違国日記のレビュー・感想・評価
全192件中、41~60件目を表示
表面上を漂うような
人と交わるためには、自分を持つこと
瑞々しい! 私は私、あなたはあなた、という愛情のスタイル
これは良かった。
小説家の主人公が、事故死した姉の娘を引き取り、共同生活が始まる。「私は姉が心底嫌いだったので、あなたを愛せるか分からない。でも一緒に帰ろう」と手を差し伸べる。
仕切りのある愛、といいますか、私とあなたの境界をなくして、飲み込んで行くような愛ではなく、私は私、あなたはあなたという区別は、尊重したままの愛情のあり方(あるいはその模索)を描いて、心地よい。
言葉にできることはする。でも、できない事や、したくない事は、はっきりとできない、と言う。それは私の領分だから。一見、ぶっきらぼうでクールに見えるけど、その距離感が良い。
原作の漫画は、台詞と余白、という感じだったが、映像になる事で、思いっきり瑞々しい方にふれている。可愛すぎる。
引っ込み思案は親の影響なのか
サイコーです、だった
『夜明けのすべて』並にめちゃくちゃ良い。尺もそこそこあるし、このホームドラマっぽいのにシネスコか!と思いながら、観ていくと、いい意味でどんどん武装解除されていくのはひょっとしたら映画のリズムなのかもしれない。
瀬田監督らしい言葉のキャッチボールとアクションと編集と音楽のリズム、それが絶妙にブレンドされてるのでまったく飽きがこない。叔母と姪のまさかの悲しみからの同居ではじまる人と人との心のキャチボール。震える小さな掌から握手の反復、いってらっしゃい・いってきますの反復、じゃれあいから抱擁、シネスコの端から端を使ってとにかく近寄ったり離れたりを繰り返す群像劇。言ってみれば人の営みのそれのみを描き出してるのかもしれない。横位置での距離感と時間の生み出す変化、の映画。体育館と海辺のシーンのツーショットは音楽のバランスも含めて見事なアンサンブルだと思う。
言わせたくなる原作の膨大なセリフと過去回想という武器を使わずに自身の映画スタイルでこれをまとめあげたのは相当なものだと思う。新垣結衣はその長身の身体特性と相まって、これが素なのではないかと思える愛おしさがあり、早瀬憩は逆に小動物(というかもらわれてきた子犬)のようにコロコロヨタヨタ動き続けることで観客の観察の対象物足りえてる。あさをとりまく高校生たちも出番は少ないけれど魅力的で、特にラストのライブシーンはなかなか邦画では体験できないセンスのよさだった。
おそらく原作はいいのでしょうが…
漫画と映画は別モノ
なんかいい
生きづらさとの付き合い方がじんわり
早瀬憩ちゃん‼️
生き方。
ナチュラル〜
みんな普通にこうやって、どこか近くの街で生活してそう!
スルゥ~と心に入ってきたよ。
特に、新垣さんは、なんだろう良い意味で芸能人のオーラが完全に消えていて、
素じゃないの?!って思えるほど自然。
でも、とてもステキでした。
朝も醍醐もえみりちゃんも、周りの人物も、みんな良かった!
ただ、笠町くんは槙生ちゃんと並ぶと、ちょと美男美女感が際立っちゃて、
男前かよ〜ってツッコんでました 笑
ちょっと、女の子でワチャワチャやってるときのナユラル感は薄まっちゃう感じがしましたね。
原作は未読なのですが、そちらも男前なのかな?
とにかく、登場人物、みんなどこかに共感できたし嫌じゃない。
しいていうなら、わたしも槙生ちゃんだったら、
槙生ちゃんの思い出の中のお姉さんは、好きじゃないな。
みんな、いろんな考えの人がいて、適度な距離感で関係を築いてるのに共感。
そして、血が繋がっていようがいまいが、関係性は当事者同士の問題なのかなーって思う。
ただ、朝ちゃんは、思春期真っ只中、大人の階段登る〜の途中なので、
大人が目を掛けてあげなきゃいけない部分、
また、目を掛けて欲しいんだよね?って、甘えたい、頼りたい気持ちのところも
上手に表現されているなーって思いました。
最後のボーカルも、槙生ちゃんの気持ちで笑顔になっちゃいました。
鑑終わったあとは、とても、ほっこり優しい気持ちにで、夜ごはんに餃子を食べました!
違国に生きるわたしと、あなた
原作は2017年連載ヤマシタトモコ作。全11巻のコミック。
私は未読であるが、高い評価を受けファンも多い。
人見知りの小説家、高代槙生と突然の事故で両親を亡くす中学生の姪、田汲朝の共同生活を繊細に描く。
違国日記というタイトルに強く惹かれ鑑賞。
原作からは、カットせざるを得ないエピソードは多くあったと思われるが、「今」という時代を見事に描き出す数々の描写。心に強く印象づけられるセリフ…空気感、優しくユーモアあるシーン、シビアな現実…
監督は俊英瀬田なつき。原作のエッセンスをうまく映像、そしてシナリオに落とし込んでいる。
多様な生き方、思春期時代特有の葛藤、突然の喪失、などのエピソードを丹念に積み重ねて物語を紡ぐ。
不器用で心に闇を抱えながらも、姪である朝との生活を選ぶ槙生演じる新垣結衣、見事な演技。評価された正欲を未見である私は、正直驚いた。女優になられたな、と。TV大河の鎌倉殿の13人でも存在感は示していた。
また朝を演じる早瀬憩。複雑な役どころを、瑞々しく時に躍動感を感じさせながら演じている。
脇を固めるキャストも良い。
槙生の理解者醍醐奈々の夏帆、槙生の元カレ笠町の瀬戸康史、少ない出番ではあったが弁護士役の染谷将太…存在感をフィルムに焼き付けている。
この作品の核心的メッセージであろう
人と人は絶対にわかりあえない…それでも……
槙生の、あなたを愛せるかどうかはわからない、でも、わたしは、決してあなたを踏みにじらない、
じぶんの感情は自分だけのもの…だから誰ともわかちあうつもりはない…
一生忘れられない言葉の数々、シナリオは映像作品の骨格だ。
相手の立場に立って、相手を理解し共感し、他者を思いやり…
言葉で言うのは容易く、しかし真に理解することは難しい。
人はそれぞれ違う国に生き、違う言葉を話す。たとえ地理上で同じ国に生きていても。現実に生きていて理解できないことが多い。見ている世界も違えば価値観も違う。抱えている事情も違う…
それでも…違国で生きながら、時に軽くゆっくり国境を越えて少し近づきまた離れ、また越境し関係性を作っていく。そこに物語が生まれるのだろう、と原作者ヤマシタトモコもインタビューで述べている。
もがきながら関係を作っていく行為こそ尊いと。
派手な事件は起こらない。スーパーヒーローもいない。
また明日、違国で生きる遠い人、近い人、そんな中でもがきながらも生きていく。
生きづらいと感じている人たちが、少しでもほんの少しでも次の一歩を踏み出せるように…
踏み出せなくてもいいか。
ラストシーンの光の中で。
現代に生きる、私たちに続く地平の物語を観せてもらいました。
全192件中、41~60件目を表示