劇場公開日 2024年3月15日

「驚異の再生回数」変な家 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0驚異の再生回数

2024年10月30日
PCから投稿

この映画版もテレ東の何かおかしいも雨穴さんのオリジナルYouTube動画に劣る。
つまり一介のウェブライターである雨穴さんがつくった映像作品のほうが映画よりもドラマよりも面白い。
オリジナルYouTube動画は2,354万回再生である。(2024/10現在の『【不動産ミステリー】変な家』の再生回数)

とうぜんながら映画には雨穴さんの動画にある、あのまがまがしい気配はない。
なんと言ったらいいのか、因習ある村の土蔵でなにかの死骸を見つけた、みたいな・・・雨穴動画には、模倣できないオリジナリティがあると思う。

さらに雨穴動画には、さいしょはバラバラに見えた事象がじょじょに重なって、最終的にみごとに合わさる筋立てがあるし、栗原さんとのやりとりでちょっと笑いもとったりするが、映画版にそれらはなかった。

映画版は長くてダレる。間宮祥太郎はふつうで川栄李奈は地味な役だったこともあるが精彩を欠いていた。栗原さん役の佐藤二朗のちょっと豆柴シリーズ風の演技だけはよかった。

失敗のポイントはおそらくドキュメンタリー調でつくらなかったこと。
もともと雨穴動画は疑似ドキュメンタリーだが映画はドラマ展開になっている。疑似ドキュメンタリーとはノロイ(2005)や残穢(2015)のように役者がドキュメンタリーの振る舞いをしながらすすむ構成。ナレーションによって進むことと、関係者への取材のようすが描かれるスタイルで(白石晃士のほかの作品はともかく)ノロイは個人的には日本映画50選に入る名画だと思う。
残穢も中村義洋監督の確かな演出力に裏打ちされた怪談だった。ちなみに『劇場版 ほんとにあった!呪いのビデオ100』(2023)は中村義洋監督が演出していて、呪いのビデオ──なんていう旧弊な素材でも中村義洋が演出するとちがうことがよくわかる。unextで見られます。

残穢での竹内結子の落ち着きあるアルトのナレーションを覚えている人は多いと思う。
疑似ドキュメンタリーではナレーターがもたらす恐怖感が大きい。同様に変声がほどこされた甲高い雨穴氏の声は雨穴動画の怖い雰囲気を担っているところが大きい。
ただし映画版では、雨穴動画がもっているそれらの人気の因子・魅惑の要素がことごとく欠けており、特徴のないホラーになっていた。おぞましい顔つきのお面をつかって怖がらせるのも興醒めだった。

雨穴さんはバイラルになったから映画やテレビへ展開したわけだが、雨穴さんがもっている感性が映画やテレビへ巧く変換できなかった、とも言える。
いびつで不気味でグロテスクで、だけどなんか可笑しさもあり、ストーリーだけでなく超ヘンなMVや爪あつめや寄生マトリョーシカや皮膚おりがみのような異形物体の解説動画も繰り返し見たくなる怖さとキモさと面白さがある。あれらはYouTubeだから成立しえた、というのはあるかもしれない。

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津次郎