劇場公開日 2023年7月28日

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「あの4人であることの意味」イノセンツ kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5あの4人であることの意味

2023年8月8日
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鑑賞方法:映画館

子どもの無邪気な暴力性や残虐性ってたまに題材にされるテーマ。子どもたちが持つモラルみたいなものは不安定で脆いものだったりするところが怖いし切なくなったりする。本作はそこに超能力がからむから個人的には見逃せない。
登場する4人の子どもは、移民系が2人、それと引っ越してきたばかりの姉妹(姉は自閉症)という構成。それぞれの家庭で何かしらの問題を抱えているというやつ。バカンスで不在となっている家族が多い中、団地に残っていた彼らが知り合い仲良くなっていく設定が絶妙。それぞれ孤独だった4人が関係性を深めていく過程は、子どもたちの成長物語に見えて、ちゃんと不穏でホラーな雰囲気も出しててバランスがいい。
あの年代だと虫の羽をむしったり、蟻の巣に水を入れたりした経験を持つ大人も多いだろう。それくらい遊びの延長で虐待やいじめが行われてしまうということ。さらにあんな能力を持ってしまったらエスカレートするのも当然の流れかもしれない。ベンの母親のことを考えるとあの生活と4人の関係が破綻するのはそう遠くなかったよなと思ってしまう。出会いがもう少し歳を重ねてからだったなら、なんて妄想もしてしまった。そんなことを考えるくらい4人ともとても演技が上手なことに驚く。そうだよ、この子たち演技してるんだったって最後に思い出した。
ホラー的な怖さももちろん見せてくれたけど、それよりも切なさを感じてしまったのは私だけではないんじゃないか。あの年代の少年少女の関係性もまた不安定で脆いということなんだな。超能力ものとして楽しみにしていたのにこんな切なさを感じる映画なんて!

kenshuchu