「忖度なしでいうと」ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章 天王寺さんの映画レビュー(感想・評価)
忖度なしでいうと
総評として素晴らしい作りで、作画など気にならないほど良い出来であり、虹ヶ咲らしかった。しかし、やや力不足な感じもした。昨今、グリッドマンやガンダム、ウマ娘など、私にとっての傑作が多かったため、それらに比べるとパワー不足が否めない。無論、虹ヶ咲は三部作なため、三章まで見なければ結論は出せないが、現段階では手放しで傑作とも呼べない。
全体を通してよかった部分はアニメでずっと言われていた「仲間でライバル」を貫き通したこと。ニジガクのみんなもほかの天と小糸もそれに属するストーリーの作り方をしていた。各部員の曲もこれまでの総決算といった贅沢で良い曲だった。それぞれが内心に秘めているイメージをそのまま現実にしたようなMVは何とも素晴らしかった。
各キャラの扱いも悪くなかった。
散々騒がれているかなしずに関してだが、部員同士がぶつかることに対して若干の恐れ?を感じていたしずく。最初に曲を披露したのはその衝突を恐れてからの焦りともとれる。彼方に対して甘えさせていたことも、少しでも「衝突」から目を逸らそうとしていた内心の現れである。
だが、彼方にはそれを見透かされ、彼方はしずくから本音を聞き出すためにあえて甘え、「弱みを見せる」ことで相談に乗ってあげたのだ。
それでもしずくの憂いは晴れなかった。しかし、エマのライブを見て「仲間でライバル」の真意に気付くことができた。
最後にしずくが「ライブに行ってきます!」と言って走って行った際に、彼方は「もうそばにいる必要はない」と判断し、手を振って見送った。決して無意味にいちゃつかせたわけではなく、それぞれの性格を加味したストーリーが味わい深かった。
エマさんは果林の時の経験があったからこそ、果林と同じくある種の「自分に嘘をついていた」天を心配できたのだろう。ただ、強気に出る感じはエマさんらしくない気もする。エマさんと彼方の役割が逆の方がはまり役な気がしないでもない。
まぁしずくに彼方を当てたのはただのファンサービスだろう。
歩夢は他人と争う気質ではない(ただし侑にかかわることは除く)という性格は初期から描かれていたので違和感はなかった。しかし、そこで嵐珠の「尊敬しているからこそぶつかりたい」という言葉のおかげで歩夢もまた「仲間でライバル」の本質に気付くことができた。
歩夢と嵐珠の関係も丁寧に描かれ、これまで二人が行ってきた行動があるからこそあの最高のライブができた。
嵐珠に関しては胸がいっぱいで言葉にするのは難しい。ただ、最後まで嵐珠らしさを貫いたと思う。
キャラの扱いもテーマも実に虹ヶ咲らしくて良かった。
気になる点として、エマ以降のメンバーの方が曲に対する思い入れが深く、序盤のしずくと彼方の曲が「ただ歌っただけ」な感じが大きい。
虹ヶ咲はこれまで一話丸々使ってストーリーを作りこみ、その集大成のソロやユニット曲を披露していた。そしてそれぞれの曲にはストーリーがあるから感情移入ができたし素晴らしく感じた。
しかし、最初に使われた二人の曲にはストーリーが存在せず感情移入ができなかった。どちらかというとキャラ人気と後の絡みで無理やり補填させた感が否めない。無論1時間で5曲入れなければならないので仕方ないなのだが、そこはもう少し丁寧に描いて欲しかった。
それから、スクスタからの反省か知らないがあまりに「波風を立たせなさすぎる」気がした。ある意味アニガサキらしいとも言えるのだろうが、盛り上がりに欠けるとも言える。
総評で70点といったところだろうか。全てを見終わったとき、100点満点だったと言えるように願う。