者に考えることを促しているが、コントラストが強すぎてどっちかになってしまうようにも思えてしまう。
思考が、簡単に一周まわって考えることを止めさせてしまう。
やっぱり難しい。

R41
りかさんのコメント
2025年4月8日

私もわかりませんが、
どなたかフォロワーの方が、
さとくんが使用した 鎌 に例えて
られました。

りか
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