劇場公開日 2023年9月22日

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「時空を超えた推し活に泣いた」ロスト・キング 500年越しの運命 頼金鳥雄さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0時空を超えた推し活に泣いた

2023年10月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

知的

学者でも著述家でもない一般庶民の女性が、イギリスでも屈指の暴君とみなされているリチャード三世の名誉回復と遺骨探しに奔走するお話。

旧Twitter、現Xで見たのか、別のSNSだったか…。「推し」との出合いは運命なんかじゃない。人生の分岐や、停滞期に心に刺さったものが「推し」になるのだ…という意見を読んだことがあります。主人公のフィリッパも、ものすごく不幸ではないけど、うまくいかない毎日です。そんなモヤモヤのさなかに、自分に似た境遇のリチャード三世を「発見」し、彼にかかわっていくこととなります。

映画は悪役がいないと盛り上がりません。だからおおげさに脚色したのか事実なのか。「だって、シェイクスピアが悪役として書いたんだもん。だから悪い奴のはずだもん」みたいなノリの歴史学者が出てきました。学者なのにそんな曖昧な根拠でセミナーやっていいの?それ以外にもフィリッパを一般庶民と侮る自治体職員や大学関係者がたくさんいて、この環境でよく心折れずに頑張れたなぁと感銘を受けました。

作中ではリチャード三世の幽霊なのか幻覚なのか判然としない存在が現れます。彼は劇中劇でリチャード三世を演じた役者の顔をしているので、どちらにもとれます。でも私は本当のリチャード三世の幽霊だと思いたいな。

いろいろあって、全てが彼女の希望通りになったわけではないのですが、最期のシーンのフィリッパはとても美しい笑顔でした。「たとえわずかでも理解者がいるなら、それでかまわない」という誇り高いメッセージのように感じました。日夜理不尽と戦っている、市井の人々をたたえる映画のような気がします。

頼金鳥雄