劇場公開日 2024年6月7日

「サイコーです、だった」違国日記 ONIさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5サイコーです、だった

2024年6月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

『夜明けのすべて』並にめちゃくちゃ良い。尺もそこそこあるし、このホームドラマっぽいのにシネスコか!と思いながら、観ていくと、いい意味でどんどん武装解除されていくのはひょっとしたら映画のリズムなのかもしれない。

瀬田監督らしい言葉のキャッチボールとアクションと編集と音楽のリズム、それが絶妙にブレンドされてるのでまったく飽きがこない。叔母と姪のまさかの悲しみからの同居ではじまる人と人との心のキャチボール。震える小さな掌から握手の反復、いってらっしゃい・いってきますの反復、じゃれあいから抱擁、シネスコの端から端を使ってとにかく近寄ったり離れたりを繰り返す群像劇。言ってみれば人の営みのそれのみを描き出してるのかもしれない。横位置での距離感と時間の生み出す変化、の映画。体育館と海辺のシーンのツーショットは音楽のバランスも含めて見事なアンサンブルだと思う。

言わせたくなる原作の膨大なセリフと過去回想という武器を使わずに自身の映画スタイルでこれをまとめあげたのは相当なものだと思う。新垣結衣はその長身の身体特性と相まって、これが素なのではないかと思える愛おしさがあり、早瀬憩は逆に小動物(というかもらわれてきた子犬)のようにコロコロヨタヨタ動き続けることで観客の観察の対象物足りえてる。あさをとりまく高校生たちも出番は少ないけれど魅力的で、特にラストのライブシーンはなかなか邦画では体験できないセンスのよさだった。

ONI
トミーさんのコメント
2024年7月2日

引き取られて最初の内は寝てばかり、というのも子イヌぽいですよね。原作では槙生が大分世間順応していて、朝は野性を次第に発揮していく感じですね(まだ読了していません)。

トミー