「われらの中にある優生思想と向かい合って」月 chikuhouさんの映画レビュー(感想・評価)
われらの中にある優生思想と向かい合って
映画の中に「出生前診断」について、産科医と洋子、そして洋子夫婦の会話がある 高齢出産となって「リスク」が高まるからとして勧められる「出生前診断」 それは生まれる前からダウン症などの障がいを持って生まれてくる可能性についての「命の選別」として、「定着」しつつある現実がある 検査結果によっては中絶を多くの人が考えている現実の中で、障がいを持つ人や認知症を患う高齢者に対する、虐待がニュースなどで伝えられている 暴力や汚物を浴びながらの身体介助、少人数の体制の中で「効率」を求められる介護の現場において、まじめにすれば擦り減っていく、他のスタッフから孤立してしまう現場では、真剣に向き合うことをあきらめ、放棄してしまう職員が増えていき、国の定めた人員基準を満たしさえすれば、中身が問われない介護が一部の現場では行われている
おむつ外しを懸命にやって、結果要介護度が低くなり収入が減ってしまう高齢者施設よりも、何もしないで放置して寝たきりを作っていく施設の方が、要介護度が高くなり収入が増える 要介護高齢者・知的障がい者だけではなく、時折虐待が報じられる精神病院においても同様のことがある 効率を求めれば施設は大規模となり、法律順守の名のもとにマニュアル化された介護となり、必要でない事(普段のコミュニケーションとか本作の紙芝居のようなレクレーションとか)は省ていくことになるのだろう 結果社会にとっての生産性が尺度となっていく時代が進んでいくことに、何も私たちはできない 出生前検査の結果によっては中絶を考える人が多い現実なのだから
高齢出産の女性が増えていく中で、私たちが見ようとしなかった現実と対峙すること
親になろうとする人たちが向き合わなくてはならない問題であります
個人的な話しですが、この映画ロケ地は和歌山県北部です 病院・専門学校・大学などを使っているのですが、洋子が買物をするシーンに登場するスーパーは、私が子どもの時から通っていたところ(スーパー松源 西浜店)であり、懐かしさでいっぱいになりました
(10月19日 京都シネマにて鑑賞)