「猫は死にます。しかも序盤に(ジョバンニ)。」イノセンツ 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
猫は死にます。しかも序盤に(ジョバンニ)。
夏休みにノルウェー郊外の団地に引っ越してきたイーダと知的障害を持つ姉のアナ。
意思疎通が図りづらいアナと遊ぶのがつまらないイーダは超能力が使える地元の少年ベンと出会い、姉を放置して2人で遊ぶようになる。
一方で、アナに近寄ってきたのは心を読むことの出来る少女アイシャ。
特殊な能力でコミュニケーションを取れることを知った4人の子供たちは秘密の遊びを通して仲良くなっていく。
しかし、子供たちの無垢な感情は次第に暴走を始め……
いや、面白い。
まずポスターからしてセンスを感じる。
力が反転した世界、子供が純真だとか力が弱く儚げな存在だとかそんな常識を180度ひっくり返してくる、とんでもない映画。
子供の純粋な悪意、本能的な残酷さが描かれるが、それが人間、動物として本来の姿なのかもしれない。
この残酷さは罪ではない。だからこそ厄介だ。
大人が絶対踏み入ることのできない子供だけの世界は、一見非科学的で空想の世界のようにも思えるが彼らにとっての現実だ。
力が弱くまだ世界を知らない子どもたちだからこそ、超能力という最強の武器を手にしてしまえばもう誰にも止められない。
この映画の何がすごいって描写のリアルさ。
つい最近成人した自分の中でさえ子供の頃の経験や感覚は忘れてしまっている部分が大きい。
しかし、この映画を観ている間だけははっきりと幼少期の感覚を思い出すことが出来る。
子供が作っているのではないかと疑ってしまうほど子供の感覚で作られたスリラー映画。
それでいてカメラワークや音楽などどれを取っても良い。
またホラーやスリラーの一面だけではなく死や命について呆気なくも丁寧に描いているのも印象的。
緊迫感の張り詰めるシーンと少し心が温まるようなシーンが交互にやってきたりして感情ジェットコースターだった。いい感じに思いっきり疲れた。
様々な解釈の出来そうなラストシーンも必見。
作品全体の余韻も凄く、鑑賞後に色々と深め甲斐がありそう。
北欧ホラーは一見どれも一辺倒に見えるが実際鑑賞すると全く違う顔を見せる。
観るか結構迷っていた作品だったが観れて本当に良かった。
静かな街で繰り広げられるサイキックバトル。
どのキャラクターも責められないし、逆にそこまで好きにもなれないんだけど(子供たちの演技力は素晴らしすぎる)、唯一好きだったのがアイシャのお母さん。
幸せになって欲しかった……😢