ロスト・キング 500年越しの運命のレビュー・感想・評価
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シェークスピアがリチャード3世の真実を歪めた訳では無い。 かなり辛...
シェークスピアがリチャード3世の真実を歪めた訳では無い。
かなり辛辣で差別的な表現をリチャード3世に対して、シェークスピアはとっているが、フィクションとして描いている訳であるし、宗教改革前のデフォルメとアイロニーを描いていると感じる。それは戯曲として見れば一目瞭然。しかし、
日本で言えば、忠臣蔵の吉良上野介みたいに偏見で鑑賞者は見てしまう。なぜなら、その方が主旨が通るからなのだ。
さて、
リチャード3世に限った事でなく、歴史は一人の創作者や作家の個人的な意見で判断してはいけないと思う。
例えば、明治維新に付いてもそう言えるのではないだろうか。
面白かった。 でも頭に来た。 正当に評価されなかったり意見を軽んじ...
面白かった。
でも頭に来た。
正当に評価されなかったり意見を軽んじられたり、
結構イライラした。
感情が見えるのよくないとか、女性に言うのもよくあるけどむかつく。
アマチュア歴史家の人たちに聞いてまわるところワクワクした。
発掘調査の場面、
情報を集め精査して出てくる予想は掘り起こして何か見つかった時点で実績があるのに、信頼されずもどかしかった。
すでにある、今の時代に残ってる情報をまとめた彼女の情熱はすごい。
今までの歴史家も同じ情報を集めることができるのにやってなかったのは情熱がなかったから。
リチャード三世への悪いイメージと興味のなさがあったよう。
シェイクスピアも「フィクションなのにみんな真に受けすぎ」と思ってるかも。
自分の書いたものが意見の根拠にされてもそれ創作なんだけど…って。
数年前発見したニュースを見た覚えがあって、女性が駐車場で見つけたのを知ってたから、少し先がわかって見てた。ちょっと自分でネタバレがあったのが残念。
実話に基づく歴史的の発見の裏に。
持病のせいで不当な扱いを受けていた女性がたまたま観たシェークスピア劇に触発されて、歴史の常識にとらわれない持論をもち、それを解明していく。
歴史に完全な素人にも関わらず,これほどの調査と行動力を発揮できるものなのか。
空想の王様が出てきて,導いてくれたり共感してくれたりの演出もとても面白かった。
そしてこの大発見の裏に、大学という権力が汚らしく存在するあたりも、すごく説得力があった。
彼女が子供たちに語る歴史は,きっと夢と希望に溢れてると思う。リチャード3世、嬉しいだろうなぁ(笑)
正当に評価されなかった人たちの、回復のはなし
リチャード3世の遺骨発見という偉業を成し遂げたのは、実はひとりの在野のリチャード3世研究家の中年女性だった、華々しく自らの功績として発表したレスター大学ではなく。
(レスター大学は、発掘や分析という専門性のあるところを担ってはいるが、プロジェクトの発起人であり、発掘すべき場所を特定し、発掘のために奔走し、資金集めまでしたのは彼女で、許認可等のために便宜上の主体者はレスター大学だったかもだが、レスター大学は彼女をスルー、事実上功績を横取りしたんですよ!)ということを、世に知らしめる。これがこの映画のキモだったのではないかと思った。
ラストにフィリパが言ったように「正当に評価されなかった人たち」が回復される物語だったと思う。
エンドロールで、フィリパの功績が王室に認められたようなのを確認して溜飲が下がった。(下がったのはおそらくレスター大学の評判も。)
大きな力をバックに他人の実績を横取りする行為はよくあって、取られたほうが泣き寝入りになるのがほとんど。そういうものを許したくない、一矢報いたいという反骨精神みたいなものを、この映画から感じました。
しかもこれ、英国国営放送、BBCの制作、という。
サリー・ホーキンスは儚げでエキセントリックで、浮世離れしているような感じがあり、半魚人とかリチャード3世のイマジナリー・フレンドとかと親しくても違和感がない。
内向的で他人に対して控えめ、弱気なようだが、他人が絡まない自分の世界がその分強くて、それが偉業を成し遂げる原動力になったよう。
(イマジナリー・フレンドのリチャード3世は、彼女の重ねた思考を整理したり、意味づけたり、次の行動を示唆したりと、おそらく彼女自身の脳内活動が、リチャード3世の姿で出現したものと思う。)
フィリッパがリチャード3世にハマったのは、多くの共通点があって、リチャード3世の名誉回復に自らを重ね合わせたようなのがよく分かって説得力があった。
離婚したが結局戻ってきた元夫、そして二人の息子たちの温かさが心地よく、家族の物語でもありました。
イギリスは、種々、アマチュア研究家に伝統があり、層が厚いようで、時には専門家も及ばないような歴史的偉業を成し遂げることもあるというのが面白い。
階級社会がゆえに、専門の研究職につくなどありえないが知識欲を満たしたい人たちが多いのかも。会合などは、参加者はフラットな関係のようで、そこも良い。日本だったら上下関係や序列ができがちですよね。
そして、趣味や推しへの情熱は何よりも強し、と実感しました。
推し活は楽しい♥️
「究極の推し活」🤩
フィリッパ(サリー・ホーキンス)が仕事を
辞めてまでのめり込んだ理由が
シェイクスピアの観劇とは思えないのだけども
何事も確固たる意思のもと行動すれば
思いは伝わって、物事は動かせるんだって
希望をもてる感じだけど
結構ご都合主義だなぁとも思う(笑)
そんな邪な思いはその辺に捨てて観れば
微笑ましさと、頑張れ!!って言う応援とで
胸熱くなりました😍
若かりし頃のイケメンリチャード三世が見えて、
会話もできるって言う設定は、ファンタジー過ぎて
フィリッパがメンヘラに見えちゃうのは観る人によっては批判的になりそう。
まぁ、ポスタービジュアルがあれなので予想は出来るけど🤣
終盤の大学側とのいざこざ
名声を欲しがるあいつムカつくーっ💢
わかってくれる人がいるならそれでいい。っていうきれい事は言いたくないわ、ったく😤
【”障害や病気による人格や能力を低評価するのは間違っている。”せむしであった事により、簒奪者の悪王とされていたリチャード三世の遺骨を、自らも障害を持つ女性が発掘するファンタジック要素も絡めた物語。】
ー 今作でも描かれているように、リチャード三世は1485年にボズワースの戦いで戦没したヨーク朝最後のイングランド王である。
その後、シェイクスピアの戯曲によりヨーク朝の後のテューダー朝の敵役として、稀代の悪王として500年もの間、簒奪者として誹られて来た。
だが、今作でも登場する”リチャード三世協会(リカーディアン)”と呼ばれる人々も、全世界に居たのである。
そんな中、フィリッパ・ラングレー(サリー・ホーキンス)は持病である筋痛性脳脊髄炎を理由に、職場で正統な評価を得られないでいた。
シェイクスピア劇を偶々観た彼女は、自身とリチャード三世の不当な境遇を重ね合わせ、リチャード三世の真実を明らかにすべく、500年行方不明になっていた遺骨発掘のプロジェクトをレスター大学、行政に掛け合い立ち上げるのである。-
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・正当な評価を職場で与えられないフィリッパ・ラングレーを演じたサリー・ホーキンスが、執念で大学の歴史教授や行政に単身乗り込み、想いを伝えようとする姿が印象的な作品である。
彼女は薬を飲みながら、一部の大学関係者や行政関係者が彼女を軽んずる中、リチャード三世協会の人達と心を通わせて行く。
・そんな彼女の姿を見て離婚していた夫ジョン(スティーブ・クーガ)(何故か、同居している。不思議な関係である。)や二人の息子達も協力していくのである。
ー ジョンは彼女と別れ、車を売る方法を息子達と話すのである。そして、フィリッパ・ラングレーが資金難に陥った際に立ち上げたサイトに提供された2000ポンドの”名もなき人”からの寄付。-
■今作が面白いのは、発掘劇の中に度々登場するリチャード三世(ハリー・ロイド)の姿である。時に彼女の邸宅の中の椅子に背中を向けて腰掛けて居たり、リチャード三世が投げ捨てられたとされる川の欄干に立って、背中から落ちたり・・。
そして、フィリッパ・ラングレーが様々にリサーチを行う中で、”駐車場のRという字が書かれた場所”に立った時、リチャード三世は白馬に跨っているのである。
上手い演出である。
・そして、見事に彼女が確信した”駐車場のRという字が書かれた場所”から発掘されたリチャード三世の遺骨。背骨が曲がっている事と、彼の子孫達のDNAから本人と証明されるが、彼女ではなく大学側がメインで賞賛を受けるのである。
ー 大学側は公の場で、彼女はレスター大学を一度は馘首されながらも博士になった大学側で唯一真実を知るリチャード・バックリーが講演を依頼しに来た二人の女の子に”あの人が良いよ。”と彼女を勧めた学校でスピーチをする。
彼女の表情は誇らしげだ。
彼女の目的は名誉ではなく、簒奪者として誹られて来たリチャード三世の名誉回復だからである。
更に言えば、家族が再結束した事もあるであろう。-
<その後、彼女の功績が正式に王室から認められ、リチャード三世は正式な英国王として認められるのである。王室の紋章と共に。
今作は、歴史好きには堪らない、実話であり且つ”彼女の物語”なのである。>
<2023年11月5日 刈谷日劇にて鑑賞。>
実話をもとにした作品としては…
ストーリーは実話をもとにしていることもあってよかった。
個人的には演出が多少過剰だったように思う。
主人公にリチャード3世の幻影をみせるなど
ファンタジーすぎてあまり好きではなかった。
リチャード3世が歴史上、正く評価されなかったのと同じように
無名の発掘者は権力の陰に隠されてしまうところが
人間は昔から変わらないんだな、とある種、無情な話だなと感じた。
"簒奪"
今作品を鑑賞する前に、何かを検索(多分、『パリピ孔明』かな?w)した際、偶々検索結果欄に題名の熟語が出てきて、セーブしたのだが、まさか、今作でこれが引用されるとは、中々の偶然である
シェークスピアも碌に読んでいない自分からすれば、予習の膨大さを考えれば避ける案件の作品だろう しかし、歴史的に大悪党とされている人物が実は間違った解釈をされているのでは?という経緯は、古今東西歴史家に拠って次々と定説が覆されている昨今である 日本に限らず世界中の偉人も然り そう、今作は正に"人"は多面性を持った人生を歩んでいる、そして評価はその評価した人間の属性によって如何様にも捻じ曲げ、阿るものであるという事実を改めて白日の下に晒す内容である と、同時にその手柄を如何に掻き攫うかを描いた事も重要なプロットである
他作品のレビューで、観賞していないのにあたかも観賞したかのようなレビューをアップしてみた的なものを読んだが、正に上記の内容は、そう思われても仕方がない薄い文章に情けなさこの上ない いや、きちんと観賞しているのだが、そもそも実際の出来事のストーリー故、確かにネットで調べれば誰にでも一通りの感想文が書ける
そのジレンマに苛まれつつ、別に金貰っている訳ではないとの開き直りで続けてみようと思う
駐車場に"R"の道路標示(本当)や、実は8年も調査に費やした等々、現実と映画の誇張はその虚実皮膜故、演出なのか事実なのかのところに心が持って行かれるのが常だ 興醒めする事への恐怖とそれに伴う経済的損失、そんなみみっちぃ、しかし大事な懐具合に逡巡する心の狭さはこの際、しっかり捨てるべきと心に刻みながら・・・
リチャード三世の幻影を具現化し、二人三脚で亡骸を探すという過程はエモーショナルを掻立てられるのだが、終盤の大学や自治体の"簒奪"の件は、そのやり口の急ぎ足の説明では理解出来なかったことが唯一の残念な部分である あの部分が今作のキモだったのだろうし、其処をどうやってちゃぶ台を返し、キチンと家紋を掲げる事が出来たのかの部分を描いてみせて初めてマスターピースは嵌るのだろうと思うのだが・・・
確かに遺骨を探す事と、本人の史実はまるで関係無い そこを補強するのは歴史家であるのだが、多種多様な『ファクトチェック』の末の結論に結びつかなければならない そのチェックは歴史家に留まらず、市井のアマチュアにもその発言に門戸を開く事が肝要なことな言うまでもない そして何より大事な事は、"掠め取る"卑しさは、こうして作品に残ることを権力者は努々忘れるでないと、口酸っぱく言い続けること この努力なのだろう
知的好奇心を擽る作風にファンタジーと仄かにオカルト要素がバランス良く育んだ素敵な作品♪
映画館で予告編を観た時から、観たい!と思っていた作品を鑑賞しました。
で、感想はと言うと…面白い!
実話を元にしているが、そこにファンタジーテイストも加えていて、素敵な作品になっている。
それでいてクライマックスのリチャード3世の遺骨発見は事実に基づいた描写がされていて何処かオカルトチックでもあり、単にヒューマンドラマと言う括りでは言い切れない面白さがあります。
主演のサリー・ホーキンスは好きな女優さんで「シェイプ・オブ・ウォーター」が有名ですが、個人的には「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」の主人公モード・ルイス役が印象的。
ちょっと影があると言うか、何処か病に悩まされていて、報われない感じの役の印象が強く、今作でも筋痛性脳脊髄炎を患っていて不当な扱いを受けている人物を演じている。
でも、今作ではアグレッシブかつ割りと若々しく見えるんですよね。
リチャード3世は英国では遺骨が不明で発掘されるまでは醜悪な悪人と言うイメージをされていたが、それも歴史家の証言やシェイクスピアの戯曲のイメージが大きい。
そこに自身の重ね合わせ、不当を覆す為に真偽が定かではなかったリチャード3世の遺骨を発掘する。
それも駐車場のコンクリートを剥がしてもそんなに深い所では無かったのなんてなんかビックリですが、いろんな事が勉強になります♪
500年以上も遺骨が見つからず、ましてや様々な研究家がこうであったと結論付けたリチャード3世の歴史に真っ向から異論を唱える根性も凄いが、それを覆そうとする行動も凄い。もうこれは完全にリチャード3世愛としか言いようがないくらい。
日本で言えば、織田信長の遺骨を発見しようとしているようなもんでしょうかw
実際にリチャード3世の遺骨を発掘するのに辺り、直感と言うか何か感じる物があって発見したと言うが、それを説明するのって凄く難しい。
でも、駐車場の真下に遺骨があるなんて直感としか説明のしようがないと思うんですよね。
その辺りが「事実は小説よりも奇なり」でこんなことってあるんだ~と感心と言うかビックリ。
それをリチャード3世が自分の周りに現れてと言うアイデアはシンプルかつナイスアイデア。
なので、劇中でもフィリッパ以外は誰も見えないのが凄く面白い。周りからすると独り言を話す不気味さがあるがリチャード3世が見えているとコスプレにも見えるし、時折馬に乗って現れるw それがコミカルなんですよね。
周囲の理解がなかなか得られなかったフィリッパの行動が徐々に周囲に認められ、支援金も集まり、発掘作業に入り、遂にリチャード3世の遺骨を発掘するが多少の支援金を援助したレスター大学が我が物顔で自分達の手柄にするところはとても胸糞。
また仲間だと思っていた考古学者のリチャード教授も自身の大学復帰を絆されて、大学側の加担してしまう。
心情的にはフィリッパ側に付いているが完全にレスター大学側。
事実を元にしているので、劇中で大学側に天罰が下される件りは無いんだけど、正直“ここまで大学側を悪者にしても良いの?”と思ってしまう。
事実であったとしてもここまで悪者扱いされたら大学側の面目丸潰れ。実際に上映に当たっては訴訟寸前まで行ったらしいけど、レスター大学側も何処か後ろめたいと感じているところがある感じ。名誉は大学側で世の認識と真実はフィリッパ側と言った感じっぽい。
劇中でもラストで大英帝国勲章を授賞したとの事で報われた感はあるけど、レスター大学側は華々しくパーティーに参加して、フィリッパは講演呼ばれている対比はどっちが良いかと言えないけど、やっぱり切ないなぁ。
前半はいろんな事から屈折した感じで別居中の夫とも上手くいってなく、子供たちとも何処か距離がある。
そこからリチャード3世の名誉回復に遺骨発掘を試みるが、その行動に家族が振り回されていて正直ワガママにも見える。もうスティーブ・クーガン演じる夫のジョンの懐の深さを感じますがここまで善人だとちょっと出来すぎ感があり、ジョンの善イメージとレスター大学の悪イメージの振り幅が広すぎますねw
ラストでシェイクスピアのリチャード三世でリチャード3世を演じたピートとの出会いが良いんですよね♪
事実を元にしたヒューマンドラマでありながら、ファンタジー色もあり、何処かシニカル。少しオカルト的でもありますが勉強にもなる。
何よりも2時間内で収まる上映時間でテンポ良く進むのま良い♪
ミニシアター系の作品ではかなりお勧めの作品なので、ご興味があれば是非是非!
500年の時をこえて 響き合う2つの魂
病気持ちで昇進させてもらえない、夫と別居中の主婦フィリッパ。周囲から理不尽な扱いを受け不遇な人生を送る、という点で、悪名高きイギリスの王・リチャード3世と自分の人生を重ねあわせ、なんと彼の遺骨を発掘するというびっくりストーリー。実話がベースと聞いてさらにびっくりです。
自分の意見も言えなかった彼女は、発掘協力のために大学や役所で雄々しくプレゼンします。バカにしていた夫や子供も最後には応援するように。
フィリッパに遺骨を発見されたロスト・キングは、汚名返上し救われますが、フィリッパもまた、遺骨発掘を通して成長し救われていきます。
フィリッパは、学識者の反対を押し切って、自分の直感を信じて発掘し、それがドンピシャに当たります(創作かもしれませんが)。爽快と同時にゾッとしました。
フィリッパがリチャード3世の劇をみて魂を揺さぶられてから、500年の時をこえて、王の魂を引き寄せちゃったんだろうな〜と感じました。
主演のサリー・ホーキンスの演技、脚本・演出が光ります。実際に発見して歴史を塗り替えたという事実も、ストーリーに重みを与えます。
予想外に面白かったです!オススメです。
真価を発揮できずにいた人の物語
主人公のセリフがなんだか自分の今の状況に刺さるところがあってそこから妙に気になり出して休暇を利用して観た映画。
サリー・ホーキンス演じる主人公がとある演劇を見て、リチャード3世に関しての歴史的な間違った誤解を解こうとする話。
事実に基づいて作られたこの映画について、いいと思うところがたくさんあったが中でも劇中のセリフに心に残るものがあった。
この映画のラストで主人公は豪華な祝宴の誘いを蹴り、子供たちに真実を教えるための講演を選ぶ。
そこで「これは人生で正当な評価を得られず、真価を発揮できずにいた人の物語です」と説く。
それはリチャード3世のことを指しているが、また主人公自身でもあって、更にはこの映画を観ている人の中で現在の状況にもがき苦しんでいる人たちへのバトンでもあると感じた。
この映画を鑑賞できてすごくよかったと思う。
色んな不安や不利に負けずに自分の直感に従って行動したこの実在するフィリッパを心から尊敬する。
エンドロールに流れた女王から勲章を授与された事実がまた映画に爽やかな後味を残していると思う。
自分の心の声を後回しにしてしまっている自分を含めて同じ境遇の人にぜひおすすめしたい映画。
中年女性エンパワメント映画
リチャード3世役の人、ゲームオブスローンズのヴィセーリス・ターガリエン役の人だって。
考古学者のリチャードが、ゲームオブスローンズのロバート・バラシオン役だったのは、既知で観たけど、ヴィセーリスには気づかんかったなぁ。
あの愚かなヴィセーリスが、見事なリチャード3世を演じ、かわいい娘を抱っこする素敵パパ俳優を演じていたなんてねぇ。
フィリパの持病が何なのか、よくわからなかったのと、リチャード3世の研究に夢中になって仕事に行かなくなったのが、ちゃんと病気休職的なことにしたのか、無断欠勤なのかわからなくて、混乱したのが、引っ掛かりポイントでした。
その他は楽しく、フィリパを応援し、リチャード3世の謎を追いました。
学位のない在野研究者で45の女であるフィリパは、各所で軽んじられるわけです。何とか大学の担当者とか、考古学者のリチャードとか、“権威ある”歴史家とか。
予感で第一溝を掘りすすめてくれ、との要望に、え?となる考古学者の気持ちはわかって、私も同じように根拠ないやんって言ってしまうかもって思った。
でもこれが男の依頼だったら考古学者の対応は、あんなにつっけんどんではなかったはずとも思った。
そして大学の関係者(あいつもリチャードちごたかな?)が、企画を鼻で笑ったくせに、お金も大して出してないのに、手柄だけ取っている姿が、醜悪だった。
ラスト、キラキラしたパーチーに、フィリパは出席せず、フィリパは中高生くらいの女の子を前に自分の物語を語るのですが、ある種の達成感と、ある種の落胆を覚えました。
リチャード3世の幻覚が見える表現が、好ましくおもいました。
また、別居してた夫が息子らとBMWを売って安い車に買い替えて、差額をフィリパの活動に寄付した件は、すごく良かったです。
翌日に『バーナデット ママは行方不明』を観に行ったのですが、2作とも中年女性エンパワメント映画です。
500年後の真実
個人的にシェイクスピアの戯曲に登場する悪人の中で、最も魅力的なのがリチャード三世だと思っている。
コンプレックスの塊であり、目的を遂げるためには手段を選ばない残忍な性格。
癇癪を起こすような幼児性がありながら、計算高く、何故か女性たちが抗うことを諦めてしまうような魔力を持った人物でもある。
もちろんこれがシェイクスピアの創作したリチャード三世像であることは承知している。
あくまでこれは歴史劇であり、史実ではないのだから。
それでも世間一般のリチャード三世に対するイメージは醜くて残酷な悪人といったところだろう。
そう考えるとリチャード三世にとっては不不名誉なものであり、シェイクスピアは随分と罪深いことをしたのかもしれない。
実はリチャード三世は我々のイメージとはまったく異なる人物だったかもしれないのだから。
真実は時の勝者によって作り替えられるものであり、リチャード三世は戦いに破れたのだ。
これはリチャード三世の王位簒奪者という不名誉を晴らそうとする一人の女性の物語だ。
考古学とは何の繋がりもないフィリッパが、リチャード三世に異様なまでに執着していく過程が面白かった。
むしろこれはリチャード三世の真実ではなく、フィリッパという女性の生き方にフォーカスを当てた物語だ。
まず彼女は筋痛性脳脊髄炎という病気を患っており、社会的に正当な評価をされていない。
彼女には二人の息子がいるが、夫とは既に別れて別居状態にある。
しかし夫のジョンは今でも子供たちの世話をしたりと、献身的に家族に尽くしてはいるようだ。
ある日、彼女はシェイクスピアの『リチャード三世』の舞台を観て、演じる俳優の姿に惹き付けられる。
そしてリチャード三世の作られたイメージに疑問を持つようになる。
すると彼女の前に舞台で演じた俳優の姿のままで、リチャード三世の幻覚が現れるようになる。
彼女はリチャード三世について調べるうちに、彼の遺骨はどこにも埋葬されずに行方不明になっていることを知る。
彼女は自分が彼のことを見つけるのだと固く決意をする。
正直、どうして彼女が幻覚に取り憑かれ、リチャード三世に執着するようになったのか理解するのは難しい。
これはもうリチャード三世が彼女を呼び寄せたとしか思えない。
彼女自身もずっと目に見えない何かを探し求めていたようだ。
そしてフィリッパはある社会福祉施設の駐車場の下にリチャード三世が埋葬されていることを突き止める。
遺骨を発掘するためには様々な協力を得なければならないが、感情的に話す彼女の言葉をほとんどの人間が論理的に理解することが出来ない。
フィリッパ自身も大きな力によって導かれているのであり、直感でリチャード三世がここに眠っていると信じてもらうより他に説明が出来ないのだ。
それでも熱意を持って直向きに働きかければ、必ず心を動かされる人たちはいる。
最初は彼女の言葉を受け流していたジョンも、彼女の息子たちも、そして同じリチャードの名を持つ考古学者も、ついには彼女の熱意に心を打たれ、彼女を援助するようになる。
彼女の直感によりリチャード三世の遺骨は発掘されるが、彼の名誉を挽回するまでには至らなかった。手柄を横取りしようとする大学側の姿勢など、名声に目が眩んだ人間の愚かさが目についた。
最終的にはイギリス王室から、リチャード三世が正当な王と認められたことでフィリッパの願いは叶ったことになる。
本当のリチャード三世が善人だったのか、悪人だったのかは分からないが、もし悪人だったとしても500年という月日は人の行為が許されるには十分な時間だともいえるのではなかろうか。
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