劇場公開日 2023年10月7日

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「枯れ葉は人生喪失のメタファー」栗の森のものがたり regencyさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5枯れ葉は人生喪失のメタファー

2023年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

知的

『WANDA/ワンダ』、続く『ノベンバー』、『私、オルガ・ヘプナロヴァー』と、クセがありすぎる作品を提供するクレプスキュール・フィルムらしい1本。
イタリアとユーゴスラビアの国境地帯にある枯れ葉だらけの小さな村を舞台に、守銭奴で息子の帰りを待つ老大工と夫の行方を探す女がひょんな事で知り合い、ディケンスの『クリスマス・キャロル』を下地にしたような寓話が展開する。
監督はスロヴェニア出身で、第二次大戦後、貧困と政治的緊張により故郷を去った村民への哀愁・望郷の念を込めたという。とにかく絵画のような画づくりが特徴的で、『ノベンバー』を彷彿とさせる。テルミンが奏でる劇伴も相まって荘厳なムードで進むのかと思いきや、序盤で老大工が興じる「モラ」と呼ばれるハンドゲームの描写が妙に荒々しかったり、シルヴィ・ヴァルタンの『アイドルを探せ』に合わせて踊るシーンがあったりと、掴みどころがない。
枯れ葉はまるで人生の喪失感を表しているかのよう。日本公開は10月との事で、枯れ葉が目立つであろう秋に観るには最適かも。

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