イ・チャンドン アイロニーの芸術のレビュー・感想・評価
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一度見たら記憶に焼き付いてしまう
現在から過去へ時間を遡る方法で、1人の男の人生をエモーショナルに描いた「ペパーミント・キャンディー」(1999)のように、作品のロケ地や幼少期に過ごした場所など縁の地を訪れながら、現在から過去へ辿り、各作品を振り返っていく構成が心憎いドキュメンタリーです。
現代社会の問題に切り込みながらも、抑制された語り口による独特な作風、青い空、沈みゆく太陽、分岐する線路、静かに流れる川、寂しげな部屋の壁に反射する光、風に舞う赤いスカーフなど、なぜか一度見たら記憶に焼き付いてしまうことでしょう。
「ペパーミント・キャンディー」で、トンネルから列車が出てくる鉄橋の下の川辺で、ソル・ギョング演じる主人公が顔に日差しを浴びながら涙するシーンは、思い出す度に胸が熱くなります。作品を未見の方には6作品を見てからこのドキュメンタリーを見ることをオススメしますが、先に見れば、遡って作品を見てみたくなるはずです。
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