「俳優あの、の、ポテンシャル。」鯨の骨 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
俳優あの、の、ポテンシャル。
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現代人の孤独とテクノロジーとの関係を、こねくり回した設定で描いているようでいて、どこかしら悲壮感が薄く、そこはかとなく可笑しくて、暗い話のはずなのにヌケが良い。そう思っていたら、終盤は本当にコントのようなシーンがあって、ああ、やはり笑っていいんだと安心した。
蠱惑的な謎の少女、という体で登場するあのの演技が驚くほどよい。個性の強い元アイドルを連れてきて、天然を活かして演技をしてもらった、というレベルではまったくない。与えられた台詞にちゃんとニュアンスをのせて、正確に、それでいて慣れたり飽いたりせずに声にすることができる。そんな感じなのは、ミュージシャンであることも関係してるのだろうか。それでいて終盤には、カリスマ性が抜け落ちたような凡人の風情に変わる。
『ドライブ・マイ・カー』の脚本で名を上げた形になっている大江監督だが、独自の個性と方向性を持った監督であり、俳優あののポテンシャルを引き出した点でも大きな功績といっていいんじゃないだろうか。
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