「心に潤いを与え、知的好奇心を満たしてくれる秀作」ロスト・キング 500年越しの運命 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
心に潤いを与え、知的好奇心を満たしてくれる秀作
歴史というものは支配者の思惑によっていくらでもねじ曲げられるわけで、敗者の王たちは、自分とあまりに異なる虚像が広がろうとも、泣き寝入りするしか術がない。誰かが奇跡的に真実を掘り起こしてくれぬ限りは・・・。一人の女性がふとしたことでリチャード3世に興味を持ち、自らの信念を貫いて固定化した歴史を覆そうとする本作をとても面白く観た。人は物事や人物を枠にはめたがるもの。職場や家庭内でついつい枠にはまってしまいがちな主人公が、英国史に残る悪王として烙印を押されたリチャード3世に惹かれ行く様は、突飛な展開ながら無理なく納得してしまうユニークさがある。凝り固まった常識や権威主義の眼鏡を外し、濁りない眼で真実を見極めようとする役柄をサリー・ホーキンスが嬉々として演じていて、観ているだけで微笑ましく、元気をもらえる。夫役のスティーヴ・クーガンは共同脚本も担当。知的好奇心を満たす充実した内容に仕上がっている。
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