「美しい色たちに囲まれる至福」ペルリンプスと秘密の森 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
美しい色たちに囲まれる至福
アレ・アブレウ監督の作品でまず惹かれるのは、その色彩感覚。前作の『父を探して』でも発揮されていたその完成は、本作でさらに力強く発揮されている。この世界はまず、美しい色に囲まれている。その美しさの中でキャラクターたちはちっぽけな存在として、放り出されて、大冒険の旅に出る。
分断された世界に生まれた2匹のキャラクターたちが、イメージの世界ではつながり、仲間となれる希望、そして想像の世界の美。対して現実の理不尽さが重くのしかかり、対比的に描かれる。想像の世界を構築するのは現実逃避ではない、過酷な現実を生き抜くために必要なことだと本作を観ると思う。
テクノロジーと自然との関わりに翻弄されるキャラクターたちという物語設定は、スタジオジブリ的な主題だが、まちがいなく今日性の高いもの、今公開される意義の非常に高い作品と言える。
難しいテーマを扱っているようで、それは実は大変にシンプルなことで、シンプルに色彩の美しさに浸れる作品だ。この映像の美しさは世界の美しさを参考に作られているのだと素直に思える作品で、その感動が人に大切なことを気づかせてくれるはずだ。
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