「槙生が啖呵を切るシーンから引き込まれる」違国日記 sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
槙生が啖呵を切るシーンから引き込まれる
公開時、事情があって観られなかったけれど、原作の空気感が好きで、楽しみにしていた作品。やっとU-NEXTで配信が始まって、鑑賞することができてうれしい。
槙生が啖呵を切るシーンからグッと引き込まれた。
原作は線も少なめで、余白から想像させるタイプだったので、細部までクッキリと描き出される実写化は、読んでいた時の自分のイメージとは異なる部分もあったが、逆にそれが、今作を独立した映画作品たらしめているように思った。
<ここから少し内容に触れた備忘録>
・全編通して、画面全体の色調が柔らかいのだが、夏帆だけは、ちょっとビビッドな服で登場し、槙生と朝の2人に、エネルギーを注いでくれるような感じがした。
・原作では、槙生のダンディさというのをベースに読んでいた気がするが、今作ではガッキーが演じていたので、ちょっとフェミニンな色合いが強まり、「人としての生きづらさ」を描く上で、より「女性」にスポットが当たっていた印象を受けた。
・小物の使い方が印象に残る映画だった。
例えば、ドリームキャッチャー。槙生の家のものが最初に目に飛び込んでくるが、朝が自宅に帰宅するシーンでは、朝の母(槙生の姉)もリビングにドーンと飾っていることを観客に見せる。
または、何かと画面の中に映り込んでくる鏡。
最初だけ使って残りは白紙のノートたち。
象徴的なマグカップなど。
・槙生の口からは、朝の母への恨みや嫌いという言葉が出てくるが、小物から伝わるのは、2人はやはり姉妹として、実は似たところを持つ鏡像なのだということ。
そして、マグカップによって、朝と槙生の関係性がはっきりと変わったということが語られる。
・「フライドグリーントマト」は出てこなかった。
・染谷将太が出てくると、反射的に胡散臭さを感じてしまうのは、よくない癖だと反省。
・瀬戸康史もいいのだが、笠町の持つセクシーさはちょっと薄らいだかも。でも、それが今作のねらいなのかもしれない。