「映画史的に貴重な状況を、当事者の監督自身が撮影していたという、いろいろと興味深い一作」リヴァース・アングル ニューヨークからの手紙 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映画史的に貴重な状況を、当事者の監督自身が撮影していたという、いろいろと興味深い一作

2025年5月10日
PCから投稿

上映時間約18分とごく短く、短編映画というよりも映像メモという印象が強い内容だけど、それでもヴェンダース監督的、としか言いようのない画面構成には、「もう映像作家としてかなり仕上がってたんだなー」と実感させてくれます。

何気なく映っているのがフランシス・フォード・コッポラだったりとか、映画史的にも貴重な映像を含んでおり、そういった意味でも面白く、かつスリリングな作品です。

ヴェンダース監督はこの時期、コッポラ制作で後に代表作の一つとなる『ハメット』(1982)を撮影するのですが、両者は映画の方向性を巡ってたびたび衝突しており、その撮影中断期間中にもう一つの代表作、『ことの次第』(1982)を完成させた、という経緯があります。本作はそうした過程で監督自らが『ハメット』制作の舞台裏を捉えています。

当のコッポラ監督も、プロデューサーとして決して安泰だったわけではなく、『地獄の黙示録』(1979)の製作は何年も泥沼にはまり込み、ようやく完成させたものの、次作の『ワン・フロム・ザ・ハート』(1982)で再び苦境に陥り、破産を目前にした時期でした。

そのような事情を頭に入れて本作を観てみると、なるほどヴェンダース監督とコッポラ監督との間の会話にどことなく緊張感を感じ取ることができます。

ただそんな苦境すら糧にして、二人とも後に映画界の巨匠に上り詰めるのだから、やはり彼らのしたたかさと執念は尋常じゃないなー、とも実感しました!

yui
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