「猫のシーンはやめて欲しい」イノセンツ Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
猫のシーンはやめて欲しい
幼い頃には生と死の事などは漠然としか分からず、それが昆虫など自分より弱い者へ流れてしまうこともある。人はそうして成長していくのだと思うが、本作に登場する子どもらはそれと同時に不思議な力を見出してしまうのである。本作で描かれるのは「無自覚な狂気」であり、それが一番怖いものだと改めて感じた。
初めこそイタズラ程度だったものが次第に狂気を帯びて来るようになる描写は何とも言えないリアルさがあって怖かった。その興味本位から生まれた狂気の矛先が猫に代わり(このシーンが猫好きには非常に不快である)、挙げ句の果てに人に行ってしまうという重いテーマの作品なのである。
物語にはそれほど大きな起伏も無い様に思えるが、平坦にも思える映像が彼らの心情だと思うと尚更怖い。 本作の注目すべきはメインキャストを演じた子役たちだ。主人公の障害を持った姉と、段々と狂気じみてくる少年、特にこの2人の動向から目が離せなくなる。彼らには退屈な夏休みという事しか共通点は無く、それが絡み合ってここまでの事態に発展するとは誰が想像しただろうか。舞台は日本で言う団地の敷地内のみ、能力の発端等も不明、子ども目線で全て描かれるという閉鎖的とも言える条件で良くここまで広げられたと思う。世間一般どこかヒーロー映画疲れが言われている昨今、そこに一石を投じる映画なのかもしれない。
コメントする