「色々な気づきを与える映画で、「福田村事件」と放映が近かったのも好印象」かかってこいよ世界 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
色々な気づきを与える映画で、「福田村事件」と放映が近かったのも好印象
今年311本目(合計961本目/今月(2023年9月度)21本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))
もっとも、「福田村事件」の作品と放映時期が近かったのは、大阪市のみなのかもしれません(シアターセブン、ナナゲイでは、これに関係して、当時の関東大震災や、在日韓国・朝鮮人を扱う映画が多く組まれています)。
さて、こちらの映画です。
「自分は実は在日3世なんだ」とカミングアウトした男性と、された女性が、それぞれその後に抱いた違和感と、外部からのいろいろな干渉を経て、どのような結論を下すのか、そして、この「在日3世」の層が作った「在日の方が作った」と言える映画を放映する、しないといった「表現の自由(の行使の方法)」vs「映画館の営業の自由」などが一部絡む、憲法論的な解釈が多々できる映画です。
まず、私は大阪市という、在日韓国・朝鮮の方が多く暮らすという大阪市という、ある主特殊な事情を抱える行政書士の資格持ちという立場を理解いただければ幸いです。
この監督の方は映画館上映は初監督となる作品であるとのことで、その事情のもとにおいて、ある意味「特殊な事項」をいろいろ配慮する必要が今現在でもどうしても必要とするといわれる2022~2023年に、このテーマについて触れた点は極めて高いものと思っています。こうした映画はどうしてもミニシアターの中でもミニシアター、つまり、シアター1つか2つかしかない映画館でしか扱われない傾向があるものの(ナナゲイは、シアターセブンとあわせて、実質3つと言えますが)、この映画を、テレワークが終わってから無難に見に行ける時間に合わせていただいたナナゲイさん(シアターセブンさん)には感謝です。
映画の趣旨としては上記の事情から「国籍をどのように取るのか」「国籍が何であるのかは個人を愛する、愛されるについて重要な事実なのか」といったことがテーマになってきます。一方で、在日韓国・朝鮮の方に対してどのような思想を持とうと、それが「内在」にとどまる限り、規制はできません(思想良心の自由は絶対的に保護されます)。しかし、それが表現となって出た場合、他の人権との衝突を考慮して「何を優先するか」を決める必要が生じます。
映画はこのようなある種憲法論的な論点を扱った部分があり、監督さんがここまで考慮されたかは不明ですが、外国人問題に興味関心を持ちアンテナをはる行政書士の資格持ちという立場からは極めて評価は高い一作です。
なお、映画においては、「何が正しく何が正しくないのか」については、ある程度の誘導はあっても解釈を押し付けない構造になっています。この点も、「各自で考えてね」ということであり、その点も高く評価しました。
普段から外国人問題に関心を寄せる方はもちろん、広く人権感覚を高く持っておこうという方にはおすすめの一本かな、というところです。細々といろいろな映画館で少しずつ拡大しているということであり、大ヒット(?)中の「福田村事件」と合わせてみることで「正しい意味」での在日韓国・朝鮮の方に対する理解が広まることをやまない一人です。
採点に関しては以下を考慮しましたが、4.8以上あるためフルスコア切り上げ(七捨八入扱い)です。
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(減点0.1/「即座解雇だからな」)
解雇については「解雇法理」というものがあり「告知弁解の機会を要する」(つまり、一方的に言い放っていきなり何らの言い分も聞かずに処分するのは違法・不法のそしりを免れない」というのが裁判例です(最高裁判例に対し、高裁以下の判例を「裁判例」といいます)。
映画内ではいきなりこの展開になるのがちょっとな…と思ったものの、この点をつつくと映画が0分で終わる事情もあり、仕方なしか…という気はします。
(減点0.1/在日3世について少し掘り下げた解説が欲しかった)
日本では在日3世ともなると、日本人と同じように小学校に行くのが普通になるため、日本語能力は全く問題がない(事実、主人公は映画事務所で働いている)一方、韓国語(便宜上、「北朝鮮語」という語も観念するものとしますが、以下では区別せず)については、家庭によりかなりの差があるといわれます(特段の教育を受けていない限り、韓国語はまったくわからない、という方も3世では少なくないし、「在日韓国語」と呼ばれる、日本語と韓国語がごっちゃになった言語もリアル日本では登場しています)。
この点、韓国語については特段の説明もなく、日本語についても違和感のある表現が一切ないことも上記の事情ですが、このことは一般的に外国人問題(性質上、大阪や東京など、コリアタウンが多くある地域がメインになる)の行政書士の資格持ちは知っていますが、一般常識ではないので、この点は何らか説明が欲しかったです。
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